引き続き、米ドル/円に関する考え方に変わりはない(「やりようがないドル/円相場。取引するなら『自重』でズルッと落ちたところを狙え!」を参照)。
■現状で日本の単独介入があっても効果は薄い!
このところの米ドル/円の値動きを見ていると、76円台から77円台ミドルまで、短時間で上昇する値動きが散見されていたが、相場が落ち着くと、再び76円台まで下落した。
短時間で動いているために大きく動いたような印象があるが、結局のところ、8月上旬以降続いていた下限が75.95円、上限が77円台後半の「ボックス相場」のレンジ内での小動きに過ぎなかった。
8月以降の値動き(値幅・振幅)があまりに小さかったために、米ドル/円が短時間で動くと、ものすごい値動きのように感じたのではないだろうか?
しかし、それは相対的な感覚に過ぎず、全体の中で見れば小動きに過ぎないもので、特別な意味合いはない。
もちろん、そういった値動きをきっかけにしてマーケットに変化が出てくる可能性もあるため、油断するつもりもなかった。
そのような中で、10月21日(金)のニューヨーク市場において、米ドル/円が急落し、75.78円をつけて歴史的最安値を更新した。
特別な材料もない中で下落した理由については、多くの市場参加者がロング(買い持ち)にしていたため、自らの重みで垂れ下がり、それまでの歴史的最安値であった75.95円を下に割り込んだところにあったストップ・ロス・オーダー(損切り注文)がついたということだろう。
そして、10月21日(金)に75.78円をつけてからも76.00円近辺の安値圏で小動きとなっていたが、10月25日(火)のニューヨーク市場で再び売り気配が強くなり、75.73円をつけて、さらに歴史的最安値を更新した。
更新したと言ってもわずか5銭であり、大勢に影響はないと考えているが、これはマーケットの介入警戒感が強いことを示しているということだと思う。日本の単独介入に対する警戒感は強く、気楽に米ドル/円を売ることは難しい雰囲気だ。
しかし、多くの市場参加者が、米ドル/円をすでにロングにしている状態で、上がったところを売りたいと考える市場参加者もたくさんいると見られる。
マーケットに介入を期待する声は多いようだが、このような状況下では、日本の単独介入があっても効果は薄いだろう。
介入金額が異常なほど巨額であれば相応の効果はあるだろうが、常識で考えると、そういった巨額の介入は正しいとは言えない。
■米ドル/円の「やりようがない相場」はまだ続きそう
それでは、米ドル/円の300本足(300週分)の週足チャートからご覧いただきたい。
2007年6月以来、ずっと「米ドル安・円高トレンド」が続いており、現在に至るまで、一度として転換したことはない。
まる4年もの間、「米ドル安・円高トレンド」のままであり、このことが大前提となる。当然のことながら、今現在も、トレンドは「米ドル安・円高」である。
だから、週足チャートを見るかぎりでは、米ドル/円のトレンドは「米ドル安・円高」で変わっていないことになる。
米ドル/円は75.73円をつけて歴史的最安値を更新したものの、全体を大きく見れば、76円台や77円台での小動きに終始しており、その状態が8月上旬頃から続いている。
引き続き「やりようがない相場」となっており、マーケットの与件を考えると、この状態は続きそうだ。
このような状態がいつまで続くのかはわからないが、ガマンして、辛抱強く次の展開を待つべきところだろう。
現在は米ドル/円以外の通貨ペアで戦うほうが効率的で、大変残念だが、このような値動きが続く間は、米ドル/円のポジションは持たないほうがよい。
■レジスタンスを上抜けると「買いシグナル」が点灯するが…
週足チャートに、現在のレジスタンスラインを緑の破線(太線)で示したが、米ドル/円は、2007年6月から現在に至るまで、ずっと、この緑の破線(太線)のレジスタンスラインに従っていることがわかる。
だから、週足チャートを見るかぎりでは、米ドル/円のトレンドは「米ドル安・円高」で変わっていないことになる。
しかし、米ドル/円がこの緑の破線(太線)のレジスタンスラインを明確に上抜ける場合は「買いシグナル」が点灯する。
この緑の破線(太線)のレジスタンスラインは、現時点ではまだ有効であり、上にブレイクされていないし、ブレイクされたこともない。現在のトレンドは「米ドル安・円高」のままで変化はない。
つまり、2007年6月から2011年10月に至るまでの4年以上の間、「米ドル安・円高トレンド」のままで、今のところ、一度も「反転のシグナル」を発したことがないということになる。
また、週足チャートには、大台である80.00円と、今のところの歴史的最安値である75.73円に水平線を引いた。節目の80.00円や、安値更新の場合のその新値水準は、大きく注目される。だから、便宜的にその水準を表示した。
しかし、誰もがすぐに相場の水準に慣れるため、80.00円といった数値(数字)は、すでに特別な意味がないと考えたほうがよいだろう。
さらに、便宜上の下値のラインとしてピンクの破線を加筆したが、現在の米ドル/円は、緑の破線(太線)のレジスタンスラインとピンクの破線にしたがって、一定のスピードで下落していると断言できる。
米ドル/円の週足チャートを見ると、今回の米ドル/円の下落の起点が2007年6月高値の124円台であることがわかる。それから4年以上もの間、このレジスタンスラインの傾きにしたがって、一定のスピードで下落を続けている。
なお、週足チャートで明確な「反転の兆し」というには、この緑の破線(太線)のレジスタンスラインを上抜ける必要を感じている。
マスコミや一部のコメントで「急激な円高」と表現されることが多々見受けられるが、チャートを見るかぎり、「急激」ではなく、明らかに「一定のスピード」で円高が進んでいる。
マスコミや一部のコメントは、米ドル/円が80円を割り込んだとか、70円台とか、75円台とか、その絶対値に反応しているだけで、科学的ではない。
冷静に分析できなければ、次の動きやマーケットの変化に気がつくはずもなく、対応できなくて当たり前だ。
もちろん、未来永劫、円高が続くはずはない。気を抜かずに、冷静に相場を見て、マーケットの変化に留意すべきである。
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