■中国人民元、韓国ウォン、インドルピーが取引可能に
2011年8月1日、FXの取引所取引である「くりっく365」へ中国人民元/円(CNY/JPY)、韓国ウォン/円(KRW/JPY)、インドルピー/円(INR/JPY)が新規上場された。「くりっく365」に3つのアジア通貨が新登場したことになる。
中国、インドといえば、株式投資の世界ではおなじみのBRICs構成国であり、成長著しい新興国の代表的存在(※)。また、韓国は日本にとって非常に身近なお隣の国だ。
しかし、これらの国々は為替の取引にさまざまな規制があり、取引をなかなか自由にできなかった。そのため、これらの通貨が取引できるFX会社も非常に少なかったのだった。
ザイFX!が調べた限り、日本の主要FX会社・証券会社におけるFXの店頭取引で、人民元や韓国ウォンがこれまで取引できたのはネット証券最大手のSBI証券ぐらい。また、インドルピーが取引できる会社は1つもなかった。
それが公設取引所である「くりっく365」でこのたび取引できるようになったのである。
ただし、8月1日時点では「くりっく365」参加会社のすべてでこれらの3通貨ペアが取引できるようにはなっていない。取引開始予定が秋頃とされていたり、未定となっている会社もある点にはご注意を。
●中国人民元/円が取引できるおもなFX会社はこちら
⇒「FX会社徹底比較!:中国元が取引できるFX会社はここだ!」
(※BRICsとは今後、大きな経済成長が見込まれる新興国で、ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字をつなげた造語)
■通常のFX取引と異なる面があることには要注意
「くりっく365」に上場されたとはいえ、これらの通貨に取引の規制があることは今でも変わりはない。そのため、FXで取り扱われる通常の通貨とは違って、これらの通貨のFX取引の舞台裏では、ノンデリバラブル・フォワード(non-deliverable forward、NDF)という特殊な取引が使われている模様だ。
ノンデリバラブル・フォワードについては機会があったら、またザイFX!で詳しく取り上げたいが、裏側で特殊なしくみが使われていることもあり、これらの新通貨の取引には、通常のFX取引と異なる面があることは押さえておきたい。
まず、取引時間だが、「くりっく365」の通常の通貨ペアはおおむね午前7時頃~8時頃に取引が開始される(夏時間か冬時間かで時間は異なる)。
これに対し、中国人民元/円は午前10時30分から、韓国ウォン/円は午前9時から、インドルピー/円は午後0時30分からの取引開始となっている。朝の取引開始時刻が通常よりも遅くなっているのだ。
■人民元/円のスプレッドは結構狭かった
そして、注目はやはりスプレッドとスワップ金利(スワップポイント)。こればかりはフタを開けてみなければわからないところだったのだが、実際どうだったか?
取引所取引である「くりっく365」の取引条件はどのFX会社も同じ。そこで、たまたま記者が口座を持っていたコスモ証券(くりっく365)の取引画面を見てみることにした。そして、店頭取引のSBI証券と比較してみた。
まず、スプレッドはどうだろうか? SBI証券の取引画面から見てみよう。
以下の画像のとおり、SBI証券は11.98円-12.01円となっており、スプレッドは3銭だ。実際、SBI証券はFXの「サービス概要」で人民元/円のスプレッドを「3銭原則固定」と発表している。

3銭といっても、人民元/円の場合、絶対的なレートが12円程度と小さく、主要通貨と同じ感覚でとらえてはいけない。
そこで、12円を10倍してみると120円となり、これはちょっと前までのユーロ/円のレート程度だ。
ということで、スプレッドも10倍してみると、3銭×10=30銭ということになる。SBI証券の人民元/円のスプレッドは、ユーロ/円レートぐらいの感覚でとらえると、だいたい30銭ぐらいということだ。
これは主要通貨と比べるとかなり広いスプレッドだが、新興国通貨なので、これぐらいは仕方のないところだろうか。
次にコスモ証券(くりっく365)の取引画面を見てみよう。「くりっく365」ではスプレッドを公式発表していないが、以下の画像では11.969円-11.973円となっており、スプレッドは0.4銭ということになる。

「くりっく365」のスプレッドは常に変動しており、記者の見ていた範囲では人民元/円のスプレッドは0.3~1.2銭程度で推移していた。
これなら10倍しても3銭~12銭程度ということになる。
これは中国人民元/円のような新興国通貨にしては、なかなかいいスプレッドと言えるのではないだろうか?
ただ、大きな相場変動があった時などは、新興国通貨は主要通貨よりさらに大きくスプレッドが開く可能性があるのは当然。その点はいずれにせよ、注意が必要だ。
■高金利通貨の買いでマイナススワップが…
次にスワップ金利(スワップポイント)へ話を移そう。
現在、中国の政策金利は6.56%。さすがに成長中の新興国だけに金利は高い。一方、我が日本はご承知のとおり、0.0~0.1%という超低金利だ。
すると、“普通のFX”であれば、「円売り・人民元買いを行えば、スワップ金利が結構もらえるね」という話になるはず。
けれど、人民元は特殊なしくみで取引されているため、そうなるとは限らないのである。