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保田隆明の株ニュースの新解釈
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2009年7月13日(月)   14:57
キリンによるサントリー買収か?
否、筆頭株主はサントリー創業一族に
 コンビニに行けば、ほぼ毎日と言っていいぐらい新しい清涼飲料商品を目にする。年間に何百という新商品が開発、発売されるが、そのうちコンビニの棚に定着するのは数えるほどである。

 定番商品を抱えて収益を安定化させたうえ、じっくりと着実にヒットしそうな新商品を開発して収益を伸ばすというのが清涼飲料業界における企業戦略の理想的な姿だが、実際は新商品開発合戦を繰り広げ、業界全体として収益率は高くない。

 消費者にとっては常に目新しい商品が登場するので飽きが来ず、企業間による競争の恩恵を受けているわけであるが、今の状況が続くかぎり、企業は国内市場での新商品開発合戦に明け暮れるために存在するような状況となってしまい、事業拡大になかなか手が回らない。

■“清涼飲料化”している国内のビール開発競争

 ビールに関しては、かつてはキリンがラガーを、アサヒはスーパードライを、サントリーはモルツを、そしてサッポロは黒ラベルの販売に専念し、市場を4社で仲良く分けていたので、4社は販促費は相当かかるものの実質的に新商品は必要なかった。季節性商品(冬限定のビールなど)を出すことはあったものの、清涼飲料業界ほどに新商品開発にリソースが割かれることはなかった。

 しかし、発泡酒や第3のビールなどいわゆるビール系飲料が登場してからは様相が変わる。この分野に関しては清涼飲料業界さながらの新商品開発合戦が繰り広げられている。

 今回、キリンホールディングス(2503)サントリーホールディングス(非上場)の経営統合が実現すれば、お互いの企業体力を摩耗し続けてきた業界内での過当競争に少しは歯止めをかけられる可能性がある。(※編集部注:本件について、7月13日7時40分の時点でキリンホールディングスは「具体的に決定している事実はありません。」という内容のニュースリリースを発行している。)

 ビールに関しては、キリンが1位、サントリーが3位、清涼飲料ではサントリーが2位、キリンが3位である。経営統合が実現すると、ビール市場、清涼飲料市場ともに新会社はトップの市場シェアを有することになる。

 ビール市場では約50%ものシェアを握り、キリンにとっては長年のライバルであったアサヒビールを大きく突き放すことができ、そして、清涼飲料市場ではコカ・コーラと拮抗しながら二大トップを形成することが可能となる。

 長年のライバルであった2社が統合すれば、とりあえずお互いが有する主力ブランド商品にリソースを集中し、新商品開発に割いていたリソースを一部空けることができる。

■「キリンサントリー」で国内制圧後は海外へ

 国内での過当競争を抑えた後は、新規事業や海外への進出にリソースを投入可能となる。

 両社は過去数年間積極的に海外展開をしてきた。キリンはオーストラリアやフィリピンの食品、アルコール飲料企業に積極投資を行い、サントリーはニュージーランドの飲料企業を買収している。アサヒビールもオーストラリアの飲料メーカーの買収を試みるなど、各社の海外進出意欲は非常に強い。すでに成熟化した日本市場を守るだけでは先の成長戦略が描けないことは誰の目にも明らかである。

 しかし、それら一連の買収劇を行った今でも、まだ欧米プレーヤーに比べると規模の面で見劣りをするのは事実である。そして、それら海外プレーヤーも、世界市場でのシェア拡大に積極的となっているのは、日本プレーヤーと同じであり、日本企業が海外で魅力的なM&A案件を見つけても、海外プレーヤーと奪い合うことは容易に想像できる。

 M&Aにおいては、最高値を支払える企業が買収に成功するのが原則であるが、最高値を付けることができる企業は、買収によるシナジーが最も大きい企業である。

 たとえばあるインド企業の買収案件において、インドにすでにオペレーションを持っている企業と持っていない企業では、持っている企業の方が販売面やコスト面でのシナジー効果が期待できるので、より高い金額を払える。

 これはあくまでもシンプルな一般的な構図でしかないが、世界的に展開する大規模企業ほどグローバルM&A市場においては有利になり得る。そして、これはまさに収穫逓増の構図であり、大きな企業はどんどん大きくなっていき、気付くと後続は大きな差がつけられているということになる。

 今の日本の飲料、食品メーカーは、海外プレーヤーに規模の格差をつけられてしまい、まさにその崖っぷちにいる。今手を打っておかないと、その格差は開くばかりとなり、海外企業を買収しようにも、毎回M&Aのオークションで競り負けてしまうのだ。
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保田隆明
ほうだ・たかあき。 小樽商科大学ビジネススクール准教授。早稲田大学商学部卒業後、リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。10年より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。
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