したがって、エシプト混乱の最初の段階で原油価格が急騰したのは、「第3次オイルショック」を万が一に備えて織り込みにいった結果という面があったのではないでしょうか?
その後、原油価格は急騰が一服して落ち着いた動きになっていますが、エジプト問題のマーケットへの影響としては、原油相場の動きがいちばんの目安になると思います。
■米国の「QE3」はなくなった可能性が高い
さて、為替相場への影響についてはどんなふうに考えたらよいでしょうか?
難しいところではありますが、私がまず注目したのは米国の金融政策への影響です。
結論から言うと、これでFRBの「第3次量的緩和(QE3)」の可能性はほぼなくなったのではないかと思っています。その点で言えば、米国の金利上昇と「米ドル高・ユーロ安」の要因になると思います。
米国の「量的緩和(QE)」は、2009年3月に始まったものと、2010年11月に始まったものの2回が行われています。
ただ、2回目に行われた「QE2」は諸外国から強い批判を受けています。
昨年11月の「QE2」決定直後に行われたG20サミット(20カ国・地域首脳会議)では、米国は新興国だけでなく、ドイツなど先進国の一部からも強い批判を受けました。
■米国金利の上昇傾向がどこまで続くかがカギ
ところで、エジプトで長期政権打倒の動きが急拡大した一因として、世界的なインフレ懸念の中で、食料価格と資源価格の高騰が庶民の生活を直撃しているということがありそうです。
これは、「100年に一度の危機」後の景気回復一辺倒の政策を受けた結果であり、その中心が「米国の量的緩和(QE)」と言えるでしょう。
ですから、景気回復一辺倒の政策見直しが求められると、ただでさえ政治的に批判の強かった「QE」の第3弾である「QE3」の実施は、とても無理ではないでしょうか?

「資料5」を見ると、ここに来て、米国の長期金利(10年もの国債の金利)は一段の上昇となっています。
これはエジプト問題などもきっかけとなって、「QE3」の可能性がなくなったことを織り込んでいる動きといった面もありそうです。
このように見てくると、エジプト問題の為替相場への影響としては、原油価格はもちろんですが、米国金利の上昇傾向がどこまで続くかがカギになると思います。
それを見ながら、「米ドル高」がどれだけ広がるのかが、目先の焦点だと思っています。
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