■EU首脳会議を契機にユーロ/米ドルが急騰!
ユーロ/米ドルは、2012年6月29日(金)に強烈に上昇している。
下の1時間足チャートをご覧いただきたい。
(出所:米国FXCM)
欧州連合(EU)首脳会議1日目終了後の記者会見で、ファンロンパイEU大統領が、欧州安定メカニズム(ESM)による銀行への直接資本注入することを発表。
さらに、ユーロ圏首脳はスペインの融資に関連し、優先権の放棄を発表した。
これを契機に、ユーロは急騰した。
事前の予想では、今回の欧州連合(EU)首脳会議で、有効な具体策は発表されないだろう、と考えていた向きが多く、想定外の「これらの策」がきっかけとなって、「ショート・スクイズ」(ユーロ売り持ちポジションの買戻し)を誘発した、と考える。
しかし、「これらの策」がユーロ危機の根本的な解決策になるはずがない。
6月29日(金)の値動きは、マーケットに溜まっていた「ユーロ売り持ちポジション」が、損切りをした(=買い戻した)ということにすぎない、と考える。
よって、大局で判断すれば、引き続き「ユーロ売り」で戦うべき、と考える。
しかし、基本戦略は変わらずに「ユーロ売り」と考えるものの、無理をせずにポジションを小さくし、反発局面があれば「売り増し」をできるように、言い換えれば、コストのよいところで「ユーロ売り」ができるように体制を整えておくことが大切とも考える。
跳ね上がったところを売るのは精神的にもきつく、誰にとっても難しいことは十分に承知しているが、相場に立ち向かうことは、そういった困難にも耐えながら真正面からぶつかることだ。
この時点での相場で(目先のこの値動きで)、明確なストップ・ロス(損切り)のポイントは、1.28ドル台程度だった、と考える。
つまり、2012年6月末から7月の最初の時点では、1.28ドル台前半程度にストップ・ロス(損切り)を置けばよい、と考えていた。
■米国独立記念日から夏休み相場がスタート
先週の7月4日(水)は、米国独立記念日だった。毎年、夏休み相場の始まりは米国独立記念日からである。
もちろん、7月4日(水)から、急激に市場参加者が少なくなる(休暇を取る)わけではない。8月中旬に向けて、徐々に市場参加者が減少していく。
市場参加者が極端に少なくなると、通常のマーケットの経験則が効かなくなり、不規則で理屈の通らない値動きが多くなる。
7月4日(水)から夏休み相場がスタートしていることを意識して、相場に臨むべきであると考える。
■欧州中央銀行の金利引き下げでユーロ/米ドルは急落
2012年7月5日(木)の海外市場では、ECB(欧州中央銀行)が、ユーロの政策金利を0.25%引き下げ、0.75%にしたことを材料に、「ユーロ売り・米ドル買い」となった。
(出所:米国FXCM)
このユーロ/米ドルの下落は、直近の安値1.24ドル台前半(1.2400ドル近辺)を下に抜けて、新値を更新している。新値更新の下落は、「売りシグナル」である。
■パッとしない米国雇用統計でもユーロ売りになったのは…
7月6日(金)の東京市場、ロンドン市場は、ニューヨーク市場で発表される米国雇用統計(失業率)の発表を控えて小動きだった。
米国雇用統計(失業率)での反応で、まず、注目すべきなのは、米ドル/円ではなく、ユーロ/米ドルだ、と考えていた(米ドル/円の反応よりも、ユーロ/米ドルの反応の方が激しいのではないか、と考えていた)。
7月6日(金)のニューヨーク市場で発表された米国雇用統計(失業率)では、失業率は、事前予想どおりの8.2%であった。
非農業部門雇用者数(NFP)は、事前予想の+10万人に対し、発表された数値は+8万人。トータルで見れば、事前予想よりも悪い数値となった。
事前予想+10万人に対し、+8万人であるから、少し悪かった、と考える。しかし、ものすごく悪いというわけではない、とも考えている。
米国雇用統計(失業率)の結果が、事前予想よりも悪かったことを受けて、米ドル/円は下落したが、引き続き、「下値79.10ドル程度-上値80.10ドル程度のボックス相場」に収まっている。
米国雇用統計(失業率)に関しては、米ドル/円に特段の変化を与えていない、と考える。
米国雇用統計(失業率)が悪かったのだから、米国経済がかんばしくない状況であることは事実であるが、だからといって、「この結果をもって、積極的に米ドルを売るわけにはいかない」と考える。
7月6日(金)の米国雇用統計(失業率)での反応で、注目すべきなのは、米ドル/円ではなく、ユーロ/米ドルだ、と考えていた。
現在の外国為替市場での最大のテーマは、「欧州債務危機」であり、米国雇用統計(失業率)が、「米ドル買い」を促す内容だったならば、米ドル/円よりも、ユーロ/米ドルが激しく反応するだろう、と考えたからだ。
しかし、発表された7月6日(金)の米国雇用統計(失業率)は、米国経済の不調を示す内容で、「米ドル売り」を促すものであった。
しかしながら、7月6日(金)の米国雇用統計(失業率)の発表後は、「(ユーロ買い)米ドル売り」に反応せず、むしろ、「ユーロ売り(米ドル買い)」に反応した。
(出所:米国FXCM)
これは、米国雇用統計(失業率)の数値に反応したのではなく、米国雇用統計(失業率)の発表と同時に米国雇用統計(失業率)のイベントが終わり、直ちにマーケットのテーマとして「欧州債務危機」に注目が移ったのだ、と考える。
「欧州連合(EU)首脳会議の合意」を高く評価する向き(市場参加者)も多いようだが、私はまったくそのようには考えない。
欧州債務危機の解決策は、いまだに示されていない。
このところのさまざまなイベントで、ユーロがポジション調整で買い戻される場面もあったが、それは、しょせんポジション調整の域を出ていない、と考える。
つまり、大局は欧州債務危機による「ユーロ下落」、と判断している。
それではいつものように、月足、週足、日足と順にチャート分析をしていこう。
■「高値圏の乱降下」は一般的に「売りシグナル」
まずは、月足チャートからご覧いただきたい。
基本的な考え方に変化はなく、大局で判断すれば、引き続き「ユーロ売り」で戦うべきと考えている。
よって、チャートは更新しているが、月足の内容はこのところのコメントと同じである。
月足チャートで見ると、ユーロ/米ドルは、0.8500ドル近辺(安値は0.8200ドル近辺)から1.6000ドル近辺まで、大きく上昇している。
1.6000ドル近辺の高値をつけて以降は、安値1.2000ドル程度-高値1.6000ドル程度のゾーンで、大きく上下動を繰り返している。
(出所:米国FXCM)
この「安値1.2000ドル程度-高値1.6000ドル程度のゾーンでの大きな上下動」は、個人的には「高値圏での乱高下」だと判断している。
必ずというわけではないが、一般的に「高値圏での乱高下」は「売りのシグナル」である。
つまり、この大きな上下動はいずれネック・ライン(=下限)を下に割り込むことを示唆しているのだろう、と推測している。
当然ながら、このネック・ライン(=下限)は、1.2000ドル近辺のことで、ネック・ライン(=下限)を割り込む場合は、その後で大きく下落すると考えている。
チャートには、サポート・ライン(ピンクの破線)を加筆した。2007年頃から現在(2012年)に至るまでで、大きく、頻繁に、激しい上下動を繰り返したことを示すために、加筆した。
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