■13年目を迎えるくりっく365が新たな取り組みを発表
FXの公設市場、くりっく365を運営する東京金融取引所。日本で唯一の金融先物取引所として、1989年に開設された東京金融先物取引所がその前身ですが、その後、2004年に会員制法人から株式会社へ組織が変更され、2005年7月から、くりっく365の取引を開始した歴史があります。
当初は法人を対象とした金利先物などの取り扱いがメインだったので、取引所として一般投資家の認知度が高まったのは、個人向けの商品として誕生したくりっく365の提供が始まってからといえそうです。

2007年にこれまでの金融先物取引法が廃止され、金融商品取引法が新たに施行されたことを受けて、社名を現在の東京金融取引所へ変更しています。ということは、くりっく365が始まった2005年7月には、まだ、変更前の東京金融先物取引所という社名で、サービスを展開していたんですね。
【参考コンテンツ】
●FX会社徹底比較!:特集「くりっく365」はなんで安心なの?
くりっく365は、開始からまもなく13年目を迎えることになりますね。月日が経つのは早いな……なんて話はこれくらいにしましょう。
さて、その東京金融取引所が先日、ウェブサイト上に「2017年度-2019年度 中期経営計画」を公開しました。
中期経営計画といえば、将来的な経営ビジョンを実現するために、企業が今後数年で取り組むべき課題などを示したものです。株式投資をやっている人の中には、企業の株を売買する前に、その企業の中期経営計画をしっかりチェックする人もいますね。
とはいえ、株の話をするわけではありませんし、そもそも東京金融取引所は株式会社ですが、証券取引所に株式を上場していません。
今回は、東京金融取引所が発表した中期経営計画にどんな内容が盛り込まれていて、今後、くりっく365に新しいサービスが追加される計画はあるのか?といった点をお伝えしたいと思います。
■くりっく365とくりっく株365が合体!?
今回、東京金融取引所が発表した中期経営計画は、2017年度から2019年度にかけてのもの。
ちなみに、前回公表された中期経営計画は2014年度-2016年度、その前は、なぜかウェブサイト上から削除されていますが2011年度-2013年度、さらにその前は2008年度-2010年度と、3年ごとに中期経営計画がリリースされています。
ということで、新しい経営計画の具体的事業の中から、個人投資家に影響がありそうだと思ったところをピックアップして青い枠で囲ってみました。

(出所:東京金融取引所)
個人投資家目線で、気になる計画は3つありました。まず、この中にある「証拠金の一体管理の確立による取引推進」とは、どういうことなのでしょうか?
これは、前回2014年度-2016年度の中期経営計画で、株価指数証拠金取引を扱うくりっく株365の事業戦略のところに掲げられていた、「くりっく株365とくりっく365の口座一元化を2014年度に目指す」という目標が引き継がれたものになります。
東京金融取引所には3年前から、くりっく365とくりっく株365の両方を取り扱う証券会社やFX会社が、くりっく365とくりっく株365の両方の口座を持っているユーザーの口座を、ひとつにまとめて管理できるようにしよう、という計画があったようです。ですが、まだ実現には至らず、2017年度-2019年度も引き続き、実現に向けて議論を進めていくということのようですね。
これに関しては、中期経営計画と同時に公表された「平成29年度 業務計画」の中に、「証拠金一体管理の導入による取引の推進」が具体策として盛り込まれています。

(出所:東京金融取引所)
そして、東京金融取引所のウェブサイトに「証拠金一体管理制度の新設について」という案件名で、2017年5月11日(木)まで、「パブリックコメント」を募集するページが登場しました。

(出所:東京金融取引所)
まだ、制度要綱の案に対して意見を募集している段階ですが、ちょっとずつ、実現に向けて動き出している感じがします。業務計画にあるとおり、この先1年以内にくりっく365とくりっく株365の口座が一本化されることになるのか、注目ですね。
■くりっく365にNDD方式が導入される?
次に、「DMA環境の提供等次世代システムによる投資家参入の促進」とありますが、ここでいうDMAとは「Direct Market Access」。いわゆる、市場直結型の取引形態のことを指していると思われます。
日本のFX業界の中ではNDD(ノー・ディーリング・デスク)という呼ばれ方で浸透している、インターバンク市場の金融機関と実質的に直接取引できる方法ですね。
そういえば、国内のFX会社ではサクソバンク証券がNDDのことをDMAと呼んでいますが、金融庁や証券取引所などでも市場直結型の取引をDMAと言っているので、こちらが正式な名称ということなんでしょう。
【参考記事】
●マイナススプレッドを体験できるかも!? NDD方式で取引できる口座を徹底比較!
でも、現在のくりっく365で採用されている、複数のマーケットメイカーの提示したレートの中から最良のレートを合成して、そのまま投資家へ提供するしくみ自体が、すでにDMA方式なのでは?という疑問が…

(出所:東京金融取引所)
そこで、ザイFX!編集部が東京金融取引所に問い合わせをしてみたところ、東京金融取引所のいう「DMA環境の提供」とは、主に海外のヘッジファンドや、プロップと呼ばれる自己資金で運用を行う投資会社などの参入を促進するため、こうした大口の顧客が直接的に、取引所へ注文を出すことができるしくみを構築していくことなんだそうです。
ということは、個人投資家に影響のありそうな事業計画と思ってピックアップしてみたものの、これは個人投資家向けではなく、ヘッジファンドなどをターゲットにしたものということ。
すでに株や債券のマーケットでは、ヘッジファンドや機関投資家が証券会社の発注システムを借りたり、自前のシステムを用意して取引所に直接注文を出す方法が幅広く浸透しています。それと同じようなサービスを為替でも提供しようということですね。
なので、この件については一般の個人投資家には関係ない話のようです。
ただ、計画どおりにDMAが提供され、環境が整備されてくれば、そのうち一定の要件を満たした大口の個人投資家などに対して、くりっく365の口座があるFX会社を経由することなく、より直接的に注文を執行できるシステムが提供される可能性もあるかもしれませんね。
そして、もっとも気になる項目として…
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