まず、米ドル/円の日足チャートをご覧いただきたい。
米ドル/円は2009年2月以降、現在に至るまで、上限は101.50円レベル、下限は91.80円レベルの「ボックス相場」を形成している。チャートでは、緑の破線(太線)で「ボックス」の上限と下限を表示した。
そして、大きく上下動を繰り返しているが、中長期で見れば「大きなボックス相場」ととらえることができる。その値幅は約10円。
「ボックス相場」における戦い方の原則は、上限のインサイド(内側)で「売り」、下限のインサイド(内側)で「買い」となり、上限・下限を突き破った時点で、損切り(ストップ・ロス)となる。
しかし、足元で見られる「大きなボックス相場」の場合、実際の取引においては、前述の「戦い方の原則」の使い方が難しい。
「小さなボックス相場」の場合は、上限・下限を突き破った時点で損切り(ストップ・ロス)という戦術はよい目安となるが、「大きなボックス相場」では、値幅が大きいため、適当な目安にはならないのだ。
■ストップ・ロスが遠いとリスク&リターンは非効率的
もう少し、具体的に説明しよう。
仮に、「ボックス相場」の上限のインサイド(内側)で「売り」を行ったとしよう。今回のケースならば、99~100円台でショートポジション(売り持ち)を持ったとする。
この場合の損切り注文(ストップ・ロス・オーダー)は、101.50円、ないしは101.60-80円レベルに置けばよい。
しかし、この相場がボックスの下限まで下落すると予想し、94~96円台あたりでショートポジション(売り持ち)を持った場合は、101.50円、ないしは101.60-80円レベルでは、損切り注文(ストップ・ロス・オーダー)としては遠すぎて、適当な目安とは言えない。
ポジションが大きくなく、値幅が大きくなっても構わないのであれば、ボックスの外側に損切り注文(ストップ・ロス・オーダー)を置くことは、投資行動として誤りではないと、個人的には考える。上記のケースでは、101.50円、ないしは101.60-80円レベルの損切り注文は、セオリーに従っていると言える。
ただし、その場合のリスク&リターンは、当然に非効率的である。
■セオリーは使い方次第で、単純なものではない!
逆のケースも考え得るが、それは読者のご賢察に任せたい。
こういったセオリーも、臨機応変に使い分けないと、有効ではない。
うまくいかない場合、それはセオリーが間違っているのではなく、その使い方に問題があると認識したほうがよい。
このように説明すると、「セオリーの使い方が必要ならば、それでは、セオリーと呼べないのではないか?」といったご質問をいただくことがある。
場合によっては、そのとおり。何にでも、単純に使えるような、便利な手法(テクニック)は存在しない。
包丁で、紙を切ることはできる。カッターで、刺身を切ることもできるだろう。
しかし、それぞれの刃物には、それぞれの用途がある。
どのような場合に、どのような道具を使うのか?
それこそが「臨機応変」ということなのだ。
■大きく上下動しているが、基本的には「下落トレンド」
米ドル/円は、101円台の戻り高値をつけてからは、徐々に上値を切り下げて、緩やかに下落している。最初に示したチャートでは、レジスタンスラインとしてピンクの破線(太線)を引いた。
これは、4月につけた高値の101円台と、8月の戻り高値である97円台後半を結んだもので、このレジスタンスラインと平行に、ピンクの破線(細線)も引いてみた。
米ドル/円は2009年に入り、2~3月から現在に至るまで、大きく上下動を繰り返している印象だが、基本的な流れは「下落トレンド」と考えている。
そして、7月上旬には91.80円レベルまで急落したが、「大量の米ドル買い/円売り」があって、97円台半ばまでのリバウンドを見せている。この「大量の米ドル買い/円売り」は、中国の外貨準備に関連するものと推測している(「マーケットが薄くなる『夏休み相場』だが、今年は得体の知れない巨額資金に注意!」参照)。
しかし、ピンクの破線(太線)で示したレジスタンスラインを見てわかるように、上値は徐々に切り下げられている。
一方、2009年1月安値の87.00-10円レベルと、7月上旬につけた91.80円レベルを結んだラインが、このところのサポートラインと考えられる。チャートでは、青の破線(太線)で示した。
ちなみに、この青の破線(太線)で示したサポートラインの以前には、別のサポートラインが2本あった。
青の破線(細線)で示したラインがそうであるが、それらは順次、下にブレイクされて、その都度、新たなサポートラインを形成している。
■「売りシグナル」点灯で、91.80円割れを目指すか
日本の衆院選明けの8月31日(月)のマーケットで、前述した2009年1月の安値87.00-10円レベルと、7月上旬につけた91.80円レベルを結んだライン、つまり、青の破線(太線)で示したサポートラインを下にブレイクした。
その後は反発し、93円台ミドルまで上昇したが、サポートラインを下にブレイクしているため、8月31日時点で「売りシグナル」が発せられたと考えるのが妥当であろう。
米ドル/円は、ピンクの破線(太線)で示したレジスタンスラインと、青の破線(太線)で示したサポートラインによって、「三角保ち合い(ウェッジ)」を形成していた。
この「三角保ち合い(ウェッジ)」は、かなり煮詰まっていて、近くどちらかに放れると考えていたが、8月31日(月)に、下にブレイクしたと考える(「『三角保ち合い』を下抜けた米ドル/円、まずは91.80円、次は87.00円を目指すか?」参照)。
どちらかと言えば、下に抜けるだろうと予測していたため、個人的には、思惑どおりに推移している。
下に抜けた場合、次のチャート・ポイントは、何度も繰り返し述べた91.80円レベルで、テクニカル(チャート)分析では、91.80円レベルをさらに下に抜けると、次のチャート・ポイント(サポート・ポイント)は87.00円レベルになる。
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