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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

ソブリンリスクをテーマに迷走続くユーロ。
年末に向けて1.3100ドルへ下落する展開か

2010年11月25日(木)11:13公開 (2010年11月25日(木)11:13更新)
西原宏一

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 こんにちは。CKキャピタルの西原です。

 今週は、ユーロについてです。

 ユーロ/米ドルという通貨ペアは、米ドル/円以上に「QE2(量的緩和第2弾)」の影響を大きく受けました。

■QE2(量的緩和第2弾)とユーロ/米ドルの急騰

 某ファンドの友人によれば、FOMC(米連邦公開市場委員会)後の声明で追加緩和策の実施が示唆された9月21日から、「QE2」が発表された11月3日までのユーロ/米ドルの上昇は、多くのヘッジファンドにとって重要な値動きだったとのことでした。

 それでは実際に、下記のチャートでユーロ/米ドルの値動きを追ってみましょう。

ユーロ/米ドル 日足

(出所:米国FXCM)

 9月21日のFOMC後に、追加緩和期待が高まります。

 それを受けて、ヘッジファンドなどは「米ドル金利の低下=米ドル安」というシナリオのもと、ドルショートを積み上げます。

 ユーロ/米ドルは11月3日のFOMCに向けてジリ高となり、11月4日には1.4282ドルまで急騰します。

 その後、「QE2」が実際に決定されると、多くの市場参加者はいっせいにユーロ/米ドルの利益確定売りに入ります。

「buy the rumor, sell the fact(ウワサで買って、事実で売る)」ですね。

 FOMC後の声明を受けて、追加緩和期待が高まった9月21日のユーロ/米ドルは1.3058ドル。

 11月上旬のFOMC後のユーロ/米ドルの高値は1.4282ドル。

 つまり、ユーロ/米ドルはわずか1カ月強で1100ポイント強も急上昇しました

 FOMCでの「QE2」という明確な材料のもと、多くのエコノミストがユーロ/米ドルの予測を上方修正しました。

 このシナリオに沿って、ユーロ/米ドルのロング(買い持ち)を積み上げた短期筋は、わずか1カ月強の値動きで、2010年のバジェットを達成したところも多数あったそうです。

 今年前半のユーロ/米ドルの急落も、材料としては「南欧のソブリンリスク(国家に対する信用リスク)⇒スプレッド(債券の利回り差)拡大⇒ユーロ売り」と極めてシンプルでした。

多くのヘッジファンドにとって、2010年のユーロ/米ドルでのパフォーマンスはかなり良好だったようです

■アイルランドからスペイン、ポルトガルへ

 さて、その後のユーロ/米ドルの動きですが、FOMCによる「QE2」に関しては、マーケットの想定と大きなカイ離はなく、再びユーロ圏のソブリンリスクが市場のテーマとなっています。

 今年前半のユーロ危機の主役は「ギリシャ」でしたが、今回は「アイルランド」です

 先週末にアイルランドが救済案を受け入れたため、いったんユーロ/米ドルは持ち直しますが、その後、アイルランドからの悪材料が噴出しています。

 11月23日の欧州市場では、ポルトガルとスペインの銀行の劣後債を保証するコストが上昇。市場の関心は、アイルランドから徐々に南欧諸国に移行してきています

 こうした状況下で、ユーロ/米ドルは11月22日の1.3786ドルの高値から反落しています。

ユーロ/米ドル 日足

(出所:米国FXCM)

ユーロ/米ドルは年末に向けて、ジリジリと1.3100ドル方向へと下落するのではないでしょうか?

■「pain trade」を探せ!

先週のコラムでもご紹介させていただいたように、ヘッジファンドを中心に、欧米の参加者の多くは、今週から「Thanksgiving(感謝祭)休暇」に入っています「米ドル/円の反撃。その背景にあるヘッジファンドの動きとは?」を参照)

 この時期は、通常であれば値動きが少ないのですが、今週に入ってアイルランドの政局不安や北朝鮮の砲撃報道などもあり、市場は荒っぽい展開が続いています。

 たとえば、今週月曜日のユーロ/米ドル相場を見てみましょう。

ユーロ/米ドル 1時間足

(出所:米国FXCM)

 先週末にアイルランドの救済策が適用されるとの報道が伝わり、週明けのアジア市場は始値が1.3717ドルと、ギャップオープン(※)して取引をスタート。

 アジア市場では一時1.3786ドルまで急騰し、アジア勢は当然、ユーロ/米ドルをロングにして欧州時間を待ちました。

 ところが、欧州の投機筋は、アジア勢がユーロ/米ドルをロングにしていることを周知しているため、欧州市場オープンと同時にユーロ/米ドルの利益確定売りを開始しました。

 このため、ギャップオープンして始まったユーロ/米ドルでしたが、先週金曜日のNY市場クローズの1.3673ドルをあっさり割り込み、アジア勢のユーロ/米ドルのロングはあっさりstop out(ロスカット)するという展開となりました。

 友人いわく、これは「PAIN TRADE..」

市場のテーマが明確であるときは、市場参加者のポジションは同方向に偏りがちです

 今回のケースのように、今週はアイルランド救済案を受けてギャップオープンしているため、アジア勢はユーロ/米ドルをロングにして待ち構えているわけですが、短期の相場はファンダメンタルズやテクニカルとは関係なく、アジア勢の嫌がる(pain)方向に動いてしまっています。

市場参加者が少なく、相場が薄いときには、こうした「pain trade」が起きやすいです。

 今週は「pain trade」に注意してトレードしたいところですね。

(※編集部注:「ギャップオープン」は前営業日のクローズ値とカイ離し、マドを空けてオープンすること。この場合、前週末の金曜日のクローズと、週明け月曜日のオープンの値が大幅に離れていること)


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