■米金融政策の大転換で「大変なこと」が起こるのか?
イタリアの金利動向だけで金融政策を大転換するかはともかくとして、2014年まで実質ゼロ金利政策を続けるとしている方針が、「公約」ではなく、経済情勢しだいで見直しがあり得るということは、FOMC関係者自身が確認しています。
FOMCメンバーの中で「タカ派」の代表格とされるフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は、1月末に報道されたインタビューの中で、次のように語っていました。
「2014年終盤というのは経済の展開しだいだということを声明はかなり明確にしている」
「これは約束ではないし、約束として解釈されるべきではない。経済がどう展開するかに左右される」
「政策金利を年内に引き上げる必要があるかもしれない」
FOMCが金融政策を大転換する可能性が出てくるだけでも、金融市場は「大変なこと」になると予想されます。
たとえば次の「資料4」で、米国の政策金利を反映する2年債利回りの5年移動平均線からのカイ離率をご覧ください。

これを見ると、マイナス80%前後といった未曾有の領域での推移が続いており、これは実質ゼロ金利政策が採用された2008年12月に始まっていることがわかります。
そうした中で、長期金利の指標である米国の10年債利回りの5年移動平均線からのカイ離率も、マイナス40%を大きく超えて拡大しています。
次の「資料5」は、経験的には、異常な下がり過ぎの可能性を示しています。

■米金利の異常な下がり過ぎは説明できない
このように、かつてないほどの異常な金利の下がり過ぎをもたらした主因が、FOMCの超低金利政策でした。
「資料6」「資料7」のように、それを判断した根拠である米国景気の先行き不安は後退しており、最近の米国の景気指標や米国株では、異常な金利下がり過ぎは説明できない状況となっています。


また、異常な水準までの米国金利の低下を正当化してきた「最後の砦」とも言える欧州債務危機も、徐々に改善しています。それは、FOMCが要注意と指定したときよりも前の状況に戻るまで、「もうひと息」といったところまで来ているのです。
もちろん、この「もうひと息」が引き続き実現しなければ、米国金利が異常な水準まで低下している状況は変わらず、その中で、米ドル高・円安には限界が見えてくるでしょう。そして、何らかの拍子に米ドル安・円高が加速する危険性も残っているのかもしれません。
一方で、「もうひと息」が実現して、米国金利の異常な水準までの低下が修正に向かい、本格化するようならば、為替相場にも「大変なこと」が起こるのではないでしょうか?
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