■米大統領選の投票日前にも注目イベントが!
これが尾河さんの長期的な見通し。でも、Brexit(英国のEU離脱)の記憶があるだけに短期的な値動きも気になるところ。
最後のテレビ討論会も終わり、今後、投票日(11月8日)までに相場が動きそうなイベントはあるのだろうか?
「11月1日、2日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されますが、無風でしょう。
政策を変更することはまずないし、声明文の景気判断などが市場の憶測を呼んで、株式市場を下落させるようなことがあれば大統領選に影響するかもしれません。
そんなことがないよう、細心の注意を払うと思います」
(本記事の取材は10月21日(金)に行っています)

■11月4日発表の米雇用統計とトランプの関係
11月4日(金)には米雇用統計の発表も控えている。
「これがけっこう大事なんです。今年(2016年)9月、10月発表分は弱い数字が続いています。
『7月、8月発表分が良くて、9月、10月分が悪い』というのは昨年(2015年)と同じ。
ただ、昨年は11月発表分が強い数字だったため、12月に利上げできました。昨年のペースで考えるなら、11月4日(金)発表の数字が強くないといけない」
これが弱い数字になると12月の利上げ期待が遠ざかり、リスクオフムードが強まるかも。
「市場にショックをもたらすようだと、トランプさんが『それ見たことか! 去年、利上げなんてしなければよかったんだ』と勢いづくかもしれません」

■ヒラリー当選なら「年末107円」が見えてくる
米雇用統計を無事に乗り越えて、いざ迎えた投票日。「ヒラリー当選!」の一報が流れたら、相場の反応は?
「『トランプではなかった』という安心感から初動は株高となり、円安になるかなと思います。
ただ、市場の注目はすぐに12月利上げの有無へと移っていくと思います。利上げ環境が整ってくるようなら、今年(2016年)の年末には米ドル/円が107円近辺まで上昇する見込みが出てくる」

尾河さんは、米利上げ環境が整ってくるようなら、2016年年末には米ドル/円が107円近辺まで上昇すると見込んでいるという
ヒラリーさんなら市場の反応は巡航速度といった感じで、そう大きな動きにはならなそう。問題はやっぱりトランプ当選の場合だ。
「一次的なリアクションとして、円高になる可能性が高い。
勝利には至らなくても開票途中に、たとえばフロリダやオハイオといった重要な州でトランプさんが勝てば、それだけでバタバタと円高が進むかもしれません。
トランプさんの勝利が確定すれば、100円割れもあるかなと思います」
トランプ当選ならBrexitの再来、「リスクオフの円買い」が強まりそう。
■トランプ支持率のバロメーター・メキシコペソ
「トランプさんが『国境に壁を作る!』と吠えているメキシコのペソも売られるかもしれません。
投機筋がトランプ支持率のバロメーターのように売ったり買ったりしていますから。
でも、じゃあトランプさんが大統領になったら、どれだけメキシコの実体経済にインパクトがあるかというと、さほどでもないかもしれません」
「アメリカとメキシコの国境に壁を作る! 費用はメキシコ持ちな!」とトランプさんは吠えているが…。
「移民対策のわかりやすいターゲットとしてメキシコをやり玉に挙げていますが、実際に壁を作れるとは思えませんし、米大統領選にここまで一喜一憂してメキシコペソが動く必要があるかは疑問です」

メキシコとの国境に壁を作るというトランプさんだが、実際に壁を作れるとは思えないと尾河さんは指摘。ここまでメキシコペソが動く必要があるのかも疑問だという
今はトランプさんの支持率が上がればメキシコペソが売られ、トランプさんのスキャンダルが持ち上がればメキシコペソが買われと、バロメーターになっているが、それも一過性の動きのようだ。
【参考記事】
●4.75%の高金利!カギはトランプ氏が握る!? 今、メキシコペソが注目されるのはなぜ?

ヒラリー当選なら基調は円安方向も大きく動かない可能性もありそうだが、トランプ当選だと急変しそうな11月9日(水)の為替市場。値動きに振り回されないよう、事前に戦略を練って備えておこう。
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/小島真也)
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