■「夏休み相場」だが、米ドル/円は何も変わっていない
目先の米ドル/円相場を見ると、ユーロ/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下落に引っ張られて、米ドル/円も下落し、78円台ミドル程度の安値をつけている。
今週初め(7月16日)は「海の日」で、東京市場が休場のため、市場参加者も積極的な売買ではなく、この日は米ドル/円、クロス円は、ショート・スクイズ(=買戻しによる上昇)気味に動いている。
「夏休み相場」になったが、マーケット(外国為替市場)の与件(相場に与える条件)は具体的には何も変わっていないと考える(ほとんど何も変わっていない、と考えている)。
そういったもとで、マーケットの思惑だが、QE3(米国の量的金融緩和政策の第3弾)の可能性が高まってきたと考えている。
QE3は、米国の株価対策として実施されることになるのだろう、と予測している。
もちろんQE3がすぐに実施されるのではなく、実施されるとしても9月頃ないしは、それ以降になるのだろう、と考えている。
しかし、実施されるのは先のことであろうとも、QE3の可能性が高まれば、マーケット(市場参加者)はそれを先読みして行動に出る。つまり、QE3に備えたポジションに調整するということだ。QE3は、「米ドル/円の売り材料」である。
最初に述べたとおり、具体的には何も変わっていない。中長期のチャートで見るならば、すでに上昇トレンドに転換した、と私は考えている。つまり、チャートで判断するならば、米ドル/円は「買い」と考えている。
だから結論として、米ドル/円に関してはちょうど良い「夏休み」と考えて、米ドル/円のポジションをスクエア(=ポジションなし)にして、何かするのならば、ユーロ/米ドル(もしくは、ユーロ/円)などに集中する方が得策だと考えている。
■直近の値動きでボックス相場下値の79.10円をブレイク
下の1時間足チャートをご覧いただきたい。
ごく目先の米ドル/円相場は、「下値79.10円程度-上値80.10円程度のボックス相場」を作っていたが、直近の値動きで下値をブレイクした。
(出所:米国FXCM)
日銀の金融緩和期待から、79円台後半に上昇した局面では、本邦輸出企業などの米ドル売りや、機関投資家の米ドル売りが集中して出てきたようだ。
80.00円近辺には、目先で米ドル/円を売りたい市場参加者が大勢いる様子である。
80.00円には、為替オプションがらみの米ドル売りオーダーもあるようだ。
80円台前半を明確に上に抜けて、さらに80.50円を明確に上に抜ける場合は「買いシグナル」点灯なのだが、目先の相場で80.00円近辺の「米ドル売りオーダー」をこなし、さらに80.50円近辺の「米ドル売り」をこなすほどの「買い」は難しい、と考える。
■日銀の金融緩和はなく、円相場は元の水準に
直近の値動きでは、「日銀が金融緩和を実施するのではないか?」といった思惑から、米ドル/円は、79円台前半から79円台後半に急上昇したが、結論として、日銀は金融緩和を実施しなかった。
その結果、思惑的に79円台後半にまで急騰した相場は、元の水準(79円台前半)に戻した。
その後は、クロス円下落の影響で78円台に下落した、と考える。
目の前の米ドル/円相場は、目先やりようがない。やりようがないのならば、やらなければよい、と考える次第である。
個人的には、米ドル/円が私にとって最重要通貨ペアであるから非常に残念なのだが、リスクばかりが大きく期待収益が極端に小さい状態と判断している。
それではいつものように、月足、週足、日足と順にチャート分析を行なう。
■月足チャートでは上昇トレンドに転換したかにも見えるが…
まずは月足チャートで、中長期のトレンドを確認していただきたい。なお、チャートは更新しているものの、文頭に述べたとおりに、具体的には何も変わっていない。
2007年6月の高値124円台から始まった米ドル/円の下落トレンドを示すレジスタンス・ライン(一番右の緑の破線)を、上に抜けたことが読み取れる。
(出所:米国FXCM)
この、「一番右の緑の破線」を、中長期のレジスタンス・ラインととらえるならば、下落トレンドから上昇トレンドに、トレンドが転換したと言える。
ただし、米ドル/円が今回の安値75.32円を下に抜ける、つまり新値を更新すると、上述は明確に否定される。
しかし、気をつける必要があるのは、以下の点だ。
米ドル/円が現時点での高値程度(つまり84円程度)、ないしは、高値85~86円程度をつけて、それから下落に転じる場合は、中長期のレジスタンス・ラインの傾きが緩やかになるだけで、下落トレンドから、上昇トレンドに転換しないケースもあり得るということだ。
■新たなレジスタンス・ライン出現の可能性も
上の月足チャートをご覧いただくとわかるとおり、「ピンクの破線」で新たな中長期のレジスタンス・ラインを加筆した。
個人的には「このラインは、時間が経過するとなくなるのではないか?」と考えているが、現時点ではまだはっきりしないので、描かないこともまた恣意的にすぎると考え、表示した。
米ドル/円が、今回の安値75.32円を下に抜けると、つまり、新値を更新すると、この「ピンクの破線」が、中長期のレジスタンス・ラインになる。
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