ただし、新しい理屈は、時間的にこなれていないもの、時間を経て正しいと認知されていないものとすべきだ。つまり、間違えている可能性もある。
そして、間違えていることが確認されたら、すぐにそれを捨てて、従来の常識に戻る勇気が必要だ。
■米ノンバンク大手の破綻で、一転してリスク回避に
11月1日(日)、経営難に陥っていた米国のノンバンク大手・CITグループが経営破綻した。
その前からマーケットは乱高下していたが、それは、CIT破綻のウワサが、水面下で流れていたためだ。
このところのユーロ/米ドルのトレンドは、ユーロ高・米ドル安となっていたが、CIT破綻によってリスク回避の動き(フライ・トゥ・クオリティ=質への逃避)となり、ユーロ売り・米ドル買いに反転した。
その影響で、ユーロ/円も下落した。これは、投資家のリスク回避によって、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の売りが出たとも言える。
とにかく、CITの経営破綻がクロス円の売りを誘発したのだ。
■従来の常識どおりに動いていない、現在の為替相場
為替市場ではこれまで、基軸通貨である米ドルを中心にして取引が行われてきた。
つまり、ユーロ/米ドルが米ドル安方向へ動けば、米ドル/円も米ドル安方向へと動く。逆に、ユーロ/米ドルが米ドル高方向へ動けば、米ドル/円も米ドル高方向へ動いた。
ところが、最近の相場では、米ドルに対する連動性が薄れてきている。
ユーロ/米ドルが上昇しているなら、従来の常識どおりだと、米ドル/円は下がるはずだが、その際の米ドル/円は上昇している。
同じように、ユーロ/米ドルが下落しているなら、米ドル/円は上がるはずだ。それなのに、米ドル/円は下落している。
要するに、ユーロ/米ドルと米ドル/円のチャートが同じ方向へと動いている。
もう少し詳しく説明すると、為替相場全体の方向性を最初に決めるのは、ユーロ/米ドルだ。
ユーロ/米ドルが上昇すると、ユーロ/円も連動して上昇する。そのユーロ/円の上昇圧力で、米ドル/円も上昇する。
逆に、ユーロ/米ドルが下落すると、ユーロ/円も下落し、その下落圧力で、米ドル/円も下落してしまう。
こうした図式は、為替取引の公理ではない。

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