「資料2」をご覧ください。これを見ると、経験的には、ECBの金融政策は利上げ・利下げともに、これまですべてFRBの後追いとなってきました。

FRBが政策変更してから、最短で4カ月、最長では18カ月、平均すると9カ月後にECBが政策を変更してきたのです。
これは米国経済が世界経済をリードし、欧州もそれに追随するからだと思います。それが今回の場合に限って、ECBのほうがFRBよりも早く利上げするということが、果たしてあるでしょうか?
そもそも、今年はFRBも出口政策を再検討し始めて、実際に利上げへと政策を転換するのかが注目されていくと私は考えています(「【2011年相場見通し】米利上げ? 介入?『時代遅れのドル安・円高』は幕を下ろすか」を参照)。
この点でも、ECBがFRBより早く利上げを行うという見方に対して、ちょっと微妙ではないかと思っているのです。
■2011年はFRBも出口政策と早期利上げが焦点に
FRBがデフレ回避のために行ってきた「QE1(第1次量的緩和)」と「QE2(第2次量的緩和)」は、インフレという副作用をもたらす懸念のあるものです。
それでなくても、「100年に一度の危機」対策の結果としての未曽有の財政赤字拡大は、本来的に、未曽有の金利上昇をもたらすリスクのあるものです。
「資料3」は、「米国の2年もの国債と10年もの国債の利回り差」を見たものですが、簡単に言うと、米国の長期金利(10年もの国債の金利)が暴騰しかねないリスクが示されているのです。

これを回避するカギは、出口政策ということになります。
FRBは2010年も春にかけて出口政策に踏み出す姿勢を示し、早期利上げを検討したようでした。それはユーロ危機に巻き込まれて「ふりだし」に戻ってしまいましたが、今年は出口政策の検討を再開する可能性が十分にあるでしょう。
そういった中で、「QE3(第3次量的緩和)」ではなく、むしろ、出口政策の重要な位置を占める利上げへの転換がいずれ注目を集めてくるのではないでしょうか?
それこそ、米ドル安から米ドル高への転換を考える上で重要なカギを握るというのが、私の今年の為替予想におけるポイントの1つでもあります。
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