■高債務国にとって、利上げと原油高はダブルパンチに
読者の方から、次のようなご質問をいただいた。
― このところ、ECB(欧州中央銀行)の利上げ期待でユーロ/米ドルが上昇していますが、「利上げ(仮に行われたとして)」と「財政危機」のどちらが中長期的に見て、より大きな影響力を持っているのでしょうか? ―
このご質問に対してのお返事が次のとおりだ。
「原油価格などの上昇からインフレに対する懸念が広がり、ユーロの利上げ期待も広がっています。
ユーロ金利引き上げならば『ユーロ買い』といった発想で、ユーロ/米ドルが上昇するといった値動きも散見されます。
ユーロ/米ドルは、ドル金利とユーロ金利の金利差に素直に反応しやすい通貨ペアで、実際にユーロ金利引き上げとなれば、それは『ユーロ買い』の材料です。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
一方、欧州の景気が悪い中で、ユーロ金利が引き上げられるならば、
もちろん、それは景気の足を引っ張ることになります。金利の引き上げは、景気にとっての悪材料です。
そういった中で、ギリシャやアイルランド、ポルトガルといった財政問題を抱える欧州諸国にとっては、原油高も、ユーロ金利上昇も、景気悪化の材料であることは間違いありません。
高債務国にとって、ユーロの利上げと原油高がダブルパンチなのは事実だと思います」
なお、これはあくまで、個人的な意見である。
■「インフレ・ファイター」はユーロが「持って生まれた宿命」
ここで気をつけなければならないのは、欧州は「インフレ・ファイター」の伝統が強いということで、特に、ドイツはインフレを忌避する傾向がある。
日本の場合は(=日本人の場合は、日銀の発想では)、景気が悪いときは経済のバランスを考えて利上げを控えるのだろうが、欧州の場合は、景気が悪くとも、インフレはもっと嫌なので利上げを選択する可能性がある。
つまり、ギリシャやアイルランド、ポルトガルといった高債務国にとってダブルパンチで大変なのは理解するが、それでもインフレにならないように、利上げを敢行するかもしれないということだ。
基本的に、これらの債務国に援助をしているのがドイツなのだから、お金を出している国の意見のほうが強いのは当然だ。
このあたりは、ユーロという共通通貨が「持って生まれた宿命」だ。
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