■現状水準を見ながらストップ・ロスを置いて、ユーロ売り!
ユーロ/米ドルの値動きを見ると、10月4日(火)に1.3144ドルの安値をつけてから、10月26日(水)の1.4246ドルの高値まで、大きくリバウンド(反発上昇)している。
しかし、大局で見れば、この大きなリバウンドは下落途中の調整反発に過ぎなかったと考えている(「ユーロ/ドルに急落の可能性。1.4246ドルの上にストップを置き、勇気を持って売れ!」を参照)。
現地時間10月26日(水)に行われたEU(欧州連合)首脳会議で、ユーロ圏の債務危機打開に向けた包括策の協議は合意に達した。このことを材料にしてユーロが急伸し、節目の1.4000ドルを上抜けるとストップ・ロス(損切り)も巻き込み、1.4246ドルまで急上昇したのだ。
当初、このEUサミットは10月23日(日)に予定されていたが、包括策の協議は26日(水)に延期され、事前の予測では合意は難しいと見られていた。だが、合意に達したため、ユーロの買い戻しが進んでストップ・ロスを巻き込んだと考えている。
この協議では、EFSF(欧州金融安定化基金)の融資能力を1兆ユーロに拡大させること、また、銀行側との協議に基づいて、ギリシャ国債の保有者が自発的に50%の損失を負担することも決まった。
しかし、合意に至っても、欧州の不良債権問題が解決したわけではなく、大局で見れば、欧州の不良債権問題を材料にして「ユーロ売り・米ドル買い」で戦うべきだと考えている。
それでも、ユーロのショート派(売り持ち派)は、この時点では一時撤退すべきであった。損切りを巻き込んで想定以上に急上昇したためで、改めて、ユーロの売り場を探すところとなった。
筆者も「売り場探し」でユーロを売るタイミングを探していたが、ユーロ/米ドルは、その翌週の週明けである10月31日(月)には、すぐに急落に転じた。
その結果、1.38ドル台まで下落した10月31日(月)の時点で、改めて「売りシグナル」を発したと考えている。
すぐにでも、少額で「ユーロ売り」のポジションを作るところであり、その後に1.40ドル台、1.41ドル台までリバウンドしたとしても、その水準で「売り増し」のポジションを作る戦術がよい。
ただし、今回の戻り高値である1.4246ドルを上抜けるような場合には、必ず損切り(ストップ・ロス)を敢行する必要がある。
実際のところ、10月31日(月)に「売りシグナル」を発してから、ユーロ/米ドルはシグナルどおりに下落している。
また、この「売りシグナル」を発した後、1.40ドル台、1.41ドル台までのリバウンドは今のところはない。「売り増し」のポジションを作る機会はなかった。
なお、10月31日(月)の「売りシグナル」以降は下落しているのだから、当初設定したストップ・ロスは現状水準に合わせて、1.4250ドル近辺から1.3500~1.3600ドルに引き下げるべきである。
■債務問題はギリシャからイタリアへ波及した
ギリシャ問題に振り回されていたために注目度は低かったが、ECB(欧州中央銀行)は11月3日(木)に政策金利を0.25%引き下げた。これにより、ユーロの政策金利は1.50%から1.25%に変更された。
事前予想は据え置きが大半を占めていたため、予想外の利下げと言えるだろう。
もちろん、ECBの利下げは「ユーロ売り(ユーロ売り・米ドル買い、ユーロ売り・円買い)」の材料となるが、今のところは大きな反応がない。だが、今後のマーケットに影響が出てくると見ている。
ギリシャでは、パパンドレウ首相が混乱の責任を取って辞任し、前ECB副総裁のパパデモス氏が新首相に就任して大連立政権を発足させ、ギリシャ支援の包括案を受け入れた。
しかし、ギリシャ問題で混乱したことから、それが波及してイタリア国債が下落(利回りは上昇)し、新たな「ユーロ危機問題」としてマーケットに認識されてきている。
ギリシャ問題は、解決にはまだまだほど遠い状態である。それなのに、債務危機問題はイタリアへと波及しており、ますますひどい状態だ。
欧州の公式の場では、ギリシャはまだ破たんしていないことになっており、一般的にもそのように認識されている。しかし、欧州の為政者や高官が何と説明しようと、他者がどのように言おうと、ギリシャはすでに破たんし、デフォルト(債務不履行)状態にあると、筆者は判断している。
前述したように、このギリシャ救済の包括案では、銀行(債権者)が「自主的に」ギリシャ国債の50%を債権放棄をすることが決められた。
自主的であろうと、どうであろうと、元本のすべてが返済されないということは、それはデフォルト(破たん)以外の何ものでもない。「ギリシャは破たん(デフォルト)していない」とのコメントは明らかなウソであり、詭弁(きべん)に過ぎない。
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