■【ルー発言】熊本地震で介入の可能性は残された
今週(4月18日~)のイベントの前に振り返っておきたいのが先週末の動き。
まずG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)ではアメリカのルー財務長官が「円高が進んでいるが、市場の動きは“秩序的”(orderly)だ」と発言。日本の当局が目論んでいた為替介入に対して、先回りして釘を刺した格好です。
さらにIMF(国際通貨基金)の関係者も「極端に無秩序な動きにならない限り、日本が介入する必要はない」と発言しています。
もともとは麻生財務相が「過度な変動は経済や金融の安定に悪影響を及ぼしうる」と円高への懸念を示したことが、ルー発言のきっかけになったようです。
これで為替介入はさらに難しくなったのですが、一方で不幸なことに先週(4月11日~)、熊本地震が起こりました。読者の方々の中にも被害にあった方がいるかと思います。心よりお見舞い申し上げます。
地震についてはイギリスでも多く報道されており、心を痛めています。どうか1日も早い復興をお祈りしています。
東日本大震災の直後、急激に進んだ円高に対してG7(先進7カ国)は協調介入を行ないました。
【参考記事】
●米ドル/円は中期的に円安の流れへ。76.25円への急落が「陰の極」だった可能性(2011年3月24日、西原宏一)
●歴史的安値更新のあとに協調介入。米ドル/円の売りは一時撤退するべき(2011年3月23日、松田哲)
ルー発言を見ると介入への道は閉ざされたようですが、熊本地震の被害があまりに大きいようであれば、介入はありえるのでしょう。
■【ドーハ会合】原油増産凍結見送り。3つの円高材料重なる
週末、4月17日(日)には原油の増産凍結をめざしたドーハ会合も開催されました
今年(2016年)1月に経済制裁が解除されたばかりのイランは制裁前のレベルまで増産したいため、今回の会合は欠席しています。
サウジアラビアはイランも含めた増産凍結を主張し、合意を得られませんでした。原油がまた30ドルを割り込むようなら、サウジの妥協を求む声は強まるでしょう。
【参考記事】
●ドーハの悲劇!?ドーハ会合で原油増産凍結見送り! 原油は6%超急落、為替は円高!
先週(4月11日~)までの原油高や世界的な株価上昇の前提となっていたのがドーハ会合での合意。それが失敗したわけですから、しばらく調整の続く可能性がありそうです。
原油がこのまま2月の安値を割っていくような動きになることは想像しにくいですが、リスクオフ要因ではありますよね。

(出所:CQG)
先週末に起きた3つのできごと=ルー発言、ドーハ会合の決裂、そして熊本地震と、すべてが円高を示唆。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
さらに何度かお伝えしている前回G20であったとされる、米ドル高是正をめざした「上海合意」を考えれば、やはり米ドル/円は頭が重いのでしょう。
【参考記事】
●新年度に入りドル/円はすでに5円下落! 安倍首相は消極的も介入はあり得るのか?(4月12日、西原宏一&松崎美子)
●安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に!(4月7日、西原宏一)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
世界最大の資産運用会社であるブラックロックの動きも気になるんですよね。
CEOのフィンクさんが昨年(2015年)4月に来日したときには日本への期待を熱く語っていましたが、ここへきて日本株について「オーバーウェイト(買い推奨)」から中立へ変更…。

(出所:株マップ.com)
まだ「アンダーウェイト(売り推奨)」ではありませんが、外国人投資家の日本に対する見方を象徴しているのかもしれません。
(次ページではECB理事会や新興国、そして、米ドル/円の話題が…)
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