■中国経済が悪化してもアメリカや日本への影響は大きくない
中国の景気が多少悪くなったところで、アメリカや日本が受ける影響はそれほど大きくないという田代さん。
「なぜかというとアメリカや日本は輸出比率が低いからです。2013年のデータではアメリカの輸出比率は13.5%、日本は16.2%に過ぎません。
中国の景気が悪くなり、中国への輸出が減ったとしても、そもそも輸出の依存度が低いので影響は限定的と思われます。ただし、ASEAN諸国など輸出比率が高い国は大きな影響を受けるはず。そこに投資を行っているアメリカの金融機関なども打撃を受けるでしょう。
そういう意味では中国の景気減速は世界経済に影響を与えますが、景気減速懸念程度で今回のようなひどい狼狽売りが起こるとは考えにくいですね。
もし、景気が理由で今回の世界同時株安が起こったのなら、投資家は中国経済の大崩落を予測したことになりますが、実際はそうではありません」

■中国経済の7%成長はそもそも無理。6%程度で十分
田代さんは中国国内の状況は海外が危惧するほど悲惨でないとも言う。
「たとえば、2015年1月~6月の都市部新規雇用者数は約718万人で、すでに年間目標の71.8%を達成しています。失業率は5.1%前後で安定しており、雇用状況はおおむね良好と言えるでしょう。
また中国では、最低賃金が上昇していますが、これはより付加価値の高い産業へと構造改革を進めていることの現われでもあります」
中国では旧態依然とした国有企業などを解体し、新たな産業を生み出そうと徹底的なスクラップ・アンド・ビルドを行っており、国を挙げて構造改革を推進しているのだという。
「新たな産業はすぐには育たないので、しばらくは景気は良くはならないでしょうが、将来に向けての構造改革は着実に進んでいます。
経済成長のエンジンをふかす一方で、構造改革というブレーキを踏んでいるような状態で、7%という高い成長目標を達成するのはそもそも無理があり、実際は6%程度の経済成長でも十分なのです」

中国は7%という高い成長目標を達成するのはそもそも無理があり、実際は6%程度でも十分だという田代さん
「ただ、社会主義国であるため高い目標を掲げる必要があり、7%という高い目標を計画として示すことで、スクラップ・アンド・ビルドを加速させようというもくろみが中国政府にはあります。
中国国内では海外が騒ぐほど景気減速は深刻にとらえられていません。確かに景気は良くないけれど、それほど危機的な状況ではないからです。むしろ、景気減速という言葉に踊らされ、過剰に反応する方が危険だと思います」
(「田代尚機氏に聞く中国経済(2) 世界同時株安の背景に中国の米国債大量売り懸念」へつづく)
(取材・文/佐乃美歩絵 撮影/和田佳久)
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