■【G20】リスクオフの打開はならず
注目された2月26日(金)~27日(土)にかけて開催されたG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)ですが、リスクオフの原因である中国経済の減速や原油安に対する根本的な対策は出てきませんでした。
先週(2月22日~)後半はG20への期待から株式市場も米ドル/円もジリ高でしたが、今週(2月29日~)はジワジワと株安・円高が進むのでしょう。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

(出所:株マップ.com)
ヒラリー・クリントンが「日本は輸出を増やすために円安に誘導している」との認識を示したのは有権者向けの人気取りなのでしょうが、気になるのはユーログルー プのダイセルブルーム議長が日本について、「競争的な通貨切り下げの状況に陥るのではないかとの多少の懸念があった」と釘を刺した発言。
ジリジリと円高が進んでも協調介入はもちろん、単独介入も難しくなっています。
G20の声明文で注目したいのは「Brexit(イギリスのEU(欧州連合)離脱)」リスクについての文言がつけ加えられたこと。これでいったん英ポンド安に対しては調整が入るのかもしれませんが、戻しは限定的でしょう。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
■【英ポンド売り】31年ぶりの月足終値を示現
Brexitリスクの文言が加えられたのは、加えなければいけないほど、Brexitのリスクが高まっていると読むこともできます。
Brexitリスクを織り込もうとするオプションの動きから英ポンド売りが出やすく、上値を抑える可能性が高い。
結論から言えば、今週(2月29日~)も英ポンド売り。英ポンド/米ドルの月足は31年ぶりの1.40ドル割れでクローズしました。今までにない領域に入っており、もう一段下げる可能性が高まっています。
【参考記事】
●月足終値で1.40ドル割れなら31年ぶり!英ポンドを暴落させたボリスショックとは?(2月25日、西原宏一)

(出所:CQG)
英ポンド/米ドルの最初のターゲットは1.37ドルくらいでしょうか。1.40ドルを割れてからオズボーン財務相やBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のカーニー総裁が為替水準についての発言を繰り返していますから、かなり居心地が悪い水準なのでしょう。
ただ、イギリスにはジョージ・ソロスとの戦いで敗北した苦い経験(※)があります。この段階だと口先介入はあっても、実弾介入はないでしょう。実弾介入があるとしたら6月の国民投票でBrexitとなり、英ポンドがさらに大暴落した場合…。
そのときは為替の水準がどうのではなく、通貨としてのクレディビリティ(信頼性)の問題になります。
(※編集部注:ジョージ・ソロス氏は「英国経済の低迷にも関わらず英ポンドが課題評価されている」ことに注目し、英ポンドを売り浴びせ、英国を欧州通貨制度(ERM)から離脱させて、10億ドル以上を稼ぎ出したと言われている。これが1992年9月に発生したいわゆる「ポンド危機」)
【参考記事】
●ポンド急落の原因はロンドン市長にあり!? 6月国民投票で英国はEUを離脱するのか?(2月23日、西原宏一&松崎美子)
BrexitはEU全体の問題でもありますから、ユーロも弱くなっています。まして来週、3月10日(木)には追加金融緩和の発表を明言しているECB(欧州中央銀行)理事会が控えている。欧州通貨全般、当面は弱いのでしょう。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
先週末、2月26日(金)に実施されたアイルランド総選挙では連立与党が大敗。欧州統合のメインストリームが崩れ始めています。ユーロに対するネガティブな動きも続きそうです。
(次ページでは米雇用統計や中国全人代、今後の戦略の話題が…)
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