現在のユーロ/米ドルは「大きな下落トレンド」の中にあるが、目先の値動きは、ポジション調整に伴う反発上昇の局面にあった。
しかし、先週になって本来の「下落トレンド」に戻り、再び下落し始めたと判断している。
■ウソだらけのストレステストの「しっぺ返し」が来る!
例年どおりの「夏休み相場」ならば、8月初旬の米国雇用統計の発表が終われば、早々にやる気のないセンチメント・雰囲気になる。
しかし、この夏のマーケットを見ていると、「夏休み相場」の最中であるにもかかわらず、米国のさらなる金融緩和に反応している印象がある。結果的には、日本のお盆休みの期間もそれなりに荒れた相場になった。
それでも、「夏休み相場」は休んだほうがよいと考えている。本格的に休んでいるのならば、そのほうがよい。
欧州の金融機関に対して行ったストレステスト(資産査定)は、保有している国債の評価を行わないなど欺まんに満ちたものであり、欧州各国の金融機関の保有している不良債権(不良資産)の本当の状態を表していない。
はっきり言えば、投資家をだますような欺まんに満ちたストレステストの「しっぺ返し」が、今後、ユーロ相場に関連して起こるだろうと考えている。
不良債権(不良資産)は、欧州の金融機関の行動を制約する。最もわかりやすい「しっぺ返し」は、欧州の金融機関の破たんだ。
仮に金融機関の破たんがなくても、不良債権(不良資産)を多く保有する金融機関は資金調達が容易にできなくなる。お金が必要なところに回らず、その国の経済活動が制約されるという形で、欧州経済の足を引っ張ることになるだろう。
つまり、欧州経済の回復が阻害されることになる。
■1.18ドル台からの反発は予想外に大きいものだったが…
それでは、ユーロ/米ドルの月足チャートをご覧いただこう。
ユーロ/米ドルは2001~2002年頃を起点に大きく上昇を始めており、俯瞰(ふかん)してみると、その上昇は2008年まで持続した。
この6~7年におよぶ上昇の過程は「ユーロ高・米ドル安トレンド」であり、緑の破線のサポートラインが引ける。
2008年には、緑の破線のサポートラインを割り込んでクラッシュ(大暴落)を起こし、トレンド転換が起きて「ユーロ安・米ドル高トレンド」に転換した。
この「ユーロ安・米ドル高トレンド」は2008年後半から2009年年初まで続き、安値が1.2300ドルレベル、高値が1.4000ドルレベルの安値圏での保ち合い相場を形成した。だが、2009年を総じて見ると「ユーロ高・米ドル安」で推移したと言える。
2009年を総じて見た場合に「ユーロ高・米ドル安」となった理由は、米国が米ドルの超低金利政策(ゼロ金利政策)をとり、かつ、米ドル資金を市場にジャブジャブに供給したので「ドル余り現象」が起こり、米ドルからユーロへの資金移動が起きたからだろう。
これは、いわゆる「ドル・キャリー・トレード」であり、米ドルの金利よりもユーロの金利のほうが高かったため、その金利差享受を狙った動きである。
2009年後半まで、「ドル・キャリー・トレード」は拡大の動きが見られた。
だが、2009年後半になって、ギリシャの財政問題をきっかけにしてユーロ/米ドルは下落を始める。
2009年12月以降の下落過程で、ピンクの破線で示したサポートラインが意識されたものの、このラインも2010年5月にあっさり割り込んでいる。
このラインを割り込んだ時点で、改めて「売りシグナル」が点灯したのだが、2009年12月以降の下落は、1.51ドル台から1.18ドル台への大幅なものだった。
その後、1.18ドル台の安値から1.33ドル台までのリバウンドを見ているが、予想外に大きい反発ではあるものの、トレンドを変えるには至らないだろうとも考えている。
なお、1.18ドル台からのリバウンドが大きかったので、青の破線のサポートラインをチャートに加筆した。
■「ダブルトップ」完成で「売りシグナル」が点灯した
続いては、ユーロ/米ドルの週足チャートをご覧いただきたい。
週足チャートを見ると、1.2300ドルレベルを基準にした「2つの山」を見ることができる。すなわち、典型的な「ダブルトップ」が完成している。
この「ダブルトップ」のネックライン(基準となる下値)は1.2300ドルレベルで、チャートのセオリーでは「ダブルトップ」が完成すると、その後に大きく下落する。
目先の値動きを見ると、安値の1.18ドル台から1.33ドル台まで、大きく反発している。約1500ポイントの反発上昇であり、大きな値動きだと言える。
しかし、週足チャートを見てのとおり、1.51ドル台から1.18ドル台まで3000ポイント以上の大きな急落をした後だ。反発はあって当たり前だろう。
確かに、反発は予想外に大きなものだった。ただ、値動きはあくまでも相対的なものである。
つまり、このところのユーロ/米ドルの値動きが、それだけ激しいものだと認識すべきなのだろう。これからも、そのような激しい展開はまだ続くと考えている。
さて、先週になって、ユーロ/米ドルは再び急落している。
このことからも、激しい展開が続いていることが確認できる。
週足チャートから読み取れることは、「ダブルトップ」が完成して「売りシグナル」が点灯したということだ。
現在は、そのシグナルが正しいのかどうかを確認するために、チャートポイント近辺で乱高下が繰り返されているのだろう。
これだけ大きく反発しているものの、スタンスとしては「ユーロ売り・米ドル買い」しか思いつかない。
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