■米国の金利低下はこの6月がクライマックスか
このような見方から、景気不安を受けた米国の金利低下はクライマックス局面にあり、それほど長く続かないと私は思っています。
そして、そもそも、米国の金利は短期的な「下がり過ぎ」懸念がかなり強くなっています。
「資料2」は米国の長期金利、すなわち、10年もの米国債利回りの90日移動平均線からのカイ離率です。これを見ると、経験的に、カイ離率がマイナス10%以上に拡大することが少ないことがわかるでしょう。
最近のケースで言えば、米国の長期金利が3%を下回ると、カイ離率はマイナス10%以上になってしまいます。よって、「下がり過ぎ」の懸念が強くなっていると言えるでしょう。

前述のように、1年前と現在はよく似ているようで、じつは微妙に違っています。そして、米国の金利はすでに「下がり過ぎ」の懸念がかなり強くなっています。
これらのことを合わせて考えると、雇用統計でダメ押しされた感のある米国の景気不安ですが、それが一段と広がって米国の金利がさらに大きく下落するどころか、むしろ、現在が金利低下の最終局面にある可能性は十分にあると考えています。

「資料3」のように、米国の長期金利には、6月に年間の天井ないし底値をつけて、重要な基調転換が起こりやすいといったアノマリーがあります(「この6月が今年最後のドル安となるのか?米景気不安再燃なら『大底打ちやり直し』も」など参照)。
そのアノマリーどおり、最近の米国金利の低下がこの6月中に底打ちし、反転に向かう可能性に注目する価値は十分にあると思っています。
■昨年と今年で、最大の違いは物価が上昇していること
私は今回のコラムで、昨年の「再現ドラマ」があるのかといった言い方をしてきましたが、それを象徴するのが「QE3」でしょう。
昨年11月に量的緩和政策(QE)が再開し、「QE2」が始まったように、今年の場合も「QE3」が始まるか、もしくは6月末に予定されている「QE2」の終了が直前で見直されるかどうかが大きな焦点になりそうです。
これまで、私は「QE3」はないと考えてきましたが、その大きな理由の1つが物価です。
「資料4」をご覧ください。米国の物価は下落傾向が続いていましたが、昨年暮れに底打ちし、今年に入ってからは上昇に向かい始めています。

FRBの果たすべき使命の1つが物価の監視ですが、昨年は下落傾向が続いていたものの、その後は上昇していて、方向性が違ってきているようです。
昨年、FRBが「QE2」に動いたのは物価が下落していたためです。今回はその点が違っており、はたして「QE3」はあるのかと懐疑的に見る専門家は少なくありません。
6月は下旬にFOMC(連邦公開市場委員会)が予定されています。
「QE3」への思惑も、米国の金利低下が短命に終わるのか、それとも長引くのか、その結果「米ドル安」が早期に収拾されるのか、「大底打ちやり直し」に向かうのか、それらを決める手がかりになるでしょう
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