5月20日(木)の値動きは、まさにその前触れであろう。
豪ドル、加ドルをはじめとする資源国通貨の反落は、対米ドルよりも対ユーロのほうが大きかった。
これについて、ショートカバーのためといったテクニカル的な要素からの説明もできるが、さらに重要なサインが含まれていることを見逃してはならない。
それは、世界景気回復をけん引してきた中国をはじめとする新興国が、最近になって息切れしているのではないかといった疑心暗鬼を、投資家が持ち始めているということだ。
中国は、リーマン・ショック以降に巨額の財政支出を行ったことで、足元では不動産バブルに悩んでいる。
その抑制のために金融引き締めを図っているが、一方で、ユーロ安に伴って米ドルと連動している人民元が割高となり、欧州への輸出が落ち込むといったジレンマに陥っている。
新興国の発展に大きく依存している資源国通貨の失速を、中国など新興国の成長スピード鈍化の前触れと考えれば、世界的景気回復のけん引車が失われる可能性は高いと言える。
やがては米国まで危機が飛び火し、本格的な景気後退局面に遭遇しよう。
足元で進行している米国株安がそのサインで、米国サイドで最近発表となった経済指標が芳しくないのもその表れと見ている。
要するに、ユーロ圏発の危機がしだいに世界中に広がっていく蓋然性が高いということだ。
しばらくは厳冬の到来に備え、しっかり覚悟を決め、対応策を練っておきたい。
■中長期スパンでは、資源国通貨は強気変動が続きそう
ところで、そのような局面が本当に訪れるのであれば、筆者は基本的に、欧州、英国、米国の3通貨は、ともに弱い変動にとどまると見ている。
つまり、豪ドル、加ドルといった資源国通貨は直近は下落したものの、中長期的には引き続き、対米ドル、対ユーロ、対英ポンドで優位性を保ち、その強気変動は中長期スパンでなお続くと考えている。
なにしろ、欧州、英国、米国の状況に比べると、豪州、カナダの財政バランスは優れており、危機に対応できる余地が大きいからだ。
■ボコボコに叩かれたユーロと英ポンドは反発する可能性
それでは、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルはどうなるか?
繰り返しとなるが、危機が深刻化するにつれ、やがて米ドルの危機へと発展する可能性が大きい以上、すでにボコボコに叩かれたユーロと英ポンドは対米ドルで下落するのではなく、反発してくる可能性が高い。
「問題3兄弟」の中では、米ドルだけまだ叩かれていないから、その番はいずれ回ってくるだろう。
長期的なスパンで考えると、円に関しては、基本的に米国の「ソブリンリスク」がもてはやされた後に日本のソブリンリスクを論議する順番が回ってくると見ているから、本格的な円安が到来する前に、いったんかなりの円高になってもおかしくはないだろう。
しかし、短期スパンではむしろその逆で、円高になる前に一旦円安になる公算が高いだろう。ユーロの反発がこれから始まるのであれば、ドルインデックスの下落を米ドル/円がタイムラグをおいて追ってくるから、そのタイムラグが解消されるまでが最後の円安時期となろう。
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