その「出口政策」に踏み出す見通しが出てきた上でなければ、協調介入でもなんでも「円高・米ドル安」の流れを変えるのは、基本的に難しいと思います。
■日本が「自力」でできる円高阻止策はないのか?
では、この「円高・米ドル安」をどうやっても止められないのかと言えば、そうでもないと思っています。
空前の「ドル余り」で投機資金の過剰な流入による通貨高が問題となり、それに対処した先例がありました。2009年11月、ブラジルは国際資本取引の規制に動くことで、過剰な投機資金流入への対抗措置をとったのです。
また、財政再建は日本でも重要課題になっていますが、欧州で今年になって財政問題が注目された際、為替売買に課税することで、その税収増を財政再建の一助にする「トービン税」といった考え方が注目されたことがありました。
しかし、日本は先進国であり、ブラジルのような新興国とは違うという疑問があるでしょうか?
ブラジルへ流入した投機資金は、株式相場など投資先が十分にありそうです。その一方で、世界一の低金利であるにもかかわらず株価低迷が続いている日本では、投資先はほとんどなさそうです。
国内貯蓄が豊富であり、財政問題でも日本はギリシャほど悪くはないということになっているようですが、そうは言っても、日本の財政危機は深刻な状況に追い込まれつつあります。
豊富な国内貯蓄があり、金融システムなどの当面の安定感から、避難通貨として円が選好されているわけですが、こんなふうに見てくると、その基盤はかなりぜい弱な気がします。

「日本はブラジルではない、ギリシャではない」といったプライドを捨てて、短期資本の流入阻止、つまり、海外投資家の円買い取引を規制するのが1つの手でしょう。その結果、避難通貨である円が「割高」になったとして、それでも円買いは続くでしょうか?
■「プライドを捨てる」という決断ができるか?
「自力」の円高阻止策とはそういうことです。ただ、それには、プライドを捨てるといった相当な決断が必要になるでしょう。民主党代表選で再選した菅総理にそれができるでしょうか?
できないならば、この円高を阻止するには、世界景気が回復し、米国が「出口政策」に踏み出すといった「他力本願」に頼る以外ないでしょう。
プライドを捨てることができず、そうかと言って「他力本願」と恥ずかしくて言えず、「円高も悪くない」と言い張るのはどんなものでしょうか?
2000年代前半のデフレ局面に空前の円高阻止に向けた市場介入を行った国が、再び円高になっているこの局面で、今度は無介入で「円高も悪くない」と言うのはどうなのかと思います。
客観的に見ると、日本は長い間、円安に依存してきた国だと思います。そのような国の構造を急に変えるのは難しいでしょう。
そろそろ、ごまかしが利かなくなりつつあるのではないでしょうか?
「プライドを捨てる」決断が、政治のリーダーシップに求められていると僕は思います。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)