ところで、「史上最大の米金利下がり過ぎ」は2008年12月で一巡し、その後は下がり過ぎの修正で、米国の金利は上昇へ向かうところとなりました。
その2008年12月からの金利下がり過ぎの修正局面で、為替相場では、2008年12月の87円から翌年4月に100円を回復するまで、米ドル高・円安が大きく進むところとなったのです。「資料6」をご覧ください。

そもそも、米ドル/円と米国の金利は相関性が高いので、米国金利の下がり過ぎが修正に転じたことで、米ドルの下がり過ぎも修正が広がったという理解が基本になるでしょう。
■「100年に一度の危機」の真っ最中に起こったこととは?
ただ、もう1つ、「安全資産買い」の修正といった観点もあるかもしれません。
米国債は、リスク回避局面で選好される安全資産の中で、最も代表的なものと位置づけられています。
そして、個人的には違和感はありますが、一般的に、為替で代表的な安全資産とされるのがスイスフランと円です。
2008年12月は「100年に一度の危機」の真っ最中で、いわばとびきりのリスク回避、安全資産への資金シフト局面でした。その中で、債券の買われ過ぎ、金利下がり過ぎ、そして円の買われ過ぎが起きました。
その「100年に一度の危機」において、米国株安が大底を打ったのは2009年3月でした。つまり、2009年に入ってからもしばらくはリスク回避局面が続いたことになります。
ところが、「安全資産」とされる米国債と円は、いち早く2008年12月にいったんピークを打って、反落へ転じたのでした。
その意味では、それは安全資産買いが限界に達した結果であり、言い換えれば、「安全資産バブル」が破裂したのではないかと私は思っています。
■この8月の金相場急落は何を示唆しているのか?
また、この8月下旬に、金相場が1日で5%も急落することがありました。これは2008年3月以来の急落であり、その2008年3月の急落というのは、その後半年以上にわたって30%ほど金相場が下落する展開の始まりでした。
そして、その2008年3月からの金相場の中期的な下落に並行する形で、為替市場では「資料6」のように、2008年3月の97円から同年8月の110円まで、米ドル高・円安が展開したのでした。
金もまた、代表的な安全資産の1つです。その意味では、この2008年3月からの金相場の下落も「安全資産バブル」破裂の1つであり、そこでも為替の代表的な安全資産とされる円は、やはり下落に向かっていたのです。
■安全資産への資金シフトは転換点を迎えつつある
8月下旬の金相場の急落と、米国金利の下がり過ぎ、債券価格の上がり過ぎの兆候。また、円と並ぶ安全資産の代表格とされるスイスフランも、このところ上昇が一服し、反落気味の動きが見られ始めました。
これらの動きが共通して示唆するのは、安全資産買いの限界の可能性と、安全資産バブル破裂の兆しでしょう。

「資料6」でご紹介した2008年から2009年にかけての代表的な安全資産バブルの破裂局面で、米ドル高・円安は4~5カ月間で13~15%進みました。これを米ドル/円の「安全資産バブル破裂パターン」と考えれば、年末にかけて85円前後まで米ドル高・円安が展開する計算になります。
以上、私は安全資産買いが転換点を迎えつつあると思っています。
そして、それがどんなタイミングで、どんなピッチで展開するかは、今週末の雇用統計など、米国の景気指標の結果がカギを握っていると思っています。
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