■外国通貨の取引でトラブル!?
消費者トラブルの相談窓口や情報提供を行っている独立行政法人国民生活センターから、外国通貨の取引に関するトラブルについて、気になる資料が先ごろ公開されました。
資料のタイトルは、「次々に出てくる換金困難な外国通貨の取引トラブル!-新たにコンゴ、シリア、イエメン、ウズベキスタンの通貨が…-」というもの。
実は、国民生活センターの資料によると、昨今、上述の通貨を高額で購入させられるなどの被害が複数件発生しているようなんです。
2012年に、全国の国民生活センターや消費生活センターに寄せられた相談件数は、ご覧のとおり。2012年8月時点で、すでに合計85件もの相談が…。

6月、7月は、特にコンゴフランでの被害が続出したようです。
■よく知らない国の通貨を購入した結果…
「コンゴ、シリア、イエメン、ウズベキスタンの通貨の名称を知っていますか?」と聞かれて、「あ~、左からコンゴフラン、シリアポンド、イエメンリアル、ウズベキスタンスムだね!」と即答できる方は、おそらく限られていると思います。
これらの国の通貨は、国内のおもなFX会社で取扱っていないのはもちろん、銀行や空港の窓口で日本円と両替することすら困難です。
日本からの海外旅行の渡航先として、これらの国はマイナーな存在です。また、ビジネスでのつながりも強い欧米諸国やアジア各国などとは異なり、一般国民の間でこれらの国との往来は盛んでないため、どんな国なのか詳細なイメージを持つことすら難しい、という方も多いのではないでしょうか。
ただ、いずれも今なお政情不安を抱える国で、投資先としてはめちゃくちゃリスクが高そうなイメージはあります。
果たして、どんな手口で勧誘が行われるのか…資料で紹介されていた事例の1つを紹介しましょう。
■こんな手口で勧誘がおこなわれる!
ある日、Cさん宅にA社から電話がありました。
A社:「B社からコンゴフランに関するパンフレットが届いたら連絡をしてもらないか?」
A社からの電話で、このように依頼されたCさん。数日して、B社からコンゴフランのパンフレットがCさん宅に到着し、Cさんは、言われたとおり、パンフレットが到着した旨をA社に連絡しました。
A社:「B社からコンゴフランを買えるのは個人だけ。当社の代わりにあなたが申込んでくれないか? 高額なお礼はする!」
と、言われ「申込むだけなら」と思ったCさんは、B社に連絡し、1口10万円を50口購入する旨を伝えました。すると、後日B社からCさん宅に電話がありました。
B社:「Cさんの申込みなのにA社から振り込みがあった。うちは個人としか取引はしないから、Cさんの名義で申込んで欲しい!」
Cさんが、B社から電話で言われたことをA社に伝えると…
A社:「あとで支払うから、代わりに支払っておいてくれ」
と、A社に代わって代金を支払うよう、Cさんに依頼してきたのです。
その後、B社からの催促がしつこいこともあり、CさんはB社に対し、4回に渡り、250万円を支払ったところ、Cさん宅に500コンゴフラン紙幣が25枚(計1万2500コンゴフラン)届きました。
しかし、B社からの催促はやまず、A社も代わりに支払ったはずの代金を返してくれないままという状況に…。
この事例のCさんが「騙されたのでは?」と疑念を抱いたのは、残念ながら、すでに代金を支払った後のようです。
多くの場合、支払った代金を返金してくれないまま、いつの間にか業者と連絡が取れなくなることが多いのだとか…。
■10万円で購入した500コンゴフランは日本円で約43円!?
ちなみに、500コンゴフランを実勢レートで日本円に換算すると、約43円(2012年9月25日現在)。
事例のCさんは、500コンゴフラン紙幣25枚(実勢レートなら1075円分)を250万円で購入しています。本来であれば、約43円の500コンゴフランを10万円で購入したことになります。
これは、なんと実勢レートの約2326倍(!?)の価格です。
資料で紹介されている他の事例を含め、通貨の実勢レートと業者からの購入価格は下表のとおりです。

いずれも、実勢レートからかけ離れた法外な価格で購入させられています。
■未公開株買い取りを条件に外貨購入を勧める手口も…
このほか、「未公開株や不良債権を査定して買い取る」と言いながら、その条件として、イエメンリアルやウズベキスタンスムの購入を迫り、支払い後も未公開株などの買取りはしてもらえない、といった被害も出ているようです。
過去に投資トラブルの被害にあったことがある人の情報を何らかの方法で取得して、アプローチしてくる業者もあるのだとか…。
「過去の損失を取り返したい!」と考えている人の心理を逆手に取った勧誘で、二次被害に発展してしまう事例が多数発生しているようです。
なお、資料の中で紹介されていた事例では、実際に外貨を購入した人の多くが70歳代などの高齢者。
そして、その勧誘手口は、複数の業者が入れ替わり立ち替わり執拗に投資欲をあおる「劇場型」と呼ばれるタイプだそうです。
「オレだよ、オレ!」と身内を装って、高齢者などから金銭を騙し取る振り込め詐欺(いわゆるオレオレ詐欺)にも、この「劇場型」と呼ばれるタイプの手口があるようですが…なんだか、どんどん詐欺の手口が複雑化してきているように感じます。
■被害にあわないためには?
国民生活センターでは、被害を未然に防ぐためのアドバイスとして、
・ 外貨の購入や両替を勧める業者には十分注意すること
・ 「未公開株を買い取る」、「将来価値が上がるのは間違いない」などの言葉を信用しない
・ 過去に投資トラブルの被害にあった経験がある場合は、特に注意
・ 勧誘された時点で、最寄の消費生活センターに相談する
などの注意喚起を行っています。
確かに、どんな投資商品でも「絶対に儲かる」、「確実に値上がりする」などという、超おいしい話はありえません。
キャンペーンなどを活用することで、比較的カンタンにキャッシュバックを受けられるケースも、ごく一部にはありますが…。
【参考記事】
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少しでもおかしいと思ったら断る、お金を払う前に相談するなどして、まずは自分が被害にあわないよう気をつけるとともに、身近に高齢者がいらっしゃる方は、その方も被害にあわないよう注意して見守るなど、日頃から予防に努めたいですね。
(ザイFX!編集部・向井友代)