すでに「クリスマス相場」となっており、ポジションをスクエアにして、年内は「休むも相場」だと考えている。何もしないで、休んでも構わない。
ただし、「休むも相場」を基本線としつつも、欧州の財政危機が何ら解決に向かっていないため、ユーロが年内に、もう一段下落する可能性は高いと見ている。
■EU首脳会議の合意は具体的ではなく、評価できない
先週は、ECB(欧州中央銀行)が12月8日(木)に、ユーロの政策金利を0.25%引き下げ、1.00%にすることを発表した。これは基本的に、ユーロ売りの材料となる。
また、12月8日(木)~9日(金)のEU(欧州連合)首脳会議では、ユーロ圏17カ国と他の複数の国が、財政規律強化に向けた条約締結を目指すことで合意した。
さらに、EU加盟国が相対融資を通じてIMF(国際通貨基金)に2000億ユーロを追加拠出すること、ESM(欧州安定化メカニズム)を1年前倒して2012年半ばに常設させることでも合意がなされた。
加えて、既存のEFSF(欧州金融安定ファシリティー)の拡充により、イタリアやスペインなどの債務問題を抱える国の救済を目指すことも明らかにされた。
しかし、ESMは来年半ばに開始とされ、現時点ではEFSFに出資する投資家はほとんどいないと見られることから、今回のEU首脳会議の合意は具体的ではなく、評価に値しないと考えている。
EU首脳会議の開催前や開催中には、評価に値する新たな合意や解決策が示される可能性があったことから、その期待感からユーロが買われる局面もあった。だが、残念ながら、事前予想どおりで「表向きだけを取りつくろっているに過ぎない」と判断せざるを得ない。
また、ECBのドラギ総裁は8日(木)の理事会後の会見で、EU首脳会議の前というタイミングではあったが、国債購入拡大とECBによるIMFへの融資案に否定的な発言をした。このことから、ECBは危機対応における関与拡大には依然消極的だと言える。
これらの結果を受けて、格付け会社はEU首脳会議の結果に否定的な見解を示している。
まず、ムーディーズは12月12日(月)に、「EU首脳会議では新たな対策がほとんど打ち出されなかった」と指摘し、来年第1四半期中にも、EU27カ国すべての格付けを見直す方針を表明した。
そして、フィッチも12月12日(月)に、「EU首脳会議では、債務危機に対する『包括的解決策』の取りまとめに失敗した」とした上で、「ユーロ圏諸国の格下げに対する短期的圧力が高まった」との見方を示した。
■10月31日の急落で、改めて「売りシグナル」が点灯した
それでは、ユーロ/米ドルの300本足(300週分)の週足チャートからご覧いただきたい。
ユーロ/米ドルは4月上旬に、赤の破線で示した中長期のレジスタンスラインを上抜け、その時点で「買いシグナル」を発した。赤の破線(細線)は赤の破線(太線)の平行線である。
ユーロが対米ドルで4月上旬に上昇した要因については、米国(=米ドル)が政策金利(短期金利)引き上げを実施しない一方で、欧州(=ユーロ)は今後も政策金利(短期金利)を引き上げるという思惑によるものだった。
4月中のマーケットでは、「ユーロ買い・米ドル売り」が一段と進んだ格好だ。
だが、ゴールデン・ウィーク中の5月5日(木)に、ECBは市場予想どおりに政策金利を1.25%で据え置くことを決定したため、早期利上げ期待が後退し、ユーロ/米ドルはこの日以降は大きく急落した。
そのため、チャートには中長期のレジスタンスラインとして青の破線(太線)を、その平行線として青の破線(細線)を加筆した。
俯瞰(ふかん)して見ると、ユーロ/米ドルは2010年6月安値の1.18ドル台を起点に、ピンクの破線(太線)で示したサポートラインに沿って上昇していると言うことができる。なお、ピンクの破線(細線)はピンクの破線(太線)の平行線である。
また、ユーロ/米ドルは、青の破線(太線)のレジスタンスラインとピンクの破線(太線)のサポートラインに挟まれて、大きな「三角保ち合い(ウェッジ)」を作っていた。
そして、9月9日(金)に、このピンクの破線(太線)のサポートラインを下に割り込んだ。つまり、ピンクの破線(太線)を明確に下に割り込んだので、「売りシグナル」が点灯した。
ユーロ/米ドルはその後、ピンクの破線(太線)のサポートラインを割り込み、「売りシグナル」を発して1.31ドル台まで大きく下落したが、ユーロ危機に対する包括案が合意に達したことを材料に、1.42ドル台まで急騰した。
大局で見れば、週足チャートに表示した青の破線のレジスタンスラインを上抜けない限り、トレンドは変わらない。
だが、振幅が大きいので、無理にポジションを維持するのは損益のブレが大き過ぎる。「売り」で戦う場合、この時点ではポジションをいったんスクエア(ゼロ)にして、改めて、ユーロの売り場を探すところだった。
しかし、前述のように、ユーロ/米ドルは10月31日(月)の急落によって、改めて「売りシグナル」を発したと考えている。
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