■SBI大学院大学金融研究所のFX研究会がアンケートを実施
2017年12月6日、SBI FXトレードの公式ウェブサイトに、「個人投資家向けFXレバレッジ規制に関するアンケート調査について」というリリースが出ました。

リリースの文章にもありますが、2017年9月28日付けの日本経済新聞朝刊に店頭FXのレバレッジ10倍規制が金融庁で検討されている旨の記事が出たことを受け、SBI大学院大学金融研究所が主催して、「FX研究会」が開催されたとのこと。
SBI大学院大学というのは、文部科学省の認可を受けているオンラインの専門職大学院で、修了時には、MBA(経営管理修士)を取得できるとありました。
そして、そのSBI大学院大学が設置したフィンテックとグローバル金融市場の研究施設が金融研究所で、元金融担当大臣の竹中平蔵氏が理事長を務めています。
FX研究会は、店頭FX業者が集まり、金融先物取引業協会(FX会社が加盟する業界団体)と連携を図りながら、自主的なルールづくりに取り組んでいくことが目的となっているようです。今回、SBI FXトレードのリリースにあったアンケートは、そのFX研究会が実施しているものです。
【FX研究会実施のアンケート】
●個人投資家向けFXレバレッジ規制に関するアンケート
実際にアンケートをやってみたところ、項目は8つでした。ざっとまとめると以下のような内容です。

質問項目を見ると、まずは実際にユーザーがどのような基本意識なのかを探ろうとしているようですが、店頭FXのみに規制がかかることの是非に関してわざわざ自由回答を設けているということは、この点についての意見が特に欲しいということなのかもしれませんね。
ちなみにこのアンケート、ザイFX!が調べた限り、FX会社がウェブサイトで紹介していたのはSBI FXトレードとOANDA Japanぐらい。あとはトレイダーズ証券が、顧客向けにメールで案内を送付していましたが、これ以外のFX各社では積極的な動きはないようでした。
なお、SBI FXトレードのウェブサイトには回答期限が書かれていませんでしたが、トレイダーズ証券が顧客向けに送信した案内メールには、期限が2017年12月29日(金)午後5時までとありましたので、SBI FXトレードのウェブサイトからアンケートに回答する方は、念のためトレイダーズ証券の期限に合わせておくのが無難ですね(※)。
(※記事を公開した12月25日現在、SBI FXトレードではすでにアンケートへの回答受付を終了していました。トレイダーズ証券では、引き続き、回答できます)
■金融庁の主張はセーフティネットの整備
レバレッジの10倍規制について最初に報道があったのは、先ほども触れたように2017年9月28日付けの日本経済新聞朝刊。ただ、この時点では金融庁から直接のアナウンスはなく、あくまでも「検討されているのではないか」というレベルでした。
けれども、2017年12月18日(月)、金融庁でこれに関連した発表がありました。

レバレッジ10倍規制についての直接的な言及はないものの、内容を要約すると……。
「仮に店頭FX業者が破綻すれば、顧客やカバー取引先はもちろん、市場や金融システムにも影響が出かねないから、セーフティネットを整備する」
……ということです。
そして、セーフティネット整備の過程で、FX各社の決済リスク管理が十分かどうかを検討するため、「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」を設置することが発表されました。金融庁が事務局を務め、参加メンバーは、学識経験者のほか、店頭FX取引の関係者も入るとのことで、どのようなメンバーになるのか、気になるところです。
先に触れた9月28日付けの日本経済新聞によると、金融庁はFX会社が加盟する業界団体である金融先物取引業協会と協議を行うとありました。ということは、この有識者検討会もその流れを汲む形になると思いますが、一方のFX研究会も「金融先物取引業協会と連携を図る」としています。
金融庁が旗を振る有識者検討会と、FX業界として自主ルールをまとめるというFX研究会。なかなか意見集約が難しそうな予感はありますが、どのように決着していくのか、気になるところです。
■レバレッジ10倍超えのFX取引への影響は?
では、実際のところ、25倍のレバレッジが10倍まで引き下げられると、どのような影響が考えられるのでしょうか。
いまさら言うまでもなく、レバレッジはFX取引の大きな魅力のひとつですよね。そのレバレッジも、2010年8月からは50倍、2011年8月には25倍と、時代の流れとともに規制が強化され、引き下げられてきたのはみなさんもご存じのとおりです。
【参考記事】
●レバレッジ規制とは何か? レバレッジ規制を逃れる方法はあるのか?
●レバレッジ規制後の取引動向に変化は? 今後、投資スタイルを変える予定はある?
●FXのレバレッジが25倍→10倍へ引き下げ!?日経報道は真実? 個人投資家への影響は?
今回の10倍規制の影響の大きさを考えるには、実際に10倍以上のレバレッジを効かせて取引を行っている人がどれくらいいるかが重要ですよね。
外為どっとコムのシンクタンクである外為どっとコム総研で毎年出版している『外為白書』。2017年10月に最新版の『外為白書2016-2017(第8号) 』が出たばかりですが、このなかで実効レバレッジについての調査もありました。

⇒Amazon.co.jpで『外為白書2016-17(第8号) 』(外為どっとコム総合研究所著)を見る
【参考記事】
●外為どっとコム総研がトレーダーの実態を独自調査。そのやや意外な調査結果とは?
●FXのレバレッジが10倍に引き下げられたら影響を受けるトレーダーはどれくらいいる?

(出所:外為どっとコム総研『外為白書2016-17(第8号)』)
※四捨五入の関係で全体が100%に一致しない
これを見ると、最も多かった回答が「10倍」で全体の23%。一方、10倍を超える15倍、20倍、25倍と答えた人の合計はというと、これも約23%。この10倍を超えた実効レバレッジでFX取引をしているトレーダーへの影響はどうなるのか。外為どっとコム総研の調査部長、神田卓也氏に聞いてみると……
「仮に規制が行われれば、この層はポジションの一部を閉じる必要が出てくるため、影響を避けられないということになりますが、実際には『ナンピン』などがしにくくなるため、影響を受ける層はもう少し多くなると思われます」
とのことでした。
実際、個人トレーダーさんのブログなどをのぞくと、レバレッジが引き下げられると多くの証拠金が必要になることから、トレードの自由度が奪われてしまうのではないかという懸念の声が目立ちます。
なかには、低レバレッジを見限った日本のトレーダーが海外の業者に流れる……なんていう可能性を指摘する声もあり、金融庁の今後の動きには注目していく必要がありそうですね。
今回のザイスポFX!は、店頭FXのレバレッジ10倍規制に関して、SBI大学院大学のFX研究会が実施しているアンケートや、金融庁の最新の動きなどを紹介しました。
アンケートはもちろん無記名ですし、ほとんどの項目は選択式で、自由記入部分も必須ではないので、1分もあれば終了しますよ。
「レバレッジが10倍になっては困る!」という方なら、FX研究会に期待して自由回答欄に思いのたけをぶつけてみるのもいいかも。
(山口学)
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