黒田バズーカを受けてフルレバロング！
「国会議員になってから、トレードらしいトレードはしていなかったんですが、去年は10年に一度の大相場でしたから、米ドルを買って買って買って買って……含み益が出たらまた買って、どんどん買い増していった。それがあのニュースになったんです。国会議員だと隠しようがないですね」
衆議院議員会館の一室でそう教えてくれたのは、当サイト「ザイＦＸ！」での連載、「どうする？どうなる？日本経済、世界経済」でもおなじみ、元為替ディーラーにして衆議院議員のマット今井こと、今井雅人さん。
【参考コンテンツ】
●「どうする？どうなる？日本経済、世界経済」（今井雅人）
「維新・今井氏、 FXで5千万円稼ぐ」というニュースが大手ポータルサイトで話題になったのを見た人も多いはず。このほど、国会議員の所得公開で、今井さんが2014年に5130万円の利益をあげていたことが明らかになったのだ。
「買ったのは去年の10月31日ですよ。黒田さんが追加金融緩和を発表した日。当時は『やるとしたら来年だろう』とみんな思っていたから、サプライズでした。さらに同じ日にＧＰＩＦ（年金積立金管理運用独立行政法人）もポートフォリオの比率変更を発表したわけです」
ＧＰＩＦが発表したのは国内債券を60％から35％へ、日本株を12％から25％へ、外モノ（外国債券・外国株式）は23％から40％へ比率変更するという大胆なものだった。
※ＧＰＩＦ（年金積立金管理運用独立行政法人）ウェブサイトより
株高・円安の「選手宣誓」だった！
「日本国債を半分近くに減らすなんて常識はずれでしたし、日銀とＧＰＩＦの２つを同日に発表するなんて『日本株を上げます！ 円安に向かわせます！』と選手宣誓しているようなもの。どう考えても必然的に株高・円安に向かっていくとしか考えられませんでした」
２つのニュースに為替ディーラーの血が騒いだ今井さん、米ドル/円をひたすら買い上がっていった。
「レバレッジが25倍になるくらいまで買っていったけど、口座に数百万円くらいしか入っていなかったから。そんなにたくさん買ったわけじゃない。株？ ＦＸも株もって両方やるほどヒマじゃないから（笑）」
（出所：MetaQuotes Software社のメタトレーダー）
国会の仕事の合間にスマホでトレード！
維新の党の政調会長に就任したこともあってか、取材中にも電話が鳴ったり、メモが差し入れられたりと、かなり忙しそうだった今井さん。そんな激務の間にトレードする時間はあるのだろうか。
「今はどこでも取引できるでしょ。スマホに何種類かＦＸのアプリが入ってるからね。これはＦＸトレード・フィナンシャルだし、こっちは外為どっとコム」
「今はどこでも取引できるでしょ」と、スマホアプリの取引画面を見せてくれた今井さん。多忙な毎日を過ごす今井さんがトレードするには、スマホアプリは必須アイテムなのかも
とスマートフォンを見せてくれた今井さん。スマホ片手にポチポチとトレードしていたようだ。
「毎日やっていたわけではなく、２、３日に１回くらいかな。最初に買った根っこのポジションを持った上で、上がったなと思ったら一部を決済して、下がったところで買い直すといった感じでトレードして、10月31日から年末までの間に決済して利益になったのがあの金額ですよ」
「5000万儲けたって、買いっぱなしにしてただけじゃないの？」なんて思ってた人、多そうだけど、実際には数日程度のスウィングトレードの繰り返しだったわけだ。
（出所：MetaQuotes Software社のメタトレーダー）
「フルレバ・ストップなし」の大胆トレード
「多いときには数百万ドル程度のポジションを持ちました。ストップ（損切り注文）も入れてなかったし、レバレッジもめいっぱい。初心者はやっちゃダメだけど、どう考えても下がるとは思えなかったから（笑）」
数百万ドル程度のポジションをフルレバレッジで持って、ストップも入れずに平然としていられる今井さんのメンタルに感服…。安易にマネをせず、我々一般トレーダーは、必ずストップを入れて、レバレッジも控えめにいきましょう！
今井さんは経験があるがゆえのこと。初心者であれ、中級者であれ、ストップは必ず入れて、レバレッジも控えめに！
「国会議員だからインサイダー情報があったんじゃないか、なんて言われるけど、黒田さんがそんな大事なことを漏らすわけないじゃない。インサイダーっていうんなら、銀行のディーラーのほうがよっぽど有利ですよ。
彼らは誰がどんな注文を入れているか見えているんだから。でも、大相場を取るにはみんなが知っている情報で十分。公開されている情報を見てどう感じるか、どう分析するかの違いだけです」
コラムでも爆発的な円安を予測していた！
黒田バズーカ＆ＧＰＩＦの比率変更を今井さんがどう分析したか。発表直後に更新された当サイト「ザイＦＸ！」での連載「どうする？どうなる？日本経済、世界経済」には以下のとおり、それが残されている。
私がいつも申し上げていることですが、（１）材料はサプライズ度が高ければ高いほど相場への影響度が大きくなる、（２）実際に売り買いの需給が崩れるようなものは、影響が大きいということです。
日銀の追加金融緩和などは（１）に当たりますし、ＧＰＩＦのポートフォリオ見直しは（２）に当たります。
（中略）
すでにかなりの株価上昇、円安が進んでいますが、まだ序の口だと私は思っています。とりあえず米ドル/円は、2014年内に120円あたりまでは米ドル・高円安が進む可能性もあると考えています。
【参考記事】
●金融市場に衝撃が走った３つの要因とは？ドル/円は年内に120円まで上昇の可能性（2014年11月６日、今井雅人）
安倍首相が株式市場に注目するワケとは？
「別にお金を儲けることに執着があるわけじゃないんですよ。ゲームというと言葉が悪いかもしれませんが、先ほどのコラムのように、自分で分析して作戦を考えて取引するのが好きなんです。
それに、マーケットのことがわかっていないと経済政策だって考えられません。安倍さんだって毎日、株価を見ているそうですよ。株価と支持率が連動しているからだって（笑）」
マーケットのことがわかっていないと経済政策は考えられないという今井さん。常に金融市場の動向はチェックしているようです。ウソか誠か、安倍首相も、支持率と連動しているから株価を毎日見ている！ なんてウワサも…
試しに支持率と日経平均を重ねてみたものの、「連動してると言われればそうかも」という程度……？
※支持・不支持のデータはNHK放送文化研究所「政治意識月例調査」より
金融緩和第一弾、そのとき、今井さんは――？
しかし、昨年10月の追加金融緩和が「10年に一度の大相場」だというなら、アベノミクス相場が始まったころや黒田さんが日銀総裁に就任した直後の金融緩和第一弾はどうだったのだろうか。
「正直言うとタイミングを逃したんだよね。株高・円安が始まったのは2012年11月くらいでしたよね？ 野田さんが突然、解散と言い出したら市場が動き出して。
こっちは急に選挙だ！って言われて。突然の選挙で忙しくて、とてもトレードのことまで考えていられないじゃない（笑）」
（「衆議院議員・今井雅人氏に聞いてきた（２） 数百万ドルのドル買いは125円台で全決済!」へつづく）
（取材・文／ミドルマン・高城泰 撮影／和田佳久）
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