米国経済の回復が遅れ、米国経済は引き続き悪い状態にあるということが、このところの経済指標から判断できる。
しかし、そういった中でも米ドルは、対ユーロ、対英ポンド、対豪ドルなどでは比較的強い展開になっている。つまり、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルといったところは米ドル高気味に推移しており、チャートは下落している。
米国経済の回復の遅れは、世界経済全体の回復に悪影響を及ぼす。
米国経済の回復が遅れると欧州やその他の国々の経済も弱くなり、投資家心理はリスク回避志向が強くなる。その結果として「米ドル買い」傾向になっているのだ。
ただ、こういったロジックは「こじつけ」にも感じられる。
相場なのだから、四の五のと理屈をつけるのではなく、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルが目先で下がっているのは単なる事実と、素直にその事象をとらえればよいだけなのかもしれない。
その一方で、米ドルが目先で強くなっているのは前述のとおりなのだが、対米ドル相場の中で、米ドル/円に関しては「円のほうが米ドルよりもリスクが低い」というコンセンサスの下に、「米ドル売り・円買い」傾向になっている。
■首相と日銀総裁の電話会談に対する市場の反応は?
先週あたりから、週明けの8月23日(月)に菅総理大臣と白川日銀総裁の会談が行われるといった話が伝えられていた。
結局、直接会談(面談)は行われずに電話による話し合いにとどまったようで、為替を含め、経済情勢について15分間ほどの意見交換が行われたそうだ。
そして「緊密なコミュニケーションが重要」との認識で一致したというニュースが流れていた。
この電話会談は、何らかの景気対策や円高対策が示されることを期待していた向きには失望感があったのだろう。
もちろん、政府も日銀も、日本の景気には気を配っているはずだ。
しかし、具体策が何も示されておらず、現状は「無策の策」と言える。
ただ、菅総理大臣と白川日銀総裁の直接会談が行われず、電話による意見交換にとどまり、かつ具体策が示されなかったものの、その時点では為替市場の反応はあまりなかった。
通常ならば、具体策が示されなかったことを材料に「米ドル売り・円買い」が進んでもおかしくはない。だが、若干円高に振れた程度でほとんどインパクトはなく、米ドル/円は85円台前半で推移し続けた。

これについては、市場参加者が少ない「夏休み相場」であるため、積極的に米ドル/円を売り込んでこなかったのだろうと判断している。
「夏休み相場」ではなく、平時の市場参加者がたくさんいる状況ならば、「菅総理大臣と白川日銀総裁の直接会談が行われず、電話による意見交換にとどまり、具体策が示されなかった」時点で84.70円台を下抜け、新安値更新となる可能性は高かっただろう。
多くの市場参加者にとって、84円台を売り込むのは勇気が要る。
市場参加者が少なく、誰も積極的に仕掛けなかったので、手を出さずにおこうと、多くの米ドル/円のプレーヤーが考えたのだろう。
■現在は、まだ「夏休み相場」の真っ最中
現在は、まだ「夏休み相場」の真っ最中だ。
「夏休み相場」は例年、ロンドンの休日である「レイト・サマー・ホリデー」までで、毎年、8月最終週の月曜日だ。今年の「レイト・サマー・ホリデー」は8月30日(月)なので、この日までが今年の外国為替市場の夏休みとなる。
マーケットが閑散とする夏休み期間は突然値段が動かなくなったり、逆に大きく動いたり、極端な動きを見せがちだ。今年のマーケットも、夏休み相場特有の値動きになっていると感じる。
米ドル/円は現在、「米ドル安・円高トレンド」が持続していると考えている。
2007年6月の最高値124円台から「米ドル安・円高トレンド」が始まり、ここまでマル3年以上も持続・継続していることになる。
セオリーに従い、次のように考えている。
・明確なトレンド転換のシグナルがない限り、現在のトレンドが持続する
・トレンド転換の時期を、アテ推量で期待しない
・相場は必ず明確なシグナルで、トレンド転換を教えてくれる
だから、
・明確なトレンド転換のシグナルを見落とさないように注意深く見る
…ことが重要だ。
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