まず、11月2日(火)は米国の中間選挙が行われるが、事前予想では民主党の苦戦が伝えられている。
米国の選挙は下馬評どおりの結果に落ち着くことが多いので、今回は民主党が敗れ共和党が勝つのだろう。
そうなると、オバマ政権には議会という足かせがはめられることになり、世界の政治にも大きな影響を与えることになりそうだ。
■外国為替市場で重要なのは米国中間選挙よりFOMC
しかし、外国為替市場にとってより重要なのは、選挙後に開かれるFOMC(連邦公開市場委員会)だ。
米国はすでにゼロ金利政策をとっており、残された手段は追加の金融緩和策しかない。
その規模をマーケットは5000億ドルと予想して動いている。
そのためFOMCを直前に控えた今、マーケットの関心は「その規模が予想と合致しているのか?」「どんな形で金融緩和が実施されるのか?」といったことに移っている。
FOMCの動きは最大限注目したいところだ。
さらに11月5日(金)に米国雇用統計の発表が控えている。
FOMCの陰に隠れているが、為替市場にとっては毎月恒例のイベントなので油断はできない。
ただ、米国の景気が低迷を続けているので、失業率などの数字に劇的な改善が見られるとは思えない。
また、同じ11月5日(金)には日本銀行の政策委員会・金融政策決定会合が、11月15、16日予定分の前倒しの形で開催される。
日銀関係者は認めていないが、これはFOMCを意識した前倒し開催なのだろう。為替市場の視点ではこれは「付録」に過ぎないものの、もちろん無視できるわけでもない。
今週は年内でもっとも重要な週となるだろう。何が起こるか予測がつかないが、投資家のみなさんはそれぞれの出来事に対して臨機応変に、しっかり対応してほしい。
■高値圏での乱高下は天井を示唆する
ユーロ/円の水準は、「このところの(目先の)ボックス相場」=「下限105円程度、上限115円程度」の高値圏で、こう着している。
高値は115円台があったが、上に明確に抜けたとは言えない。つまり、ボックス相場はブレイクされていない。
大きく乱高下している状況だが、結局は、「このところの(目先の)ボックス相場」=「下限105円程度、上限115円程度」の範囲内での上下動となっている。
「明確な判断ができるまでは、考え方を変えてはいけない」のは相場に臨む際のセオリーだ。
高値圏で現れる大きな上下動(=高値圏での乱高下)は、天井を示唆する値動きであることが多い。つまり、「今後、ユーロ/円は下落する」と考えているが、現状のチャート分析からだと明確なシグナルはない。
■今後、さらなる急落があっても不思議ではない
以下のユーロ/円(EUR/JPY)週足チャートをご覧いただきたい。これは300本足(=300週)のチャートとなっている。
ユーロ/円は、2006年半ばから2008年半ばにかけて、下限149円程度、上限170円程度の「ボックス相場」を作った。
このボックス相場は、結果的に「ヘッド&ショルダー」(※)を完成し、その後の大暴落(クラッシュ)の原因となった。このボックス相場を「緑の水平線」で表示している。
2008年の大暴落(「ヘッド&ショルダー」のクラッシュ)の後、2008年後半から、2010年4月まで、ユーロ/円は上限140円程度、下限112円程度の「ボックス相場」を形成していた。
上のチャートでは、ボックス相場の上限140円程度、下限112円程度をそれぞれ「ピンクの水平線」で表示している。
そして、今年(2010年)の5月に112.00円を下に割り込んだことで、再度、「売りシグナル」を発した、と考える。
直近のユーロ/円は、週足チャートで見ると、112円を中心とした保ち合いが続いている。
しかし、上限140円程度、下限112円程度の「ボックス相場」を下に抜けたのだから、今後、さらなる急落があっても不思議ではない状態が続いている、と考えている。
上のチャートで「青の破線」は、現在のレジスタンス・ラインだが、大局で見れば、ユーロ/円は、この「青の破線」のレジスタンス・ラインに従って下落している、と言える。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダー」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼び、仏像が3体並んでいるように見えるため「三尊」と呼ぶこともある)
■以前は上限140円程度、下限112円程度のボックス相場
以下のユーロ/円(EUR/JPY)週足チャートをご覧いただきたい。これは180本足(=180週)のチャートとなっており、先に示した300本足の週足チャートの最後の部分を拡大した格好だ。
このサイズで見た方が、上限140円程度、下限112円程度のボックス相場だったことが明瞭になるだろう。
次はユーロ/円の日足チャートを…
以下のユーロ/円(EUR/JPY)日足チャートをご覧いただきたい。これは300本足(=300日)のチャートとなっている。
ユーロ/円は引き続き当面のところ、下値105円程度、上値115円程度のボックス相場だと考える。上のチャートでは下値105.40円、上値115.70円に「緑の水平線」を描いている。
115.00円を上に抜けているが、115.00円がチャート・ポイントというわけではなく、引き続き、「下値105円程度、上値115円程度のボックス相場」が持続している、とみる。
なお、この日足チャートでは、本来のレジスタンス・ラインを「青の破線」で表示している。
今年のゴールデンウィーク前は、「青の破線」のレジスタンス・ラインと119円台ミドルの水平線(=ピンクの水平線)で、「三角保ち合い(ウェッジ)」を形成し、ゴールデンウィーク中にそれを下に抜けた、つまり、売りシグナルを発したと考えている。
「青の破線」のレジスタンス・ラインは、以前は、かなり上方に乖離していたが、最近になって近づいてきた。
本来は、この「青の破線」の上方外側に、ストップ・ロス・オーダー(損切り注文)を置いて、「ユーロ売り・円買い」を行うのが正攻法と考える。
ただ、「青の破線」のレジスタンス・ラインが近づいたことで、レジスタンス・ラインを上に抜ける場合も想定しておく必要が出てきた。
しかし、今回のケースでは、仮に、115円台ミドルないし115円台後半を上に抜けても、次のレジスタンスが119円台ミドル程度にある、と考えている。上のチャートでは、119.50円を「ピンクの水平線」で表示している。
■米ドル/円への介入の影響でユーロ/円相場も変化
以下のユーロ/円(EUR/JPY)日足チャートをご覧いただきたい。これは180本足(=180日)のチャートとなっている。
ユーロ/円は、下限107円程度、上限115円程度のボックス相場を下にブレイクし、「売りシグナル」を発した、と考えていたのだが、9月中旬に米ドル/円で「米ドル買い・円売り介入」が実施された影響を受けて、ユーロ/円も激しく上昇した。
政府・日銀の介入によって相場水準が変化したことで、ユーロ/円は、改めて「下値105円程度、上値115円程度のボックス相場」を作った、と考えている。
ユーロ/円のチャートを改めて見てみよう。4月下旬から8月中旬ころまでは、「下値107.20円、上値114.80円のボックス相場」だった、と考えている。
そして、それが9月下旬以降、下値、上値ともに拡大して、「緑の破線」で示した「下値105.40円、上値115.70円のボックス相場」にシフトした、とみている。
■正攻法はあくまで「ユーロ売り・円買い」
ユーロ/円は引き続き、下値105円程度、上値115円程度という当面のボックス相場のインサイド(内側)にある。
便宜的なストップ・ロスを115円台ミドル、ないし115円台後半程度に置いて、「ユーロ売り・円買い」を行うことが、トレードの正攻法だと考える。
115円台ミドル、ないし115円台後半程度のストップ・ロスがつくようならば、その後、119円台ミドルよりも上にストップ・ロスを置ける水準になったところで、再び「ユーロ売り・円買い」を行えるように、態勢を整えるべき、と考えている。
つまり、115円台ミドル、ないし115円台後半程度のストップ・ロスがつくようならば、117円~119円台で、「ユーロ売り・円買い」を行うことを考える、ということだ。
(2010年11月2日 東京時間16:50記述)
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