ザイFX編集部です。5月26日から、約4カ月間にわたって繰り広げられてきた「FXリアルトレード対決!」は9月30日をもって幕を閉じた。知識、経験、環境、手法……etc、すべてが異なる4人の個性的な挑戦者達が、FXという共通の土俵で自腹の10万円をリアルに運用、どこまで増やせるかという挑戦だった。
結果は4人中3人が元本割れという厳しい結果に終わった。当初は「倍増、いや3倍増は狙える」と意気込んでいた挑戦者達は、序盤から中盤は行ったり来たりの動かない相場に、そして終盤は想像を遥かに超える動きすぎる相場に戸惑い、翻弄されつつも、敢然と立ち向かった。
対決をつぶさに見てゆけば、そこには幾つかの有効な投資法や数々の教訓があった。また、幾多の困難を乗り越えた挑戦者達の腕前も、確実に向上したのがおわかりいただけたと思う。為替相場は明日も明後日も続くが、ひとまずは確定した順位を見ていただこう。
■ひろぴーはラスト1カ月だけで27%増!
1位は兼業トレーダーのひろぴー氏。最終的な資産残高は13万2923円で、見事、当初の「控え目な目標」であった3割増を達成した。「4カ月をやり遂げて感無量です。もう心身ともに疲弊しました。風邪ひきそうです」と、ヘトヘトの様子。凄腕トレーダーが居揃う「FX友の会が送り込んだ刺客」という触れ込みもあって、プレッシャーは相当だったようだ。
だが、そんなひろぴー氏の戦いも順風満帆だったわけではない。とくに当初の3カ月は特に目立った成果を上げられず、何度も元本割れに陥った。だが、当初は慌てる様子もなく「いつかチャンスが来ます。まあ見ていてください」と余裕を見せていた。
というのも、ひろぴー氏はいわば乱世型のトレーダーで、相場の均衡が破れて強いトレンドが出るときに力を発揮する投資スタイルだったからだ。当初の3カ月は一定の値幅の中で行きつ戻りつを繰り返すボックス相場、上値で仕掛けは押し戻され、下値で仕掛けては跳ね返されが続き、コツコツと資金が削られていたのだった。
だが、コツコツと天井を叩いているうちにやがて小さな穴が空く。それが8月、米ドル/円が103円の壁を突破したところだった。何度となく上値突破に賭けていたひろぴー氏は、海外の大口トレーダーたちがこぞって105円トリガーのオプションを物色し始めたのを理由に「ドル/円は10月までに105円を突破する」と一気に勝負に出た。
いわゆる「オプションバリア撃破」の手法が的中、首位に立つとそのままゴールまで一気に駆け抜けた。「オプションバリアの突破を狙う投資法はとても有効で、もっと個人投資家に流行らせたいと構想してから早2年が経ちました。今回、このように結果を残せたことで、興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいです」

一方、当初の3カ月では無敵の強さを誇ったのに、ラスト1カ月であっという間に資産を減らしてしまったのが2位のボビー・オロゴン氏だ。最終的な資産残高は9万171円で、ラストの追い上げでも元本回復に届かなかった。「悔しい、マジで悔しい。これで終わったと思いたくない…」と、相当無念だったようだ。
ボビー氏は「いろんなストラテジーを持っている」と言うが、このバトルで強さを発揮したのはご存じ「フンコロガシ・ストラテジー」だった。これは後を向きつつも前進するフンコロガシの仕事ぶりからの命名で、ひろぴー氏とは真逆でボックス相場に強い両建ての投資法。
毎回、ニュースや経済指標などからマネーの流れを予測して「今週の想定レンジは〇円~〇円」と設定。上値に近づくほど買いポジションを利益確定して売りポジションを増やし、下値に近づくほど売りポジションを利益確定して買いポジションを増やし…の繰り返しでコツコツ利益を積み上げていった。
さらに「想定レンジの±50銭まではポジションを建て続ける」「想定レンジの±1円までは損切りしなくていいように調整する」などのサブルールも盤石で、無敵に思われた。だが、奇しくも本人が「そろそろボックス相場が終わりに近い」と予言した通りになり、それに適合するオオクワガタ・ストラテジーを持ち出したところで落とし穴にハマってしまった。
そのままフンコロガシ・ストラテジーで行っていれば…と思わなくもないが「自分にはいろんなストラテジーがあることを証明したかったし、最後に投げるか投げられるかの勝負を見せたかった。それで見事に投げられてしまったわけだけど、マジで悔しい。自分がこんなもんだと思われたままで終わりたくない」
■えみりは大胆な女になり、ドラゴン氏は星になった…。
3位の高山えみりは資産残高8万1853円で取引を終えた。一時は首位に立ったこともあったし、終盤は2位逆転まで数百円まで迫る場面もあった。だが、結局は指定席となった3位を脱出することはできなかった「応援してくださったのに巻き返せなくてすみません。10万円を死守するトレードに徹すれば良かったのかな…」と果敢に挑戦した終盤に後悔も滲ませる。

だが、最低単位の1000通貨でポジションを張り、利益も損失も数円~数十円で確定させてしまうような「ちまちまトレード」で10万円を死守したところで、どんな成長があっただろうか。「大胆な女になる!」と宣言してからのトレードでは、増えた感動も減らした悔しさもひとしおだったはず。相場に賭ける「真剣さ」は読者の皆様にも伝わったはずだ。
さらに、これまでタイミングや方向性について流されがちだった彼女が、最後にして「ボリンジャーバンド+MACD」でタイミングを測る投資法に出会い、自分のものにしかけている。「せめて元本に戻したいなと思って、いまはユーロ/ドルでトレードしています。バトルが終わったことで少し冷静にチャートが見れそうです。もう少し、私なりのやり方で成果が出せるように頑張ってみます!」
そして、ぶっちぎりで最下位に終わってしまったのが小田原ドラゴン氏。最終的な資産残高は3万9586円と、4万円の大台も割ってフィニッシュとなった。漫画家にはオチが必要不可欠だが、FXでまさかここまでオチてしまうとは…。
FXは「増やすのは大変、減らすのはあっという間」というが、ここまで減らすのは逆に大変だ。しかも、あたりまえだがわざと減らそうと思ってやっていたのではない、本人はどこまでも真剣に1円でも増やそうと真剣に取り組んだ結果なのだ。逆に天才。

「なんでこうなったのかは、自分でもよくわかりません。上がると思って買えば下がるし、下がると思って売ったら上がるし。強いて原因を上げるなら、損切りが遅かったから…ですかね」。ただ、損切りが早かったとしても減るスピードが遅くなっただけかもしれないが…。
だが、愛犬ちょんぴーに売り買いの判断を選ばせる「ちょんぴートレード」には見るべきものがあった。まさか「犬に選ばせるなんて…」と思われたかもしれないが、7連勝を記録するなど伝説も残した。結局「右側に書いた方を選んでただけだったようです」とこれにもオチがついたが、事実は事実である。
「中途半端にやっても面白くないので、つねに全力で勝負しました。どんなに損しても元本10万円以上に減ることはないので…。ただ、FXをやっていると為替のことばかり考えてしまいますね。僕はマンガのネタも考えなきゃいけないのに、そういうときも為替が気になってしまって、あまりよろしくありませんでした」。
わずか数日で1600万円を溶かしてから相場とは距離を置いていたドラゴン氏、リベンジしてもらおうとお呼びしたのだが、なんだか申し訳ないことをしてしまった。最後には、ちょんぴーとともに天使たちに導かれ、星になったドラゴン氏。おつかれさまでした。
と、順位が確定し、締めのご挨拶が終わったところでもう一つ。相場が動いて「これからが本番」というところでゴールを迎えたひろぴー氏、「こんなもんだと思われたまま終わりたくない」ボビー氏、「せめて元本回復まで挑戦したい」というえみり氏のたつての希望により、あと1カ月間「泣きの一番、延長戦」が実施されることになりました。
順位がもう確定したので、各者「思い切りぶん回す」と言っています。ここからは自らのプライドを賭けた戦い。満身創痍のドラゴン氏も付き合ってくれます。
というわけで、このリアルトレード対決は10月いっぱい継続します。毎日更新しますので、引き続きお楽しみください。

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