■豪ドルは70円程度まで反落する可能性もあり得る
次の「資料3」は、対円での豪ドルの購買力平価からのカイ離率を見たものです。
こちらも、2000年以前は1割以上の割高になることがほとんどなかったのですが、近年は2~3割の割高が当たり前になっています。
構造変化によって、豪ドルの適正水準が長期的に変化している可能性はあるでしょう。

それにしても、この数年でも購買力平価前後まで豪ドルが反落することは何度かありました。現在の購買力平価は70円程度ですから、割高の反動が入ると、その程度までの反落は覚悟する必要があるでしょう。
ちなみに、豪ドル/円の90円は、購買力平価からの割高率がちょうど3割という計算になります。
このグラフを見ても、3割を上回る割高水準で推移したことが、これまで少なかったことがおわかりいただけるでしょう。
その意味では、90円を大きく超えていく「豪ドル高」も難しいと思います。
■豪ドルの反落が続いた場合の短期的な下値メドは?
さて、豪ドル/円は最近になって、一時85円割れとなるなど反落する傾向にあります。
そこで、反落が続いた場合の目先の下値メドについて考えてみたいと思います。

「資料4」は、豪ドル/円の短期の行き過ぎをチェックする90日移動平均線からのカイ離率です。
これを見ると、カイ離率はプラス10%前後が「上がり過ぎ」の目安となっていますが、それが4月前半には8%程度まで拡大していました。
その意味では、最近の豪ドルの反落は、短期的な「上がり過ぎ」の修正と見ることもできると思います。
経験的に、短期的な「上がり過ぎ」の修正は、上ブレの反動で「振り子の原理」が働く結果、90日移動平均線割れまで続くのが基本です。
その90日移動平均線は5月13日(金)現在で、対円では84円程度、対米ドルでは1.02ドル程度にあります。そのあたりまでは、「上がり過ぎ」の修正で豪ドルの反落が続くのではないでしょうか。
ちなみに、豪ドルは昨年も5月に反落しました。この時は88円から一時71円台までと、今年よりさらに激しい下落となりましたが、その下落で安値をつけたのは5月21日でした。
その意味では、少なくとも来週いっぱいぐらいまでは、豪ドルの下落リスクを頭に入れておく必要がありそうです。
■銀暴落は、米ドル相場のトレンド転換の暗示なのか
さて、5月に入ってから原油価格の急落がありましたが、それ以上に大きなのは銀相場の急落でした。
じつは同じように、1980年にも銀相場が急落したケースがありましたが、いま振り返ってみると、この年は米ドル相場の歴史的な転換点だったのです。
当時の米ドルは、1970年代末に「カーター・ショック」と呼ばれる大暴落を経験するなど、「下落トレンド」の中にありました。
しかし、「オイル・ショック」などでインフレが進み、その対策としてFRB(米連邦準備制度理事会)が1980年から政策金利を10%にするような高金利政策に動いた結果、トレンド転換して、「米ドル大幅高」となったのです。
つまり、1980年の銀相場の暴落は、為替相場が「米ドル安」から「米ドル高」へと大転換する中で起こった現象だったのです。
今回の銀相場の暴落についても、似たような構図の中で起きた現象である可能性があり、その点が一部で注目されているようです。
「ユーロ高」も、今回見てきた「豪ドル高」も、ともに「米ドル安」の結果だったわけですが、中期的に見て、それが終わりつつある可能性もありそうだと私は考えています。
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