米ドル/円は、11月下旬は77~78円台で比較的荒っぽい上下動を繰り返しているように見えたが、12月に入って、今週あたりは急におとなしくなった印象がある。
日本の当局が単独介入を実施した10月31日(月)は、当然ながら、激しい値動きであった。だが、その翌日から現在までの値動きは、介入当日のたった1日のレンジ内、すなわち、高値の79.53円から安値の75.57円の中に収まっている。
つまり、この1カ月以上の期間、米ドル/円はたいした値動きがなく、特別な変化は発見できなかったと見ている。
■介入が実施されても、マーケットの与件に変化なし
10月31日(月)に日本が単独介入を実施し、75円台から79円台ミドルまで上昇した。だが、このコラムでも介入前に何度か記述してきたように、筆者は次のように考えていた。
「協調介入は難しい(=欧米の合意は得られない)。だから、あるならば、日本の単独介入(円売り・米ドル買い介入)だが、たとえ単独介入でも介入が実施されれば、米ドル/円は上昇する。ゆえに、米ドル/円を売ることも難しい」
「そうかと言って、米ドル/円のトレンドは下落であり、米ドル安・円高なので、米ドル/円を買うことはもっとダメだ」
介入を期待する声が多かった中で、日本の単独介入が実施されたものの、この単独介入の実質的な効果は薄い。つまり、介入をきっかけにして、米ドル/円が上昇するわけではない。
日本の単独介入が実施されても、マーケットの与件には何も変化がない。米ドル/円はこれまでも、基本的にはやりようがない状況であったが、その状況に変わりはない。
なお、日本以外のG7(主要7カ国)諸国や中央銀行は、日本の行った介入に対しておおむね批判的である。大っぴらに反対するか無言であり、基本的には反対しているようだ。
欧米諸国の賛成がまったく得られないのだから、G7による協調介入の可能性はない。
■覆面介入があっても、大勢には影響がない
10月31日(月)に日本の単独介入が行われたが、米ドル/円は一時的に反発上昇するだけで、大きな流れが変わるわけではないと考えていた。そして、実際のところ、11月中旬になって76円台後半まで下落してきた。
その一方で、76円台で売り気配になると、突然反発して77円台前半に乗せるといった値動きも散見された。
その時点では、「隠密介入(覆面介入)」なのか、介入を装った「なんちゃって介入」なのか、真偽のほどは定かではなかったが、どちらであっても同じことで、どうでもよい。
ちなみに、日本の財務省は11月30日(水)に、10月28日(金)から11月28日(月)までの介入額が9兆0916億円であったと発表した。マーケットでは、10月31日(月)の介入額が7~8兆円規模だと推測されているため、11月に入っても「隠密介入(覆面介入)」を行っていたと推量することができる。
ただし、繰り返しとなるが、どちらでも大勢には影響がないと考えている。
冒頭のように、現状の77円台や78円台という水準は、10月31日(月)の介入当日のレンジ内に過ぎず、想定される範囲内でのフラクチュエーション(揺らぎ、変動)である。今のところ、特段のシグナルは見られない。
このまま米ドル/円が上昇し、中長期のレジスタンスラインを上抜けたり、あるいは、10月31日(月)の介入当日の高値である79.53円を超える場合は、マーケットの与件の変化を調べる必要が出てくる。
しかし、その水準に今のところは届いておらず、現時点では目新しいシグナルは何もない。
■そろそろトレンド転換が起こっても不思議ではないが…
それでは、米ドル/円の300本足(300カ月分)の月足チャートからご覧いただきたい。
月足チャートで見ると、米ドル/円は4~5年程度で大きく上下動を繰り返しており、現在は「一番右のレジスタンスライン」が有効であるために、「下落トレンド」であると確認することができる。
また、現在のトレンドが、2007年6月から始まっていることも確認できる。つまり、足元の下落トレンドは、現時点までで4年6カ月も続いている。
よって、前述した「米ドル/円は4~5年程度で大きく上下動を繰り返している」ことを踏まえると、そろそろトレンド転換が起こっても不思議ではないと考えることができる。
その場合、トレンド転換が起こるならば、まずは月足チャートに示した「一番右のレジスタンスライン」を上抜けるはずだ。言い換えれば、「一番右のレジスタンスライン」を上抜けないかぎり、トレンド転換は起こらないということになる。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)