■11月の総選挙がすべてを決める!
トルコでは今年(2015年)6月にも総選挙があったばかり。そのときはエルドアン大統領率いる与党AKPが過半数割れ、連立政権協議も不調となり、11月に再選挙が行なわれることになった。
「エルドアンには他党と連立を組む気は一切なく、最初から再選挙に持ち込み、過半数を狙うつもりだったようです」

2015年6月の総選挙で過半数割れとなった与党・AKP。ただ、エルドアン大統領には連立を組む気はなかったのではないかと指摘するエミンさん
そうしたら野党が連立すればと思うのだが、そうもいかないようだ。
「クルド人政党のHDP(国民民主主義党)と、民族主義的なMHP(民族主義者行動党)は犬と猫の関係。MHPは『絶対にHDPと連立は組まない』と公言しています」
この2党が組まない限り、野党が過半数を得るのは無理。かといって、AKPに連立を組む気もない。となると、政権は成立しない。エミンさんは11月の総選挙をどう予想しているのだろうか。
「結果は基本的には6月と大きく変わらず、AKPはやはり過半数を取れないのでは…と思っています。再々選挙となるかもしれませんし、そうなればトルコリラ安でしょう」

■トルコリラ底打ちの条件はAKPの過半数獲得
AKPも野党も過半数を取れずに連立政権が成立しなければ、「じゃあ、もう1回!」と永遠に総選挙がループされる可能性もあるそう。そんな国には誰も投資したくないから、トルコリラ安になるはず。
「11月の総選挙の結果は2つ。AKPが過半数を取れるのか、取れないか、です。
AKPが過半数を握れば政局の安定化でトルコリラは底打ちするでしょうし、過半数を取れなければ、政局不安が高まり、トルコリラはさらに下落する」

■トルコリラは34円までの下落も覚悟を!
ではエミンさんが予想するように、11月の総選挙でもAKPが過半数を取れなかった場合、トルコリラはどこまで下がるのだろうか。
「トルコのエコノミストの予想だと、米ドル/トルコリラは3.50リラをターゲットとする人が多いですね。そのくらいまではトルコリラ安が進むことを覚悟しておいたほうがいいでしょう」

(出所:CQG)
2013年に1.77リラだった対米ドルのレートは現在2.99リラ。2年9カ月で70%近く米ドル高・トルコリラ安が進んでいるが、もう一段のトルコリラ安に備えておいたほうが良さそう。
日本人が気になるのはトルコリラ/円のレートだけど、これは米ドル/円と米ドル/トルコリラのレートの割り算から計算できる。米ドル/トルコリラが3.50リラになったとき、1ドル=120円だったとしたら、トルコリラ/円は……34.28円!

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 週足)
トルコリラ/円を買っている人はまだまだ警戒する必要がありそうだ。
(「天才トルコ人・エミン氏に聞くトルコリラ(2) トルコリラの行方は『田中角栄』が握る!?」へつづく)
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久)
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