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ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?

ザイFX!で2018年を振り返ろう!(1)
米ドル一強! その時トルコショックが起きた

2018年12月21日(金)15:22公開 (2018年12月21日(金)15:22更新)
ザイFX!編集部

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 平成最後のクリスマスが迫る今日この頃。2018年も残すところ、あとわずかとなりました。

 ということで、年末恒例となった、ザイFX!ならではの視点から振り返る2018年を、いくつかのシリーズに分けてお届けしていきたいと思います。今回は【相場編】です。2018年のマーケットがどんな展開だったのか、さっそく振り返っていきましょう。

2018年は「米ドル高」が進んだ1年

 2018年の外国為替相場を振り返ってみると、「米ドル高」が進んだ1年でした。まずは米ドル全体の値動きを表すドルインデックスのチャートを見てみましょう。

ドルインデックス 週足
ドルインデックス 週足

(出所:IG証券

 ドルインデックスは2018年序盤こそ弱かったものの、その後は堅調地合いが続いたことがわかります。2月の安値88.253から12月の高値97.711まで14.6%ほど上昇しました。

 その背景として挙げられるのが、FOMC(米連邦公開市場委員会)がFF金利(※)を順調に引き上げたことです。その結果、米10年債利回りなどの米金利が上昇し、米ドルへの投資妙味が高まったのです。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

米10年債利回り&FF金利 日足

米10年債利回り&FF金利 日足

(出所:Bloomberg)
※FF金利は上限を表示

 足もとの米10年債利回りは低下傾向にありますが、FOMCは12月19日(水)にもFF金利を2.00-2.25%から2.25-2.50%まで引き上げました。

 実際に、主要FX会社で米ドル/円のスワップ金利(スワップポイント)は上昇傾向にあり、スワップ金利狙いでトレードされる通貨ペアの代表格である豪ドル/円やNZドル/円を遥かに凌ぐ高スワップ金利となりました。

【参考記事】
米ドル/円スワップ金利が90円目前です! くりっく365のスワップ金利は年末がヤバい!?

2018年の米ドル/円相場、年間変動幅はたった10円ほど

 そんな高スワップ金利が受け取れるようになった米ドル/円ですが、2018年の動向を思い返してみると、「あまり動いていない」という印象が…。以下のチャートで確認してみましょう。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足

 2018年の米ドル/円相場は113円前後で始まり、3月にかけて104円台まで急落しました。ただ、4月以降はV字回復して一時114円台を回復。足もとでは下げ足を速め、111円を割り込む場面も見られています。

 2018年の米ドル/円の安値は3月26日の104.56円、高値は10月4日の114.55円で値幅は9.99円でした(高値・安値は出所により異なる)

 詳しくは【参考記事】をご覧いただきたいのですが、このまま高値更新も安値更新もなく2018年が終われば、およそ10円という米ドル/円の年間変動幅となり、これは2015年と並んで、1995年以降で最も小さい変動幅となります。

【参考記事】
変動率の低かった2018年の米ドル/円、今後の市況を占うポイント3点を確認してみると…(11月16日、陳満咲杜)

2018年の米ドル/円はドルインデックスにほぼ連動

 今度は2018年の米ドル/円の値動きをドルインデックスとともに振り返ってみましょう。

米ドル/円&ドルインデックス 日足
米ドル/円&ドルインデックス 日足

(出所:Bloomberg)

 上のチャートを見てみると、2018年の米ドル/円はドルインデックスとほぼ連動していたと言えそうです。

 ドルインデックスにはいくつか種類がありますが、市況解説などでよく言及されるのは米国のインターコンチネンタル取引所(ICE)が発表しているものです。そして、このICEのドルインデックスにおける円の組み入れ比率は13.6%となっています。

 このことから米ドル/円とドルインデックスは通常、連動するとは限らないと考えられますが、2018年はほぼ連動した年になったということです。ドルインデックスについては以下の【参考記事】に詳しくまとめられていますので、こちらをご覧ください。

【参考記事】
米ドル全体に賭けろ! FX界の日経平均=ドルインデックスを取引する方法があった!

乱高下したNYダウ、米ドル/円と連動しない時期も

 一方で、米ドル/円と株式相場は「リスクオン」「リスクオフ」の関係から連動しやすいものとしてなじみがありますが、2018年は連動する時期としない時期がハッキリ別れました

米ドル/円&NYダウ 日足
米ドル/円&NYダウ 日足

(出所:Bloomberg)

 2018年の米ドル/円とNYダウのチャートを並べてみると、NYダウは年初から急伸して当時の史上最高値を更新しましたが、米ドル/円は逆行して下落しました。

2月にはVIX指数の大暴騰などを背景にNYダウが史上最大の下落幅を記録し、このころから米ドル/円との連動性が高まってきます。

【参考記事】
NYダウ、史上最大の暴落にVIX指数の影。ビットコインも真っ青。2日で96%下落って!?

 10月3日にはNYダウが26828.39ドルと終値で史上最高値を再び更新。米ドル/円も10月4日に114.55円と2017年11月以来の高値をつけました。

 その後、米ドル/円は113円を挟んだ動きとなりましたが、NYダウは乱高下しながら大きく下げる展開に。11月6日(火)の米中間選挙を前に株を手仕舞う動きが強まりました。

 注目の米中間選挙は上院が共和党、下院が民主党の勝利で終わりました。これは市場のコンセンサスどおりだったのですが、米中間選挙を無事通過しても、株安には歯止めがかかりませんでした。年末にかけて株安の流れは強くなり、売りが売りを呼ぶ形となっています。

 その背景には、7月から9月にかけて米国が中国製品に対する制裁関税を第1弾から第3弾まで発動したことや、米金利の上昇が続いたことの悪影響が株式市場に出始めたとの見方があります。また、これまで長い間、株が上がりすぎだったことの反動もあるかもしれないですね。

 2019年は米ドル/円と株式相場の連動性が復活するのか、それとも米ドル/円とドルインデックスとの連動が続くのか注目ですね。

ユーロや英ポンドに対しても米ドル高が加速

 先ほど、2018年は「米ドル高」が進んだ1年だったと書きましたが、米ドルはユーロや英ポンドに対しても上昇しました。

 以下のチャートはユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルと、高安を逆に表示したドルインデックスを並べたものです。

ユーロ/米ドル&ドルインデックス 日足
ユーロ/米ドル&ドルインデックス 日足

(出所:Bloomberg)

英ポンド/米ドル&ドルインデックス 日足
英ポンド/米ドル&ドルインデックス 日足

(出所:Bloomberg)

 2つのチャートから、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルもドルインデックスとほぼ連動していることがわかりますね。

 ICEのドルインデックスにおけるユーロの組み入れ比率は57.6%とあって、ユーロ/米ドルとドルインデックスの連動性は高いと考えられますが、実際にそのようになっています。

 一方、ドルインデックスにおける英ポンドの組み入れ比率は11.9%と、円の組み入れ比率である13.6%より低いですが、英ポンド/米ドルとドルインデックスの連動性は米ドル/円より高く見えますね。

【参考記事】
米ドル全体に賭けろ! FX界の日経平均=ドルインデックスを取引する方法があった!

 結局、米ドル/円、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルの3通貨ペアと、上昇したドルインデックスの連動性が高かったということは、この3通貨ペアは2018年の1年間、米ドル高主導で動いたと言えるのかもしれません。

米ドル高の裏側に欧州の政局不安

 2018年は米ドル高が主導した1年だったとは言っても、米国以外の地域で何も起こらなかったわけではありません。

 2018年にユーロ圏で起こった主な出来事として、まず挙げられるのがイタリアの政局混迷です。3月に行われたイタリア総選挙ではどの党も過半数に達せず、再選挙の可能性が浮上するなど6月まで組閣が難航しました。

【参考記事】
イタリア政局の不透明感でユーロ急落! リスクオフ要因多数!? 地政学的リスク警戒(5月17日、西原宏一)
政局混迷でユーロ/米ドルは6週連続陰線! サウジ増産示唆で原油急落! 影響は…!? (5月28日、西原宏一&大橋ひろこ)

 また、6月のECB(欧州中央銀行)理事会でドラギECB総裁が金利について「現在の水準に少なくとも2019年夏までとどまる」と発言。ECBの利上げ期待が後退しました。

【参考記事】
ECBの利上げ期待剥落でユーロ急落! 米中貿易摩擦の激化は米ドル安要因に?(6月18日、西原宏一&大橋ひろこ)

 さらに、8月からはイタリアの2019年予算案が話題に。イタリア予算案がEU(欧州連合)財政規律から大幅に逸脱しているとして、欧州委員会が史上初めて予算案を差し戻したり、イタリアが予算案の修正に応じない姿勢を示したこともありました。

【参考記事】
イタリア予算案リスクは織り込み済みでも、ユーロ/米ドルに1.11ドル台ヘの下落余地!(11月13日、バカラ村)

 2018年に欧州で起こったこれらの出来事はユーロ売りを誘い、全体的な米ドル高の進行とともにユーロ/米ドルを押し下げました。ユーロ/米ドルは2月の高値1.2555ドルから11月の安値1.1216ドルまで10.7%ほどの下落となりました。

2018年もブレグジットに揺れた英ポンド

 一方、英ポンドについて2018年序盤に話題となったのが、武田薬品によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収でした。

 2018年3月後半から「武田薬品がシャイアー買収を検討」と報じられたほか、買収額の引き上げが続いたことで、英ポンド/米ドルは4月に1.4377ドルとブレグジット(英国のEU離脱)決定前の2016年6月以来の高値をつけました。

 ですが、2019年3月にブレグジットを控えていることもあり、英ポンドの買いは続きませんでした。2018年7月からは「合意なき離脱(何の取り決めもないまま英国がEUを離脱すること)」が取り沙汰され始めます。

【参考記事】
日本のBrexit報道は正確ではない!? ソフト・ハード・合意なき離脱の違いとは?(9月12日、松崎美子)
合意なき離脱ならポンドは10~20%下落も。2度目の国民投票は? “クーデター”の噂も!?(9月17日、松崎美子)

 結局、ブレグジットの最終合意を取り付けるEU首脳会談は10月から11月に延期され、11月末にEU緊急首脳会議で英国が提案したEU離脱案が正式に決定されました。

 そして、12月11日(火)の英議会採決でEU離脱案が可決されれば、ブレグジットの枠組みが最終決定する予定でしたが、否決の可能性が高まったため、メイ英首相が採決を延期。2019年1月中旬に改めて採決が実施される予定となっています。

【参考記事】
メイ首相ピンチ! 次は野党から不信任動議!? 混迷のEU離脱交渉。英ポンドさらに下落か(12月13日、今井雅人)

メイ英首相写真

2018年12月11日(火)の英議会採決でEU離脱案が可決されれば、ブレグジットの枠組みが最終決定する予定だったが、メイ英首相は採決を延期。2019年1月中旬に改めて採決を行うと表明した (C)WPA Pool/Getty Images

 結局、ブレグジットを巡る先行き不透明感は年末になっても拭えず、全体的な米ドル高も進んだことで、英ポンド/米ドルは12月に1.2478ドルまで下落しました。4月の高値からの下げ幅は13.2%ほどとなりました。

大暴落したトルコリラが2018年の主役に!

 2018年は、政局不安のつきまとった欧州通貨から資金が流出し、米金利上昇で投資妙味が増した米ドルに資金が流入した年とも言えるわけですが、米金利上昇&米ドル高の流れは、経済基盤の不安定な新興国通貨にも大きな影響を与えたように思えます。そのような新興国通貨からの資金流出はさらに凄まじいものになりました。

 たとえば、5月にはアルゼンチンペソの下落が止まらず、アルゼンチン中銀が政策金利を8日間で3回引き上げたこともありました。

【参考記事】
デフォルト常習犯のアルゼンチンが緊急利上げ連発で政策金利40%に! 一体なぜ?

 そして、8月に入ると、2018年の外国為替市場で最大の盛り上がりを見せたあの出来事がやってきます。そう、トルコショックです。

 まずは8月にトルコリラがどれだけ暴落したのか、今一度振り返ってみましょう。

トルコリラ/円 日足(2018年8月)
トルコリラ/円 日足(2018年8月)

(出所:Bloomberg)

 そもそも、トルコは高インフレや資金流出に悩んでおり、その流れに歯止めをかけるため、トルコ中銀が利上げを続けてきました。

 一方で、エルドアン大統領はトルコ中銀に利上げをしないようたびたび圧力をかけており、トルコ中銀の独立性への懸念などからトルコリラはここ数年、軟調地合いを続けてきました。

【参考記事】
衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!?のかも…(1)
衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!?のかも…(2)
【謎】トルコリラが半年間に2回も朝7時すぎ~7時10分すぎに急落したのはなぜか?

 そんななか、2018年8月10日(金)東京時間に「ECBはユーロ圏の一部の金融機関が保有しているトルコ関連資産のリスクが大きいと懸念」との報道が伝わると、ユーロとともにトルコリラが急落。トルコリラ/円は19円台後半から17円台半ばまで売り込まれました。

 さらに、8月10日(金)米国時間にはトランプ米大統領がツイッターで「トルコに対する鉄鋼とアルミニウムへの関税を倍にすることを指示」と発言。19円台まで反発していたトルコリラ/円は16円台前半まで再び急落したのです。

 それに追い打ちをかけるように、週末の8月12日(日)にはエルドアン大統領が「私が生きている限りは金利のわなには落ちない」と演説しました。トルコリラが大暴落しているこの状況でトルコ中銀に圧力をかけたことで、週明け8月13日(月)のトルコリラ/円は窓を開けて15円台半ばまで下落したのでした。

【参考記事】
トルコリラ/円が一時、16円台まで暴落! トルコリラ急落の震源地はユーロか!?
トルコリラ/円は一時15円台まで大幅続落! 原因はトランプとエルドアンの両大統領!?

 結局、トルコリラ/円は8月10日(金)と8月13日(月)の2営業日だけで23%ほど暴落し、8月全体では32%ほどの大暴落となりました。

大暴落のトルコリラ、年末にかけてじわじわと復活

 ですが、その後のトルコリラ/円は大暴落した分を取り戻すようにじわじわと買い戻されています。

トルコリラ/円 週足
トルコリラ/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 週足

 その背景としてまず挙げられるのが、9月13日(木)にトルコ中銀が政策金利を17.75%から24.00%まで大幅に引き上げたことです。

 政策金利発表前にエルドアン大統領は改めて利上げに反対していましたが、トルコ中銀がその圧力に屈せず、大幅な利上げを行ったことがマーケットに好感されました。

【参考記事】
トルコ中銀は、6.25%利上げで満額回答! トルコリラ/円が20円超えを目指すには…!? (9月14日、エミン・ユルマズ)

 実際に、主要FX会社でトルコリラ/円のスワップ金利は上昇傾向にあり、トルコリラ/円が下げ止まったことでスワップ狙いの買いポジションを持つトレーダーも増えているようです。

【参考記事】
【緊急調査】トルコリラ/円が21円に迫る! FX会社の最新スワップ金利も上昇傾向に!?

【参考コンテンツ】
FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!「トルコリラ/円スワップ金利の高い順」

 さらに、10月12日(金)にはトルコで米国人のブランソン牧師が釈放され、11月2日(金)には米国がトルコ閣僚への経済制裁を解除しました。米国とトルコの関係が改善したこともトルコリラ相場の支えとなりました。

【参考記事】
ブランソン牧師釈放。経済制裁解除も近い!? トルコリラ/円は20円超えに向けて上昇中!(10月17日、エミン・ユルマズ)

ザイFX!でコラム「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」を執筆しているエミン・ユルマズさんによると、「トルコの経常赤字の中身は、ほとんど原油」なのだそうです。そのため、原油相場はトルコリラ相場にも影響を及ぼしているようです。

まず、原油相場の急落により、トルコの経常収支が改善しました。これはトルコリラ高要因です。

 また、悩みの種だった高インフレも原油安の影響から落ち着いてきました。これもトルコリラ高要因になりそうです。こうしたことから、トルコリラ/円は12月にかけて22円台を一時回復。8月の安値から41%ほど反発したのでした。

【参考記事】
インフレ減速と原油下落はトルコに追い風! 21円台維持はハルクバンクへの罰金次第か(11月7日、エミン・ユルマズ)
経常収支の大幅改善はトルコリラに追い風! でも、22円超えが難しいと見るワケは…!? (12月12日、エミン・ユルマズ)

 ここまで2018年の外国為替相場を振り返ってきましたが、2018年は政局不安がくすぶった欧州通貨や経済基盤が不安定な新興国通貨が売られ、米金利上昇で投資妙味が増した米ドルが一強状態となった年となりました。2019年はどんな相場がやってくるのでしょうか?

 次回からは、ザイFX!で2018年を振り返ろう【業界編】をお届けします。お楽しみに!

「ザイFX!で2018年を振り返ろう!(2)FX業界はトルコとメキシコで盛り上がった!」へつづく)

(ザイFX!編集部・藤本康文)

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