■サプライズな金融緩和決定で金利と為替はどう動く?
米ドル/円は、日米金利差との関係が強いので、このFOMCなどの動きを受けて、米国金利がどうなるかがポイントになります。その観点でいえば、本来はそれほど米国金利が一段と下がることにはならないため、米ドル安・円高が進むことにはならないと思います。
ここ数年のFOMCによるサプライズな金融緩和決定は、2008年12月のゼロ金利決定、そして、2009年3月、最初の量的緩和(QE1)の決定でした。
その時に、米国の長期金利がどう動いたかを調べたのが「資料4」です。
2回ともサプライズの決定に大きく反応し、金利は急低下しましたが、結果的にはそれが金利低下のクライマックスとなっていたのです。

少なくとも、これらのサプライズな決定により、新たな米国金利低下が始まったわけではなかったのです。その意味では、今回の場合も、本来ならここから新たな米国金利の低下が始まり、米ドル安・円高を後押しするものではないと思います。
■もう1つのカギ、それは、欧州債務危機問題だ
ただ、もう1つのカギは、欧州債務危機ということになるでしょう。
先ほどご覧いただいた「資料3」からすると、現在、米国の長期金利を決めているのは欧州債務危機ということになるわけです。

この悪化がまだ続き、イタリア国債の急落(利回りの急騰)懸念が続くようなら、米国の金利低下も続く可能性が出てくるでしょうから、欧州債務危機は、米国金利への影響を通じて、米ドル/円にとっても「影の主役」のような影響力を発揮していく可能性があるわけです。
ただ、私は基本的にはその欧州債務危機にも楽観的です。
■欧州債務不安は徐々に安定化に向かい始めている
「資料5」は、欧州全体の信用リスクを示す欧州CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)指数と米国株(NYダウ)のグラフを重ねたものですが、とても相関関係が強いことがわかるでしょう。

イタリアや、ある意味ではそれ以上にギリシャなど、欧州債務危機は、部分的には依然として危険な状況が続いています。
しかし、全体としては米国景気が回復し、米国株が上昇する中で、グローバルな景気回復期待が広がるとともに、欧州債務不安も徐々に安定化に向かい始めていることがわかるでしょう。
それはもちろん、ユーロ圏自身が、ECB(欧州中央銀行)の流動性対策など、債務危機への対策を講じていることが効果を上げてきたという面もあると思います。
これがなかなか一般的には認識されず、「抜本的対策をとらないからまったくダメ」のような報道ばかりが続いてきたのは、ユーロ急落が続いてきた影響が大きかったと思います。
■基本的には米ドル高・円安予想、「最後の波乱」には注意
ただ、以下の「資料6」のように、ユーロはそもそもこの1~2カ月、「欧州通貨危機離れ」というか、それとは別な動きとなっていたようです。

欧州の信用リスクを示す指標とユーロの動きはまったく別になっていたのです。
私が言いたいのは、欧州債務問題は、もちろん解決に長い時間のかかることで、抜本的もしくは劇的な改善は考えにくいものですが、一方で徐々に改善方向に向かい始めた面もあり、ECBを始めとするユーロ圏の危機対策も、一定の効果は上げているということです。
そうであれば、基本的な方向性としては、「資料3」のイタリア長期金利は6%を大きく下回る方向に向かい、米国長期金利も2%を大きく超えていくことになると思います。
そして、それが米国金利と相関性の高い米ドル/円を米ドル高・円安へ後押しすることになっていくと思っています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
ただ、その前に、「最後の波乱」がないか、それを慎重に見極める必要はあるでしょう。
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