■目先は上昇中だが、積極的な米ドル/円買いは避けたい
5月12日(金)のG7財務相・中央銀行総裁会議では、具体的な合意や、重要な決定は、何もなかった、と考える。
5月中旬になって、トランプ大統領がロシア当局者に機密情報を漏らしたといった疑惑、そして、解任前のコミー連邦捜査局(FBI)長官に、フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)への捜査をやめるよう求めた、といった疑惑が報道された。
この疑惑を材料に、米ドル/円は、短期のサポート・ライン「青の破線」を割り込み、「売りシグナル」を発した、と考える。
この「売りシグナル」に従い、110円台前半の安値を付けている。
110円台前半の安値から、いったん反発しているが、「トランプ大統領の疑惑」といった材料を、十分に織り込んだとは言えない、と考える。
5月26日(金)のG7首脳会議も、具体的な合意や、重要な決定は、何もなかった、と考える。
4時間足チャートに表示したように、この時点での米ドル/円は、ボックス相場「赤の破線」を形成した、と考える。
(出所:ヒロセ通商)
ボックス相場「赤の破線」の上限は112円台前半程度、下限は110.00円近辺、と考える。
このボックス相場「赤の破線」をブレイクした方向について行くことがセオリーと考えていたが、このボックス相場「赤の破線」を下にブレイクし、「売りシグナル」を発した、と考える。
そして、米ドル/円は「ピンクの破線」で示したボックス相場を形成した、と考える。
ボックス相場「ピンクの破線」の上限は111.00円近辺、下限は109.00円近辺、と考える。
直近の値動きでは、短期のレジスタンス・ライン「緑の破線」を上に抜けて、「買いシグナル」を発し、上述のボックス相場「ピンクの破線」を上に抜けて、さらに「買いシグナル」を発した、と考える。
ただし、短期のチャート(4時間足)を俯瞰すると、現在の米ドル/円は、もう一回り大きいボックス相場「紫の破線(太線)」を形成中、と考える。
(出所:ヒロセ通商)
ボックス相場「紫の破線(太線)」の上限は112円台ミドル程度、下限は108円台後半程度、と考える。
チャートの形状から見ると、このボックス相場「紫の破線(太線)」の上限は113.50円程度までの上昇余地がある、と考える。
しかし、積極的な「米ドル買い・円売り」には賛成しかねる、と考える。
むしろ、上昇したところで、「米ドル売り・円買い」の水準を探す、と考える。
■「トランプ大統領の疑惑」については今後へ持ち越し
今月初旬の6月8日(木)は、「ECB理事会」、「英国の総選挙」、「コミー元FBI長官の議会証言」とイベントが集中した。
米ドル/円への影響では、「ECB理事会」は直接の関係はない、と考える。
「英国の総選挙」は、ビッグ・サプライズとは言いかねるのだが、メイ首相率いる保守党が、過半数を割り込んだ。
保守党の勝利を想定して、英ポンドが買われていた向きもあるので、英ポンド/円の損切りの「売り」が、一定量出た、と考える。
英ポンド/円の売りは、米ドル/円の売り圧力になった、と考える。
「コミー元FBI長官の議会証言」に関しては、事前に、その内容が報道されていたので、大きな混乱にはなっていない。
しかし、コミー元FBI長官は、トランプ大統領からフリン前大統領補佐官の捜査を中止する要請があった、と証言した。しかし、この要請が司法妨害にあたるかどうかについては、特別検察官が判断するべき、とも述べた。
この問題(テーマ・材料)は、決着しておらず、今後に持ち越す、と考える。いわゆる「トランプ大統領の疑惑」に関しては、今後の展開を待つしかない状況だ。
■6月FOMCは「米ドル買い」の内容だったが…
今月中旬は、6月13日(火)、14日(水)にFOMCがあったので、概して様子見の状態だった、と考える。
今回のFOMCでは、ドル政策金利の0.25%引き上げが確実視されていた。
今回0.25%の利上げが実施されることを前提にして、今後の米国金融政策で、利上げのスピードを加速する可能性の有無、つまり、現在のマーケットのコンセンサスは、「2017年年内に、もう1回の利上げ」だが、「2017年年内に、あと2回の利上げ」になる可能性の有無を探っていた、と考える。
FOMC後の会見で、「2017年年内に、もう1回の利上げ」で決着した、と考える。
そして、FRBのバランスシートの縮小に関して、「いつから、どれくらいの規模で行うのか?」を探っていた。
バランスシートの縮小は、2017年年内に開始し、当初月間100億ドルのペースで縮小することが発表された。
イエレンFRB議長はFOMC後の会見で、「比較的早期に」バランスシート縮小を開始する可能性がある、と表明したので、9月にバランスシート縮小を開始し、12月に政策金利の0.25%の引き上げを想定しているのだろう、と考える。
バランスシートの縮小開始は、来月(7月)からになるのではないか、といった予想も散見するが、常識的に考えれば、上記の通りだろう、と考える。
今回のFOMCは、基本的には米ドル金利を非常にゆっくりと、段階的に引き上げることを確認し、FRBのバランスシートを、こちらもゆっくりと縮小することを確認した、と考える。
内容としては、「米ドル買い」の材料と判断する。しかし、このこと(米国の金融政策)をもって、単純に「米ドル買い・円売り」良い、とは考えがたい、と考えている。
つまり、米ドル/円の大局的なトレンドを考えると、単純に上昇トレンドと言い切れない、と考える。
6月16日(金)の日銀の政策決定会合は、事前の予想どおりに「現状維持」で、影響なし(ノーインパクト)、と考える。
それぞれの金融政策が出揃い、イベント終了後で、市場参加者の気持ちに、一服感がある、と感じている。
(2017年6月28日 東京時間11:35記述)
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