■1月の米ドル高伸び悩みはトリシェ発言のためだった
米国の金利とともに、2月の為替相場のカギを握るのは、ユーロ/米ドルの動きでしょう。
1月に米ドル/円での米ドル高が伸び悩み、出鼻をくじかれる形となったのは、「資料5」のように、ユーロ/米ドルで「米ドル高・ユーロ安」期待が裏切られ、逆に大きく「米ドル安・ユーロ高」へと反転したことが大きかったでしょう。

このように米ドル高から米ドル安へ、ユーロ安からユーロ高へと大きく反転したのは、欧米の金融政策に対する見方の影響が大きかったと思います。
1月中旬のトリシェECB(欧州中央銀行)総裁の発言をきっかけに、ECBの利上げが早ければ年内にも実施されるとの見方が広がったのです(「米国より欧州が先に利上げするとの見方は疑問。ユーロ逆襲には自ずと限界がある!」を参照)。
■利上げの順番は「英国→ユーロ圏→米国」なのか?
1月に入ってから、利上げ見通しが早まったのはECBだけではありません。
同じ欧州でも、英国の中央銀行であるBOE(イングランド銀行)では、利上げを支持するメンバーが、直近の理事会で2人まで増えてきたことなどから、早ければ、2011年前半中の利上げ予想も出てきました。
先進国サークルは「G7」と呼ばれますが、その中で、カナダだけが2010年中に利上げへと転換しました。それ以外の国では、2008年の「100年に一度の危機」以降、利上げへの転換が実現していません。
しかし、カナダ以外の先進国についても、この2011年から2012年にかけての利上げへの転換予想が出始めました。これをまとめたのが「資料6」ですが、日米欧先進国の中で利上げが早い順番は、英国、ユーロ圏、米国といった感じになっています。

これが最近の為替相場にも反映され、英ポンド高、ユーロ高、米ドル安となり、1月に米ドル高が伸び悩む一因となったのだと思います。
それでは、この先進国の利上げ予想の順番に沿って、日本以外の先進国で米国の利上げが遅くなり、米ドルがなかなか上昇しないということになるのでしょうか?
■2月に米ドル高に戻れるか、ユーロの動きが大きく左右する
BOEはともかく、ECBの利上げがFRB(米連邦準備制度理事会)よりも早そうといった見方が拡大してきたのは、米国に比べて欧州のインフレ懸念を示すデータが多くなってきたことも挙げられるでしょう。
昨年からの欧州財政危機が終息しない中でも、世界最強のインフレファイターである独連銀、BUBAの流れをくむECBが、インフレ懸念の台頭する中で利上げに踏み切るとの見方が広がってきました。
ただ、実際問題として、欧州の財政危機はまだくすぶっています。「資料7」で欧州の信用リスクを示す「欧州CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)指数」を見ると、1年前の信用回復にはまだほど遠い状況です。

このように見てくると、ユーロの命運は、ECBの利上げと欧州財政危機に伴う信用悪化の綱引きになっていると思います。
1月に米ドル/円での米ドル高の出鼻がくじかれたのは、「ユーロ高・米ドル安」への急反転の影響が大きかったと思いますので、その意味では、2月に米ドル高基調に戻れるか、ユーロの動きが大きく左右すると言えそうです。
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