■予想どおり、歴史的安値である79.75円は更新された
かなり以前から、個人的な考え方として「米ドル/円は80.00円を割り込み、歴史的安値である79.75円を更新する」と明言してきた(2008年4月17日公開の「ドルはどこまで下がるのか? (5)」などを参照)。
個人的には予定どおりと言えるが、3月17日(木)に米ドル/円は歴史的安値を更新し、76.25円をつけた。
ところが、3月18日(金)にはG7による協調介入が実施され、米ドル/円は急反発。相場的には非常に難しい正念場となっている。
東北関東大震災や福島原発事故やリビア空爆など、相場を動かす材料(テーマ)は山積み状態だが、FXマーケットはそれらを消化できずに、全体的には様子見に推移している。
日本にいると、日本の大震災の報道がトップニュースになりがちだ。しかし、世界の情勢を考えると、リビアへの欧米の軍事介入の方が、より重大なトピックと考える。
それは、決して、今回の大震災で被災して困っている方々をおざなりにしているわけではないが、世界各国のニュースの扱いとしては、日本の大震災と福島原発事故のニュースは、リビアへの軍事介入の次に来るニュースだろう。
リビア情勢を見ても、それは事実上の戦争であり、これらの不幸な出来事(リビア情勢・東北関東大震災)を材料にわざわざ相場を張らなくてもよい、とも考えている。
個人的には、マーケットが落ち着きを取り戻し、まっとうな相場つきになってから参入すればよいし、それまでの間、ポジションを取らずに休憩することも立派な戦略だと思う。
相場(マーケット)は、いつでもあるのだし、なにもわざわざ難しい相場を取りにいかなくてもよい、と考えるからだ。
もっと踏み込んで言えば、難しい相場ならば、そこはあえて手を出さず、やさしい相場になってから参入すればよい、ということだ。
■協調介入の意図にまだハッキリしない点あり
3月18日(金)に実施された協調介入は「80.00円という絶対値を維持しようとしての協調介入なのか?」もしくは「今後、円安方向に導こうとする協調介入なのか?」、現時点ではその真意が読み取れない。
日本サイドは「80.00円を維持し、今後、円安方向にトレンド転換を図るための協調介入」と言いたいところだろうが、今回、協調介入を合意した国々の意図は、はっきりしない。
わざわざ、その意図を表明する国はないだろうから、推察するしかない。
未曾有の大災害に見舞われた日本国がG7各国にお願いしたのだから、「とりあえず、日本国がそうしたいのならば、当面のところは協力してあげよう」といった趣旨で、G7各国は協調介入を実施したのではないだろうか?
米ドル/円の水準を押し上げる意図があるのならば、81円、82円程度までの介入ではなく、もう一段上の、84円台ミドルと、86円台のチャート・ポイントを上に抜けるような「押し上げ介入」を実行するべきだ、と考える。
しかし、現在はそこまでの行動には出ていない。
この程度の介入ならば、単なる時間稼ぎの介入に過ぎず、トレンド転換も起こらない(=米ドル安・円高トレンドが持続する)だろう。
■米ドル/円、クロス円のショートは一時撤退するべき
しかし、3月18日(金)に、G7が協調しての市場介入(米ドル買い・円売り介入)を決定し、介入を実施したことは事実。
当面のところは、このニュースが出たことで、とりあえず米ドル/円のショート(売り持ち)は、一時撤退するべき、と考える。
つまり、米ドル/円のショート・ポジションを保有している場合は、絶対値を気にせずに、いったんスクエア(=ポジションなし)にするべきだと思う。
そして、ユーロ/円、英ポンド/円、豪ドル/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円の通貨ペア)でショートにしている場合も同様に、絶対値を気にせず、いったんスクエア(=ポジションなし)にするべき、と考える。
■「9月15日介入」の上限をマーケットは意識している
以下の「米ドル/円(USD/JPY)日足チャート」をご覧いただきたい。これは300本足(=300日)のチャートだ。
米ドル/円は、2010年9月下旬から2011年3月15日までの約6カ月の間、「80円から84円台ミドルの安値圏でのボックス相場」を形成していた。
この期間、チャート上に【ピンクの水平線】で表示したレジスタンス・レベル(=84.50円)が有効であるか否かに注目してきた。
2月中旬(2月16日)には、84.00円に近づいたのだが、この時の高値は83.95~00円レベルで、結局、84.00円にも届かなかった。
つまり、何も変化はなく、「【ピンクの水平線】で表示したレジスタンス・レベル(=84.50円)は、2010年9月下旬以降、2011年3月15日まで有効であり続けた」ということだ。
仮に、84.50円を上に抜けても、次のレジスタンス・レベル(=86.00円)が控えている。
84.50円を上に抜けても、ボックス相場の上限が86.00円へ移動するだけだ。だから、86.00円を上に抜けていかない限り、現在の「米ドル安・円高トレンド」が持続していることになる。
(財務大臣の命令により)日銀が“単独で”「米ドル買い・円売り介入」を実施したのは、2010年9月15日のことだった。
上の米ドル/円日足チャートを見ると、2010年9月15日の大陽線(大上昇を示すローソク足)が目立っている。
この大陽線は、日銀の「米ドル買い・円売り介入」による特殊な値動きを示している。
「9月15日の介入」が実施された後で、上に抜けることのできなかった85.94円は、多くの市場参加者が意識する特別の為替水準だ。
つまり、86.00円近辺はチャート・ポイントであり、86.00円近辺には米ドル売りオーダーが集中するはずだ。「86円台が強いレジスタンス・レベル(強い抵抗水準)になる」ということである。
86円台に届くような相場展開になるようならば、上述のとおりだが、このところの「戻り高値」は84円台ミドル程度になっている。そして、84円台ミドルを上に抜けることができなければ、86.00円近辺のチャート・ポイントは考える必要がない。
■今はポジションを持たないことがセオリー
3月18日(金)の時点で、G7が協調介入の合意を発表し、すでに日銀が「米ドル買い・円売り介入」を実施しているので、米ドル/円に対する考え方を変えた。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)