■米QE3への期待でユーロ/米ドルが上昇
今週はユーロ/米ドルのチャート分析を行なう。
まずは、下の4時間足チャートをご覧いただきたい。
このところのユーロ/米ドルは、概して言えば、下限を1.20ドル台ミドル、上限を1.24ドル台ミドル程度として大きく上下動を繰り返していた。
チャートには、下限1.20ドル台ミドル-上限1.24ドル台ミドルのボックス相場を「紫の破線」で表示している。
(出所:米国FXCM)
「夏休み相場」の真っただ中で振れ幅は大きいものの、具体的な水準では大きな変化がない相場つきだった、と考える。
8月下旬になって、上限であった1.24ドル台ミドル(1.2450ドル近辺)を、明確に上に抜けたので、ユーロ/米ドルのショート派(売り持ち派)の目先のストップ・ロス(損切り)を誘発した、と考える。
1.2450ドルよりも上に、断続的にストップ・ロス(損切り)があったのだろう。
この上昇の理由(材料)は、QE3(米国の第三次量的緩和策)への期待が高まったことだと考える。
このところの米国経済指標では米経済の回復を示すものもあり、また、米株式市場も堅調だったことから、QE3は先送りされるのではないかといった見方が広がっていた。
ところが、8月22日(水)に公表された7月31日(火)~8月1日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録に「多くのメンバーが『景気が十分かつ持続的な回復の兆候を示さない限り追加緩和が近く必要になる可能性が高い』と判断した」とあったため、QE3に対する期待感が一気に高まった、と考える。
■目先のユーロ/米ドル取引は「少額のユーロ売り」で
確かにQE3は、「米ドル売りの材料」である。
目先の損切りを巻き込み、ユーロ/米ドルは1.25ドル台後半程度にまで上昇した。
しかしながら、大局で見れば欧州債務危機による「ユーロ下落」に変化がない、と考えている。
下のチャートには、短期のサポート・ラインを「緑の破線(太線)」で示し、その平行線を「緑の破線(細線)」で表示している。
(出所:米国FXCM)
つまり、目先のユーロ/米ドルは、この「緑の破線(太線)」の傾き(=スピード)で上昇している。
この短期のサポート・ライン「緑の破線(太線)」を下に割り込む場合は、「売りシグナル」となる。
1.26ドル台ミドル程度にストップ・ロスを置いて、少額の「ユーロ売り」で良い、と考えている
それではいつものように、月足、週足、日足と順に分析していこう。
■「高値圏の乱降下」は一般的に「売りシグナル」
月足チャートで見ると、ユーロ/米ドルは、0.8500ドル近辺(安値は0.8200ドル近辺)から1.6000ドル近辺まで、大きく上昇している。
1.6000ドル近辺の高値をつけて以降は、安値1.2000ドル程度-高値1.6000ドル程度のゾーンで、大きく上下動を繰り返している。
(出所:米国FXCM なお、ユーロが発足した1999年より前のチャートはECU(欧州通貨単位)を代わりに使ったチャートになっている模様(ザイFX!編集部))
この「安値1.2000ドル程度-高値1.6000ドル程度のゾーンでの大きな上下動」は、個人的には「高値圏での乱高下」だと判断している。
必ずというわけではないが、一般的に「高値圏での乱高下」は「売りのシグナル」である。
つまり、この大きな上下動はいずれネック・ライン(=下限)を下に割り込むことを示唆しているのだろう、と推測している。
■1.1850ドル~1.2300ドル程度ゾーンにネック・ライン
当然ながら、このネック・ライン(=下限)は、1.2000ドル近辺のことで、ネック・ライン(=下限)を割り込む場合は、その後で大きく下落すると考えている。
チャートには、サポート・ライン(ピンクの破線)を加筆した。2007年頃から現在(2012年)に至るまでで、大きく、頻繁に、激しい上下動を繰り返したことを示すために、加筆した。
先月の7月上旬に、ネック・ラインと想定する1.2300ドル程度を完璧に割り込み、安値は1.20ドル台ミドルの安値をつけている。
しかし、ネック・ラインは1.1850ドル~1.2300ドル程度のゾーンのどこかにあると推測できるが、まだ明確にネック・ラインを割り込んだ、とは言えない状態が続いている。
ただし、月足チャートを見てわかるとおりに、1.26ドル台のこのところの安値を更新した時点で「売りシグナル」を発しており、その「売りシグナル」が有効な状態が続いている。
ネック・ラインは上述のとおりに、具体的な為替レート(数値)では事前に断定できないが、1.1850ドル~1.2300ドル程度のゾーンのどこかにあるはずだ。
この1.1850ドル~1.2300ドル程度のゾーンのどこかにあるネック・ラインを割り込んだ場合は、激しくユーロ/米ドルが急落することで、事後的にわかるはずだ。
ただし、ネック・ラインと考えられる一番下のレートは、当然ながら1.1850ドル近辺である。
つまり、1.1850ドルを割り込むまで相場が走らない場合もあり得る。すなわち、ウジウジとした相場つきが続く可能性もあるということだ。
しかし、突如として激しくユーロ/米ドルが急落するケースも十分にあり得るので、要注意だ。
1.20ドル台までの下落をみたが、この程度の下落スピードではネック・ラインを割り込んだ場合の急落とは言えない、と考える。
ネック・ラインを割り込んでの急落は、もっと激しい値動きを想定している。
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