まずは、ユーロ/米ドルの週足チャートをご覧いただきたい。
週足チャートを俯瞰(ふかん)してみると、緑の破線で示した1.2300ドルレベルを基準にして、ピンクの破線で示した「2つの山」を見ることができる。
すなわち、ユーロ/米ドルは典型的な「ダブル・トップ」を完成した。
そのネック・ライン(基準となる下値)は1.2300ドルレベルであり、これを下抜けた時点で「ダブル・トップ」が完成し、「売りシグナル」を発している。
チャートのセオリーでは、「ダブル・トップ」が完成すると、その後に大きく下落することになる。
しかし、典型的な「ダブル・トップ」を完成したものの、今回はそのセオリーどおりには動かず、フェイル(=失敗・ダマシ)を起こしたと判断している。そのために、新たな上昇を始めたのだろう。
ただ、これだけ大きな上昇があったものの、今のところは、スタンスとして「ユーロ買い・米ドル売り」でついて行く気持ちにはなれない。
それは、1.51ドル台からの下落の理由が欧州の金融機関が保有している不良債権(不良資産)にあるならば、その問題が何も解決していないためだ。
このところのユーロ/米ドルの上昇は、米国の金融緩和期待がもとになっている。
ドル金利は、その絶対値ではこれ以上緩和できないので、量的緩和策が材料になっている。
米国が追加の量的緩和策をとる場合に、米ドルからユーロへ資金が流れるだろうといった考え方を先取りして、このような値動きになっていると考えている。
■レジスタンスラインを上抜け「買いシグナル」が点灯した
続いても、ユーロ/米ドルの週足チャートをご覧いただきたい。
ユーロ/米ドルは、1.51ドル台からの下落の際に現れたピンクの破線のレジスタンスラインを上抜け、目先の「買いシグナル」を点灯させた。
前述のように、ユーロ/米ドルは「ダブル・トップ」が完成した時点で「売りシグナル」を発したと考えているが、それと同時に、ピンクの破線のレジスタンスラインを上抜けて「買いシグナル」を発したのだ。
その後、青の破線で示した新しいレジスタンスラインが出現したが、これも上抜けて、再度「買いシグナル」を発している。
新たに出現したレジスタンスラインをも上抜けたのだから、売り方(ユーロ/米ドルのショート派)は、いったん撤退することも戦術であろう。
■米国の金融緩和を材料にユーロ/米ドルが買われている
大局で見れば、考え方はまったく変わっていない。欧州の財政問題が解決していないので、ユーロ/米ドルのトレンドは「ユーロ安・米ドル高」だと考えている。
足元では、上値のメドであった1.33ドル台を上抜けたので、目先、それ以降は様子見に転じている。
米国の追加の金融緩和政策(=米ドルの量的緩和政策)を材料にして、ユーロ/米ドルが買われている状況である。
しかし、欧州の不良債権問題がほとんど無視されている状況でもある。たとえば、欧州のいくつかの国が格下げをされても、そういった材料には反応していないのだ。
個人的には、このまま欧州の不良債権問題を無視して、どんどんユーロ高が進むとは考えていない。どこかで「ユーロ売り・米ドル買い」をすべきだと考えている。
ただし、その場合でもポジションを小さくして、かつ便宜的なストップ・ロス(損切り)のオーダーを置いて、自らを守る必要がある。
便宜的に、週足チャートに赤の破線でレジスタンスラインを描いているが、これはまだ明確になっておらず、確定していないものだ。今後、ユーロ/米ドルが高値を更新できず、下落して行く場合に、結果的に確定するようなラインだ。
そのようなアテにならない補助線だが、個人的には「このラインが確定するのではないか?」と期待している。
足元でユーロ/米ドルは、1.36ドル台から1.41ドル台のゾーンで激しく大きな上下動(乱高下)を繰り返している。1.18ドル台から上昇してきたことを前提とすれば、高値圏での大きな上下動(乱高下)だ。
高値圏での大きな上下動(乱高下)は「天井が近いことの証し」であるが、ユーロの上昇がこれだけきついと、なかなか自信が持てない。
しかし、個人的には、この1.36ドル台から1.41ドル台のゾーンが、今回の上昇の天井になるのではないかと見ている。
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