■ヒロセ通商株、突然の急騰劇の理由は?
ヒロセ通商の株価が急騰している。最初に材料視されたのは2016年7月末に発表された第1四半期の決算が好調だったこと。決算発表の翌営業日にストップ高となった。
FXを主力とする上場企業は6社。それぞれの第1四半期決算を比べてみると、業界トップでFX以外にも多岐にわたる金融商品を扱っているGMOクリック証券(正確には同社の持株会社・GMOクリックホールディングス)を除けば、たしかにヒロセ通商の数字は群を抜いている。

■資産25億円のカリスマ投資家がヒロセ通商を大量購入!
ただ、この決算によるストップ高は序章でしかなかった。ヒロセ通商株はさらに上昇を続けたのだ。その材料になったのは8月10日(水)、「片山晃」氏により提出されたヒロセ通商の大量保有報告書。
片山晃氏は「五月」のハンドルネームでも有名な個人投資家。
2005年に65万円で株式投資を開始すると大成功。7年半後には資産10億円を突破し、カリスマ・ファンドマネジャーである藤野英人さん率いるレオス・キャピタルワークスにアナリストとして参加。その後、再び個人投資家に戻り、現在の資産は25億円を越えるという超有名個人投資家なのだ。
五月さんによる大量保有報告書が伝わった翌営業日、五月さんに追随して買おうとする「イナゴ投資家」たちにより、再びのストップ高となった。

■もう一人の有名投資家もヒロセ通商株を買っていた!?
五月さんは、なぜヒロセ通商株を買ったのだろうか――。
そんなことを思いながらツイッターを眺めていると、さらに驚くべきツイートを発見した。
正直に告白しますが、最近私はヒロセ通商をひたすら買っていました。大株主になると保有比率が3%を超えるので税金を考えて自重しましたが、割と本気買いしました( ̄▽ ̄)
このツイートの主は「たーちゃん」さん。筆者も以前に取材したことがある株式投資家だ。2年ほど前の取材時点で資産は6億円だった。こちらも五月さんに劣らぬ実力を持つバリュー投資家だ。
たーちゃんさんのツイートは、五月さんの大量保有報告書が提出される5日前の8月5日(金)。奇しくも稀代の投資家2人が同じようなタイミングで、それぞれヒロセ通商に目をつけていたことになる。
■稀代の投資家2人で浮動株の大部分を買い占め!?
たーちゃんさんはどのくらい買ったのだろうか。ヒントになるのが税金についての記載だ。
発行済株式総数の3%を超える大口株主に対しては、配当所得の軽減税率が適用されなくなる。他のツイートを見るとキャピタルゲイン(値上がり益)とインカムゲイン(配当益)の両方に期待しているとの言葉もあったため、軽減税率が適用されるギリギリ、3%弱程度買っているのでは? と推測できる。
五月さんの保有比率は、発行済株式総数の5.24%。たーちゃんさんは3%を超えない程度、2%台後半まで買い集めていたとすると、2人の合計は約8%になる。
ヒロセ通商の浮動株(市場で売買される株)比率は9.9%だから、五月さんとたーちゃんさんの2人で浮動株の大部分を買っていることになる……!
■ヒロセ通商株は何が魅力なのか?
なぜ2人の投資家はヒロセ通商株を買い集めるのだろうか。冒頭に紹介した第1四半期決算は理由にはならない。大量保有報告書を見ると、五月さんは遅くとも6月から買い集めていたからだ。
五月さんはヒロセ通商の好業績を予見していたことになるし、第1四半期決算が発表され、株価が急騰した直後の8月3日(水)にも買い増していることを見るに、さらなる株価上昇を期待してもいるようだ。
これはたーちゃんさんも同様で、「株価1000円未満は誤差に過ぎません」とのツイートがあった。
そこで、ヒロセ通商の特徴を、ザイFX!ならではの視点から見てみよう。
■ヒロセ通商が買われる理由を探る
FX会社にとって儲けのタネはスプレッドと取引手数料(ただし、取引手数料は無料というFX会社も多い)。利用者に多く取引してもらうことで利益を高めるのが基本だ。そのため、各社は取引高に応じたキャッシュバックキャンペーンなどを行なって、利用者の取引をなるべく増やそうと尽力する。
ヒロセ通商の月間取引高を見ると、ブレが非常に大きい。
ただし、これはヒロセ通商だけではなく、FX会社全体の傾向だ。
6月のBrexit(英国のEU離脱)騒動のような相場の急変があれば取引高は増えるし、為替市場が閑散としていると取引は減少する。
【参考記事】
●緊急特集:EU離脱・英国国民投票まとめ。まさかのEU離脱で世界に激震

■月間取引高、ヒロセ通商は3位争い
では、日本のFX会社で取引高が多いのはどこか?
矢野経済研究所が発表しているデータを見ると、この数年、上位5社の顔ぶれはあまり変わらない。GMOクリック証券(GMOクリックホールディングス傘下)、DMM.com証券(非上場)の2社が抜きん出て、YJFX!(ヤフー傘下)、ヒロセ通商、それに外為どっとコム(澤田ホールディングスが約40%の株式を保有する持分法適用会社)の3社が準大手として追いかける構図だ。
ヒロセ通商は準大手として安定した地位を築いており、このところ、取引高順位を上げ気味ではあるのだが、他社と比べて飛躍的に伸びているというほどではない。これは目新しい買い材料とはならなさそうだ。
【参考記事】
●もはや全方位スキなし!? グルメ系FX会社が数々の企業努力で取引高国内第3位に!

(出所:矢野経済研究所)
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