ただ、日本で利上げしなくても景気が悪化し、株価が急落したのは、物価が下落する「デフレ」が主因でした。

物価下落により、名目金利をいくら引き下げても、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利が下がらず、その結果として景気刺激効果が限られたため、企業収益は伸び悩み、「低金利下での株価急落」が起きたのです。
今のところ、米国では物価上昇が続いています。その結果、名目金利からインフレ率を引いた実質金利は低下しています。
利下げは着実に景気刺激効果をもたらすものとなっているはずであり、この点を見ると、米国は日本とまったく似ていません。
■究極の目的がない中で、「QE3」が行われるかは微妙
それでは、この先、米国もデフレに向かうのでしょうか?
そもそも、日本が長期デフレに陥ったのは、人口減少に伴う生産性悪化といった日本特有の構造要因によるところが大きいというのが基本的な理解のはずです。
その点では、日本と米国では明らかに状況が異なります。
米国が長期デフレに陥ることが、本当にあるのでしょうか?

確かに、2010年後半にインフレ率の低下が急速に進み、デフレへの転落寸前まで追い込まれた局面で、FRBはある程度の批判も覚悟の上で「QE2」に踏み切りました。
その結果、物価は上昇に転じてデフレは回避されました。
このように、デフレ回避といった究極の目的があったからこそ、批判を承知の上で「QE2」が行われたのでした。
その意味では、最近の米国の物価は上昇傾向にあり、デフレ回避といった究極の目的がない中で、「QE3」という「伝家の宝刀」が抜かれるかは微妙でしょう。
■「異端のリセッション」なのか、それとも?
思えば、7月初めに発表された6月分の米国雇用統計が大きく期待を裏切ったあたりから、米国の景気悪化懸念が再燃し始めました。
そして、米国債のデフォルト(債務不履行)懸念が広がり、格下げ騒動があって、欧州財政危機再燃も高まる中で、金融市場に混乱が広がりました。
その結果、「荒れる夏」の中で、もはや止める術がないといった意味での「絶望の円高」ムードが浸透してきたようです。
そういった中で、経験的には説明できない「異端のリセッション」が始まっているのでしょうか?
それとも、これは単に行き過ぎた悲観論なのでしょうか?
それを試す局面がなお続いているのではないでしょうか。
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