■例年どおりの特殊な相場となった今年のGW
まずは、ユーロ/米ドルの週足チャートをご覧いただきたい。
これは300本足(300週分)のチャートだ。
ユーロ/米ドルは、赤の破線で示した中長期のレジスタンスラインを4月上旬に上抜けた。ちなみに、赤の破線(細線)は赤の破線(太線)の平行線である。
このレジスタンスラインを上抜けた時点で、「買いシグナル」を発したと考えている。
このように、ユーロが4月上旬に対米ドルで上昇した要因は、米国(米ドル)が政策金利(短期金利)引き上げを実施しない一方で、欧州(ユーロ)は今後も政策金利(短期金利)を引き上げるという思惑によるものと考えている。
4月中のマーケットは、「ユーロ買い・米ドル売り」が一段と進んだ格好になった。
ところが、ゴールデン・ウィーク中の5月5日(木)のマーケットにおいて、ECB(欧州中央銀行)は政策金利を1.25%で据え置くことを決定した。
このこと自体は市場予想のとおりだが、その後の記者会見で、トリシェ総裁が「物価安定に関して動向を非常に注意深く監視する(monitor very closely)」と発言した。
翌月の利上げの「暗号」とされる「強い警戒(strong vigilance)」という表現が使用されなかったため、ECBに対する早期利上げ期待が後退し、ユーロ/米ドルが急落したと見ている。
5月5日(木)のユーロ/米ドルは、高値は1.4900ドルレベル(1.4898ドル)、安値は1.4500ドルレベル(1.4509ドル)で、感覚的には「400ポイントもの急落」と感じる。
ゴールデン・ウィーク中で市場参加者が薄いところをフリー・フォールしたように思えるが、実際のところは、1.48ドル台ミドルから1.45ドル台前半への急落であった。
なお、5月5日(木)のユーロ/米ドルの下落の原因については、銀(シルバー)相場や金(ゴールド)相場、オイル関連相場といったコモディティ(商品相場)の急落も挙げられるだろう。
筆者は、ユーロ/米ドルの短時間での急落を見て、「今年のゴールデン・ウィークの相場も、例年どおりの特殊な相場だ」と感じている。
このように、ユーロ/米ドルは5月5日(木)以降、大きく急落している。したがって、週足チャートには、中長期のレジスタンスラインとして、青の破線(太線)を加筆することができる。青の破線(細線)は青の破線(太線)の平行線である。
■「ヘッド&ショルダー」完成の可能性は十分に高い
続いては、ユーロ/米ドルの300本足(300週分)の週足チャートをご覧いただきたい。
ユーロ/米ドルの中長期のチャートの形状から「ヘッド&ショルダー(※)」の可能性を考えていたが、目先、ユーロが1.18ドル台から大きく上昇しているため、微妙になっていた。
個人的な思惑だが、5月4日(水)の高値である1.4940ドルが右肩の高値となるケースを想定して、「ヘッド&ショルダー」の「3つの山」を示唆している。
このコラムにも何度か書いているように、「ヘッド&ショルダー」は、それが完成した時点で粛々と対応すればよい。だから、現時点で「ヘッド&ショルダー」を想定するのは時期尚早なのだが…
つまり、「ヘッド&ショルダー」はネックラインを明確に割り込んだ時点で対応するべきであり、「ヘッド&ショルダーを作るかもしれない」といった予見(予測)でポジションを取ると、失敗することがよくある。
引き続き、「ヘッド&ショルダー」を完成させる可能性は十分に高いと考えている。
しかし、その時期は、当初考えていたパターンよりも大きく先送りされたようだ。
繰り返すが、「ヘッド&ショルダー」は、それが完成した時点で粛々と対応すればよいだけのことだ。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダー」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼び、仏像が3体並んでいるように見えるため「三尊」と呼ぶこともある)
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