ユーロ/米ドルに関しても、考え方に変わりはない(「ギリシャは事実上のデフォルトで、欧州の不良債権問題は悪化の一途。ユーロ売り!」を参照)。
この週末にフランスのマルセイユで行われたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)は、具体的な合意もなく終了した。事実上、G7は機能していないと筆者は判断している。
そして、今週になって、ギリシャのデフォルト(債務不履行)懸念がさらに高まっている。
「事実上、ギリシャはすでに破綻している」と筆者は考えているが、欧州各国やECB(欧州中央銀行)は「まだ破綻していない」という立場をとり続けている。
だが、ここにきて、ドイツの副首相が「ギリシャの秩序ある破綻」について言及してきた。ドイツはこれまで、ギリシャ救済を前提としていたが、「ギリシャのユーロ離脱」に関して、煙が上がってきたということだ。
ギリシャのデフォルト懸念は、金融システム不安に波及する虞(おそれ)がある。
■4月に上昇し、5月に急落したユーロ/米ドル
それでは、ユーロ/米ドルの300本足(300週分)の週足チャートからご覧いただきたい。
ユーロ/米ドルは4月上旬に、赤の破線で示した中長期のレジスタンスラインを上抜け、その時点で「買いシグナル」を発した。赤の破線(細線)は赤の破線(太線)の平行線である。
ユーロが対米ドルで4月上旬に上昇した要因については、米国(=米ドル)が政策金利(短期金利)引き上げを実施しない一方で、欧州(=ユーロ)は今後も政策金利(短期金利)を引き上げるという思惑によるものだった。
そして、4月中のマーケットでは、「ユーロ買い・米ドル売り」が一段と進んだ格好となった。
だが、ゴールデン・ウィーク中の5月5日(木)に、ECBは市場予想どおりに政策金利を1.25%で据え置くことを決定したため、早期利上げ期待が後退し、ユーロ/米ドルはこの日以降は大きく急落した。
そのため、チャートには中長期のレジスタンスラインとして青の破線(太線)を、その平行線として青の破線(細線)を加筆した。
■「三角保ち合い」を下に割り込み「売りシグナル」が点灯した
6月に入り、6月9日(木)に行われたECB理事会で、ユーロの政策金利を1.25%に据え置くことが発表された。
だが、理事会後に行われた記者会見で、トリシェECB総裁から、7月の政策金利引き上げを示唆する発言がなされた。
しかし、この時点では「今後のECBのユーロ金利の引き上げ幅は、それほど大きくない」といった思惑が広がったため、ユーロ/米ドルのロングポジション(買い持ち)の解消が出て、6月9日(木)以降は下落を続けた。
ただ、とりあえずは、青の破線(太線)で示した中長期のレジスタンスラインは、今のところは有効のようである。
その後、ECBは7月7日(木)に行われた理事会で、実際にユーロの政策金利を0.25%引き上げ、1.50%にすることを決定した。
だが、利上げ発表後のユーロ/米ドルは下落している。これはECBの政策金利引き上げの思惑で、ユーロ/米ドルを買っていた向きの売りが出たのだろう。
ところが、7月7日(木)の理事会後の記者会見で、トリシェ総裁は「ECBの利上げは今回(7月)で終わりとは限らない」と発言した。そのため、同日のニューヨーク市場では、ユーロ/米ドルは1.42ドル台から1.43ドル台へとリバウンド(反発上昇)している。
ただ、上昇は続かず、ユーロ/米ドルは再度下落して1.4000ドルを割り込む場面も見られた。
以上を俯瞰(ふかん)して見ると、ユーロ/米ドルは2010年6月安値の1.18ドル台を起点に、ピンクの破線(太線)で示したサポートラインに沿って上昇していると言うことができる。なお、ピンクの破線(細線)はピンクの破線(太線)の平行線である。
また、ユーロ/米ドルは、青の破線(太線)のレジスタンスラインとピンクの破線(太線)のサポートラインに挟まれて、大きな「三角保ち合い(ウェッジ)」を作っていた。
そして、9月9日(金)に、このピンクの破線(太線)のサポートラインを下に割り込んだ。つまり、これまでも何度か述べてきたように、ピンクの破線(太線)を明確に下に割り込んだので、「売りシグナル」が点灯したのだ。
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