新年(2011年)になったが、基本的には、2010年12月時点で考えていたことに変化はない(「ユーロ/ドルの目先の下値メドは1.26ドル!『ヘッド&ショルダー』を作る可能性も…」を参照)。
また、2011年の年初のマーケットでは、中国がスペイン国債を継続して購入すると発表したことが好感され、ユーロ/米ドルが上昇した格好になっている。
中国がヨーロッパをサポートするといったニュースなのだから、この材料に対しての値動きとしてはリーズナブルだろう。
このように、欧州各国の政府高官、ECB(欧州中央銀行)関係者、IMF(国際通貨基金)関係者から都合のよい発言が繰り返されれば、目先、ユーロが反発上昇する可能性はある。
しかし、欧州の不良債権問題は簡単には解決できない。したがって、そういった発言を疑問視する声が上がってくれば、今度はユーロ売りになるわけだ。
つまり、マーケットがユーロの不良債権問題に注目すれば、ユーロ/米ドルは下落する。
現在は、その綱引きが繰り返されている状態なのだ。
■「ドル・キャリー」をめぐって上下に振れたユーロ/米ドル
まずは、ユーロ/米ドルの月足チャートからご覧いただきたい。
ユーロ/米ドルは、2001~2002年頃を起点にして大きく上昇を始め、俯瞰(ふかん)してみると、その上昇は2008年まで持続した。
この6~7年におよぶ上昇の過程については、緑の破線のサポートラインを引くことができる。つまり、2001年頃から2008年前半は、明確に「ユーロ高・米ドル安トレンド」であったと言える。
だが、2008年に緑の破線のサポートラインを割り込み、クラッシュ(大暴落)を起こした。このクラッシュでトレンド転換が起こり、「ユーロ安・米ドル高トレンド」に転換したと考えている。
2008年後半から2009年年初は「ユーロ安・米ドル高トレンド」であり、安値が1.2300ドルレベル、高値が1.4000ドルレベルの安値圏での「保ち合い相場」を形成した。
その後、2009年は総じて見れば「ユーロ高・米ドル安」で推移したと言えるだろう。
2009年が結果的に「ユーロ高・米ドル安」で推移した理由は、米国が米ドルの超低金利政策(ゼロ金利政策)をとり、かつ、米ドルをジャブジャブに供給したので「ドル余り現象」が起こり、米ドルからユーロへの資金移動が起きたからだと考えている。
これは、いわゆる「ドル・キャリー・トレード」であり、ドル金利よりもユーロ金利のほうが高かったので、その金利差享受を狙った動きでもある。
2009年は後半まで、この「ドル・キャリー・トレード」が拡大する動きが見られた。
だが、2009年後半になって、ギリシャの財政問題がきっかけとなり、ユーロ/米ドルは下落を始める。
月足チャートを見てわかるように、2009年12月以降は1.51ドル台から1.18ドル台へと大幅に下落した。この期間は「ドル・キャリー・トレード」のアンワインド(巻き戻し)が起こったのだろう。
■2007年頃から高値圏で大きな上下動が繰り返されている
ただ、1.18ドル台の安値をつけてからは、1.42ドル台まで大きくリバウンド(反発上昇)している。個人的には、リバウンドは予想外に大きいものだったと感じている。
この1.18ドル台から1.42ドル台までの上昇については、2010年11月上旬に発表された米国の金融緩和策(量的緩和策)を先取りして、多くの市場参加者が「ドル・キャリー・トレード」を先行させたためと考えている。
つまり、1.18ドル台から1.42ドル台までの上昇の期間は、「ドル・キャリー・トレード」の再拡大が起こったと言えるだろう。
2010年11月上旬のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)は量的緩和策を決定したが、事前予想の5000億ドル規模よりも大きな6000億ドル規模の金融緩和策となった。
すでに、マーケットは米国の金融緩和策(量的緩和策)をかなり織り込んだ状態だと考えているが、相対的に、ユーロ/米ドルはまだ高い水準にとどまっているとも考えられる。
現時点では個人的な思惑に過ぎないが、2007年頃から現時点までのユーロ/米ドルは、相対的な高値圏で大きく上下動を繰り返しているのではないだろうか?(上のチャート参照)
つまり、中長期的スタンスで見れば、ユーロ/米ドルが高値圏で乱高下しているとも考えられる。
ちなみに、高値圏での乱高下は、その後に下落することを示唆するシグナルであることが多い。今回もそういったシグナルではないかと見ている。
また、この後の値動きの展開によっては「ヘッド&ショルダー(※)」の可能性を考える必要もあると考えているが、「ヘッド&ショルダー」は、それが完成した時点で対応すればよいので、現時点では「ヘッド&ショルダー」を期待するのは時期尚早であるとも考えている。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダー」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼び、仏像が3体並んでいるように見えるため「三尊」と呼ぶこともある)
■マーケットのテーマは「ユーロの問題点」に移った
次は、ユーロ/米ドルの週足チャートをご覧いただきたい。
これは180本足(180週分)のチャートだ。
週足チャートを見てわかるように、ユーロ/米ドルは、1.51ドル台からの下落の際に現れたピンクの破線のレジスタンスラインを上抜けた。
このピンクの破線を上抜けた時点で、目先の「買いシグナル」が点灯したと考えている。
その後、新たに青の破線のレジスタンスラインが出現したが、これも上抜けており、再度「買いシグナル」を発している。
新たに出現したレジスタンスラインも上抜けたのだから、売り方(ユーロ/米ドルのショート派)は、この時点でいったん撤退することも戦術だろう。
欧州の財政問題(不良債権問題)が解決していないので、ユーロ/米ドルを「買い」でついて行くことには懐疑的だったが、上値メドであった1.33ドル台を上抜けたので、それ以降は様子見に転じていた。
1.18ドル台から1.42ドル台までの反発上昇の過程では、米国の金融緩和政策(米ドルの量的緩和政策)を材料にして、ユーロ/米ドルが買われてきた。
しかし、欧州の不良債権問題はほとんど無視され、この過程で、欧州のいくつかの国が格下げをされても、その材料にはほとんど反応しなかった。
ユーロ/米ドルが1.18ドル台から1.42ドル台まで反発上昇する過程においては、個人的には、欧州の不良債権問題を無視してユーロ買いを進める気にはなれなかった。どこかで「ユーロ売り・米ドル買い」をすべきだと考え続けていた。
ただし、そういった場合でも、ポジションを小さくして、かつ、便宜的なストップ・ロス(損切り)を置いて、自らを守る必要がある。
2010年11月上旬に、FOMCで米国の追加の量的金融緩和策が決定したときから、マーケットのテーマは「ユーロの問題点」に移ったと見ている。
引き続き、適宜ストップ・ロス・オーダー(損切り注文)を入れて、どこかで「ユーロ売り・米ドル買い」をすべきだ。
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