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一律レバレッジ10倍への規制強化見送り!
では何が規制されるのか?今後の争点は?

2018年06月13日(水)15:48公開 (2018年06月13日(水)15:48更新)
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■経営体力の弱いFX業者は低レバレッジに?

 ストレステストは、じつは最大レバレッジにも影響を与えるかもしれない。

 日本経済新聞は今年(2018年)5月29日、「FX証拠金倍率、健全性低い業者の上限下げ 金融庁方針」との記事を配信していた。

 金融庁は健全性の低いFX業者はレバレッジ上限を引き下げる方針だ、とする記事だ。

 この点について、「報告書(案)」でも以下のように記された。

 「ストレステストの結果、自己資本規制比率が一定の比率を下回る店頭FX業者については、現状、基本的に各社の自主的な対応に委ねているが、当局が自己資本の積増し又は契約上の証拠金率の引上げ(レバレッジ倍率の引下げ)等を通じたリスク量の削減を求めていくことが適当と考えられる」

ストレステストの結果、健全性の低いFX業者はレバレッジ上限の引き下げを求められることがあるかもしれない。

 この点は注意が必要だし、自分が使っているFX業者の健全性について、これまで以上に敏感になる必要がありそうだ。

【参考コンテンツ】
FX会社徹底比較!:会社の信頼性で調べるFX業者の健全性を表す指標の1つ、「自己資本規制比率」などを掲載)

■今後、新規制はどう進んでいくのか

 店頭FX業者に対して新たに求められる対応策は、ストレステストの精緻化と取引データ報告が2本柱だが、「その他の対応策」として4つほど列記されている。

(1)未カバーポジションの情報開示

(2)ロスカット監視間隔の短縮

(3)相場急変時の対応

(4)顧客の損失を限定する規制

 順番に見ていこう。(1)について、未カバーポジションの多い・少ないが直接、取引に影響するわけではないが、カバー率の高い業者のほうが安心感はある。カバー率などの情報は参考になるだろう。

 ただ、どこかカバー率の低い業者がどこか、すでに目星がついている読者もいるかもしれない。

 また、(2)のロスカット基準に達したかどうかの監視時間が短縮されれば、「未収金」(預けた証拠金以上の損失)の発生は減りそうだが、トレードに大きな影響がある話ではないだろう。

 (3)の相場急変時の対応とは、具体的には一時的な保有建玉上限の引き下げや証拠金率の引き上げだ。

 現在でも、選挙や国民投票、あるいは地政学リスクが高まったときなどにFX業者からお知らせが届くことがあり、大きく変わるわけではなさそうだ。

 ここまでの3つについては、投資家側に大きな影響はないだろう。

■「ゼロカット」の導入は見送り

 「その他の対応策」の4つ目に記載されたものの、「導入については、欧州等における実施状況も踏まえつつ、なお慎重な検討が必要」として見送られたのが、「顧客の損失を限定する規制」、いわゆる「ゼロカット」だ。

 一部の海外FX業者で導入された制度で、相場が急変して預けた証拠金以上の損失が発生しても、顧客には負わせず、FX業者が負担するしくみだ。

 2015年のスイスショックや2011年の東日本大震災では日本でも結構な「未収金」が発生したことから、日本での導入を望む声もあった。

【参考記事】
スイスショックによるロスカット未収金は東日本大震災時と比べて、多かったのか?

 この「ゼロカット」は、今回の有識者会合では「ネガティブ・バランス・プロテクション」と呼ばれており、一部の有識者メンバーからは導入を支持する声もあった。

 しかし、投資家が損失の可能性を顧みずにハイリスクの投資を行うようなモラルハザードが起こる懸念などから、「慎重な検討が必要である」として導入されなかった

 なお、金融庁が示した今回の「報告書(案)」ではドイツやフランスではネガティブ・バランス・プロテクションの規制が導入されていると書かれていたが、第4回有識者会合では、金融先物取引業協会の山崎哲夫事務局長からネガティブ・バランス・プロテクションは欧州の新規制案に取り上げられているが、まだ規制実施には至っていないとの説明があり、食い違いが見られるように思える。

■今後のスケジュールは?

 駆け足で「報告書(案)」の内容を見てきたが、有識者会合は今回の第6回で最後。

 今後は細かな文言の修正を加え、「(案)」の取れた最終報告書が作成され、発表されることになる。その後は金融庁、金融先物取引業協会、各店頭FX業者が話し合って、報告書に基づいた各種取り組みが実施されていくのだろう。

 座長の池尾和人教授は会合の最後に、そのような取り組みを「迅速に」行ってほしいと強調していたが、毎営業日のストレステスト実施や取引データ報告などを行なうには、システム構築や内部体制の整備などにかなりの手間が必要ではないかと思われる。

■くりっく365の社長交代と優遇策

 「東京金融取引所 新社長に木下氏 5代連続旧大蔵OB」。

 レバレッジ規制強化の見送りが濃厚となったのとほぼ同時に、くりっく365を運営する東京金融取引所では社長交代の報道が出た。毎日新聞の記事の見出しにあるように、新社長も「旧大蔵OB」だ。

【参考コンテンツ】
特集「くりっく365」はなんで安心なの?

 唐突に浮上したように見えたレバレッジ規制論議。「くりっく365を優遇するためでは…」と勘ぐる声もあったが、真相はわからない

 以前はくりっく365に「税制優遇」という大きなメリットが与えられていたが、現在は「不招請勧誘」(訪問営業や電話営業など)が認められているくらいで、店頭FXもくりっく365も条件はほぼ対等だ。

 今回の議論でも結局、店頭FXと取引所FX(くりっく365)に大きな格差は生まれていない。しかし、「報告書(案)」には気になる記載がある。

■今後の争点になるかもしれない「CCP」

キーワードは「CCP」だ。

 CCP(Central Counter Party)とは「中央清算機関」。FX業者やカバー取引先の取引を集約させ、決済を保障するのがCCPの役割となる。

 財務的に盤石なCCPがもし存在しているのならば、そのCCPがFX業者とカバー取引先の間に入れば、仮にカバー取引先が破綻しても為替市場全体に与える影響は最小限に食い止められる。

 現在、店頭FXでは業者とカバー先が直接取引を行なっており、CCPは存在しない。

 ところが、くりっく365ではCCPが存在する。東京金融取引所がCCPの役割も担っているためだ。

 今回の「報告書(案)」では、店頭FXにおいて「現在カバー取引の清算業務を行っている機関はなく、今後の関係者における取組みが期待される」と記載された。

■最終報告書の発表は間近!

 「こうした文言が記載されたということは、店頭FX業者に対してCCPとして東京金融取引所を利用するよう、働きかけが強まるのでは」と危ぶむ声も出ている。

 東京金融取引所を利用するにせよ、しないにせよ、店頭FX業者に対してCCPの利用が義務付けられると、そのコストが投資家に転嫁される懸念も高まる。これからは「CCP」という単語にも注目してほしい。

 いずれにせよ、昨年(2017年)9月から始まったレバレッジ10倍論議が終結する日は間近。報告書の発表を待とう。

(取材・文/ミドルマン・高城泰 編集担当/庄司正高)


 本記事公開と同日の6月13日(水)、金融庁のウェブサイトで、「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書が公表されました。その内容は「報告書(案)」とほぼ変わっておらず、第6回有識者検討会の最後に池尾座長が話していたとおり、「報告書(案)」の「てにをは」を修正した程度のものとなっています。

 なお、金融庁は同時に「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書の概要も公表しました。その内容は以下のとおりです(ザイFX!編集部)。

「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書の概要(クリックで拡大)
「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書の概要
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