だから、外国為替市場に参加するプロの世界(インターバンク市場)でも、相場の知識のまったくない新人ディーラーに、いきなり相場をやらせるわけにはいかない。それで、新たに配属された新人の場合は、まず、アシスタントから始める。
ベテラン・ディーラーのお手伝いをする間に、取引の用語(テクニカル・ターム)を覚えたり、チャート分析の手法(テクニック)や、ファンダメンタルズ(経済を構成する根本基礎、経済の基礎的条件)を勉強する。
そして、そういった知識を身につけてから、相場にデビューすることになる。
しかし、実際にポジションを取ってみると、なかなかうまくいかない。
ベテラン・ディーラーが失敗したときに、
「あーあ、失敗している……」
「オレだったら、もっとうまくやるのに」
「自分だったら、勝てるのに」
と思っていたアシスタント・ディーラーも、実際にポジションを取ると、セルフ・コントロールができずに、青くなったり、赤くなったりしている。
他者がポジションを取っているのを見ていることと、自分がポジションを取って行動することはまったく違うことだと、そのときに気づくようだ。
■取引を見るとやるでは大違い。生け花などにたとえると…
しかし、自分で花を生けたり、自ら素晴らしい演技をすることは、実際にやってみると、なかなかできないもの。
新人ディーラーは、実際にポジションを取って、研鑽(けんさん)を積んでいく。
それでも、勝つ人は半数以下だろう。
だいたい、次のように分布する。
しっかり勝つ人が2割程度。
しっかり勝ったとは言えないが、結果としてはプラスの人が3割。
負け(才能がない)と断定するのは気の毒だが、結果としてはマイナスの人が3割。
しっかり負けてしまい、これ以上、相場に臨むと危険な人が2割。
ここで、注意しなければいけないのが、相場に対する「向き不向き」。
実際の相場には勝てないものの、「相場が好きだ」という人もいる。
相場には勝てないのだが、「相場の分析能力はすごい」という人もいる。
彼らは、自分で花を生けることはできないけれど、その鑑賞眼は特筆ものとか、自分で演技はできないけれど、その批評能力は素晴らしい——そうたとえることができるかもしれない。
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