■サクソバンクが2019年の大胆予測を発表
サクソバンク証券の親会社といえば、デンマークのコペンハーゲンに本店を構える金融機関、サクソバンクだ。
【参考記事】
●ツール・ド・フランスで有力視されるサクソバンク(SAXO BANK)とは?(1)
●ツール・ド・フランスで有力視されるサクソバンク(SAXO BANK)とは?(2)
そのサクソバンクは、毎年、年末になると翌年の相場を大胆予測したレポートを発表している。昨年(2018年)末にも「サクソバンクの2019年大胆予測」がリリースされた。今回はこのレポートから気になるトピックを紹介しよう。
【参考記事】
●2018年のビットコイン相場を大胆予測! 6万ドルまで爆上げ後、1000ドルまで暴落!?

以下は、「サクソバンクの2019年大胆予測」の目次となっている。

これを見ると、もし起こったら、サプライズになってしまいそうな予測ばかり…。
それもそのはず、このレポートは「大胆予測」とあるように、実際に起こる可能性は低いものの、現実に起こった場合には市場に多大な影響を及ぼしそうなテーマを取り上げている。いわゆる「リスクシナリオ」といわれるものだ。
その中でとくに注目したいのが、2019年に入ってからも先行きが読めないBrexit(英国のEU離脱)に関するもの。
英国のEU(欧州連合)離脱は、今年3月末が期限とされているが、直近では、メイ英首相がEUと取り決めた離脱合意案が英議会において大差で否決され、「合意なき離脱」の可能性が高まるなど、深みにはまっている。
そんなBrexitについて、サクソバンクは「コービンの首相就任で英ポンド/米ドルは1.00ドルへ」と大胆に予測している。

コービン氏は、英国の野党第一党・労働党の党首。富裕層に厳しく、極めて社会主義的な考え方の持ち主だ。そんなコービン氏が首相に就任し、英ポンドは急落、対米ドルで、史上初めてパリティ(=1.0000ドル)をつけるとサクソバンクは大胆予測しているのだ。

(出所:Bloomberg)
2019年1月18日(金)現在の英ポンド/米ドルは1.29ドル近辺で推移。EU離脱案は英議会で否決されたものの、なぜか英ポンドは上昇している。
そこからパリティまで売られるということは、なんと20%超も急落するということになるわけだ。
■「20世紀半ばの社会主義的な焦土作戦」で英国は疲弊…
では、どのような過程でコービン氏が首相に就任し、英ポンド/米ドルはパリティまで急落すると予測しているのだろうか。
レポートでは、メイ首相の辞任と同時に、つぎはぎだらけのBrexit政策も、英議会を通らずに葬り去られるとある。

レポートでは、メイ首相は辞任すると予測。それと同時に、つぎはぎだらけのBrexit政策も、英議会を通らずに葬り去られるとのこと (C)Matt Cardy/Getty Images News
これを受けて、リスボン条約第50条に基づく英国の正式な離脱通告が遅れ、解散総選挙が実施される。その結果、Brexitへの対応が真っ二つに割れた与党・保守党は議席の3分の1を失い、代わりに労働党が大躍進するという見通しのようだ。
ここまででも、かなりのサプライズだが、本番はここから。
Brexitへの対応について、2度目の国民投票を約束していたコービン氏が首相に任命されると、有権者の高い支持と英議会での過半数を大幅に超える議席を背景に「20世紀半ばの社会主義的な焦土作戦」を展開していくというのだ。
具体的には、高額所得者にとって累進税率が非常に高い財産税を導入し、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])には量的金融緩和政策によって、最低所得保障を実行するための財源確保に協力するよう要求するという。
さらに、公益性の高い事業は再び国有化されるなどして、財政拡大で赤字は対GDP比で5%に増加する見通し。2017年度の英国の財政赤字は対GDP比で1.9%だから、3%超も上昇することになる。
こうした状況を受けて、英ポンド相場は崩壊し、対米ドルでパリティを初めて実現するというのだ。

(出所:Bloomberg)
直近、労働党から提出された内閣不信任決議案が否決されたことで、解散総選挙の可能性は低くなっている。
したがって、このレポートにあるような、コービン氏が首相に就任して、英ポンド/米ドルがパリティまで急落するということは、今のところなさそう。
ただ、3月末に向けてBrexitがどうなるのか、まだまだ予断を許さない状況が続きそうなので、こうした見方もリスクシナリオのひとつとして覚えておいてもいいかもしれない。
このように、Brexitについてかなり…
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