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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米ドル/円の反撃。
その背景にあるヘッジファンドの動きとは?

2010年11月18日(木)13:13公開 (2010年11月18日(木)13:13更新)
西原宏一

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 CKキャピタルの西原です。今週からこのコラムを担当することになりました。よろしくお願いします。

 僕は20数年にわたり、東京、ロンドン、シンガポールの外資系銀行にてトレーダーを歴任。銀行勤務の時の元同僚や先輩の何人かがヘッジファンドを立ち上げたり、ヘッジファンドに勤めたりしており、彼らと頻繁にコンタクトをとっています。

 このため、このコラムは「ヘッジファンドの思惑」というタイトルがついていますが、ヘッジファンドも特段、特殊な情報があり、収益を上げているわけではありません

 情報をとり、チャートをチェックし、一部はシステムで運用するといったところ。

 ただ、彼らは為替だけを取引しているわけではなく、いわゆるグローバルマクロと呼ばれる運用手法を取るところが多く、株や債券、金(ゴールド)といった商品も含め、各市場間のバランスをとって取引しているところが一般の個人投資家の方とは違うところでしょうか

 このコラムでは、彼らとの会話の中で、自分が興味深いと感じたことなどもご紹介させていただこうと思っています。

 それでは、よろしくお願いします。

 それでは、第1回は米ドル/円から。

■「QE2(量的緩和第2弾)」の決定と「buy the rumor, sell the fact.」

 市場の注目を集めていた今月のFOMC(米連邦公開市場委員会)ですが、大方の予想どおりに「QE2(量的緩和第2弾)」が行われることになりました。総額は6000億ドル。

 この発表は市場が予想していたものと大きなカイ離はなく、発表を受けて多くの市場参加者はそれまでキープしていたドルショート(米ドルの売りポジション)を縮小にかかります

 いわゆる「buy the rumor,sell the fact(噂で買って、事実で売る)」ですね。

 加えて、11月5日の米国雇用統計が市場予想の2倍以上の伸びをみせたことで、ドル金利は急騰、連れて米ドルは急速に値を戻しています。

 それでは実際に、下記の米ドル/円のチャートで値動きを追ってみましょう。
米ドル/円 日足(クリックで拡大)

 9月21日に、FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が追加緩和措置を示唆します。

 それを受けて、ヘッジファンドなどは「ドル金利の低下=米ドル安」というシナリオのもと、ドルショートを積み上げます。

 米ドル/円は11月3日のFOMCの発表に向けてジリ安となり、11月1日には80.22円まで急落します。

 その後、11月3日の発表を受けて、米ドル/円はジワジワと値を戻し、83.59円まで回復しています。

 「QE2」に向けて、ドルショートを積み上げていた市場参加者のポジションは市場にまだ残っていると考えられ、米ドル/円が反落する局面では彼らのドルショートカバー(米ドルの買い戻し)により、当面、米ドル/円の下値は限定されるのではないかと考えています。
■ドル金利の反発と米ドル/円

 もう1つの米ドルの反発要因はドル金利の推移。

現在の米ドル/円相場は、2年もの米国債の利回りに大きく影響を受けています。下記のチャートをご覧ください。
2年もの米国債利回り(クリック拡大)

 FOMCの結果発表後、2年もの米国債の利回りは、0.3%近辺から、一時0.53%まで急速に値を戻しています。

 このチャートから考えると、利回りが0.3%ならば米ドル/円は80.00円、0.4%ならば82.25円、0.5%ならば84.50円近辺ということになります。

 このチャートが示すように、当面、米ドル/円相場が2年もの米国債の利回りに連動すると考えると、米ドル/円は85.00円近辺まで反発する可能性があります

■季節的要因

HF(ヘッジファンド)の多くは、12月ではなく11月末を年度末とするところが多いようです

 目安としては、感謝祭(今年は11月25日)の休暇に向けてポジションを精算して休暇を取り、12月からの新年度に備えます

 今年後半の彼らのメインポジションは、「商品ロング、ユーロ/米ドルロング、米ドル/円ショート、豪ドルロング」といったところ。

 そうしたポジションの利益確定が出るということは、感謝祭に向けて、今までと逆の動きが出るということですね

 米ドル/円であれば、米ドル/円の買いが出るという流れになります。

 こうした彼らのポジション精算による動向も、為替市場に少なからず影響を与えます。

 たとえば、昨年を思い起こすと、11月27日に米ドル/円は最安値の84.83円まで到達した後、12月は反発に転じ、年末は93.02円で2009年を締めくくりました。

 上記の要因により、当面、米ドル/円は底堅く推移する可能性が高いのではないでしょうか?
(出所:米国FXCM)

 目安としては、日本の当局が介入して反発した85.78円あたりまで戻すのではないかと考えています。
 

 早いもので、今年も、もう11月。

 友人のヘッジファンドの今年の締めは今月末。

 感謝祭の時は、アメリカンクラブのレストランなどに行き、特注の巨大な七面鳥を食べながら今年の慰労をするそうです。

今月末は、マーケットの主要参加者の一角を担う彼らの取引が急速に沈静化しますので、市場の流動性も低下することとなり、この時期は思わぬ相場の乱高下に注意したいところですね

 次回はアイルランドを筆頭に、ソブリンリスク(国家に対する信用リスク)に焦点が集まっているユーロ/米ドルを取り上げます。

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