4月27日(火)のニューヨーク市場の取引時間中に、格付け機関のS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が、ポルトガルとギリシャの格付けを相次いで引き下げた。
ギリシャのソブリン(国債などの公的機関の債務)格付けは3段階引き下げられ、投機的(ジャンク)等級となる「BBプラス」となった。
この格付けでは、多くの機関投資家はギリシャ国債を保有できない。
現在保有しているギリシャ国債は、売却を余儀なくされる。
ギリシャ国債の価格が大幅に下落しているのだから、損切りのギリシャ国債売りを実行しなければならないのだ。
このニュースを材料に、ユーロ/米ドルは大幅に下落した。
筆者は「ギリシャ問題は重大問題だ」と言い続けて、その警鐘を鳴らし続けてきたつもりだ。
一時、「ギリシャ問題は賞味期限切れ」とか「ギリシャ問題は、もう飽きた」といった声が上がったが、その考え方が間違っていたことが証明されただろう。
ギリシャ問題は、それが発覚した時点から重大問題であり、現時点でも依然として重大問題だ。
S&Pは、ギリシャのアウトルック(見通し)を「ネガティブ」とし、一段の格下げの可能性を示唆している。
さらに、S&Pがポルトガルの格付けも引き下げているところがポイントで、すでに名前が挙がっているスペインとイタリアの格付けが、今後、どうなるのかにも注目しなければならない。
■ギリシャがアイスランドのように、デフォルトするかも!?
以下は、4月21日(水)のコメントの一部抜粋引用だ。改めて、ご覧いただきたい(「ユーロ/ドルの下落トレンドに変わりはなく1.32ドル台半ばを割り込むとさらに急落も!」を参照)。
このコラムでも、何度も「ギリシャ問題は重大な問題だ」と繰り返してきた。
しつこいと思う読者の方もいらっしゃるだろう。
しかし、しつこいと思われるのがわかっていても、言わざるを得ないことも多いものだ。
サブプライム・ローン問題を思い起こしていただきたい。
2007年の当時、多くの専門家が「サブプライム・ローン問題はたいした問題ではなく、すぐに解決する」と述べていた。
ところが、サブプライム・ローン問題が原因で米国の金融機関がバタバタと倒産し、リーマン・ブラザーズのような大手も倒産し、米国金融危機が起こった。
あの当時に、「サブプライム・ローン問題はたいした問題ではなく、すぐに解決する」と唱えていた専門家の皆さんは、今、どうしていることだろう?
私は、ギリシャがアイスランドのように、デフォルト(債務不履行)する可能性すらあると考えている。わざと、最悪のケースを想定しているのだ。
「万一、ギリシャが破綻せずにうまくいけば、良かったですね」と考えている。
最悪のケースであっても、それは想定どおりとなる。
■サポートを割り込むと、大きく急落する可能性が高い
さて、ユーロ/米ドルを月足チャートからご覧いただきたい。
月足チャートを見ると、ユーロ/米ドルが長期間にわたり、緑の破線で示したサポートラインに沿って、大きく上昇したことが見て取れる。
その後、2008年にはクラッシュ(大暴落)しているが、クラッシュ後の下値保ち合いを経て、2009年には再び大きく上昇している。
この2009年の上昇は「ドル・キャリー・トレード」が主な要因で、超低金利の米ドルを借りてユーロを買い、その金利差を享受するといった取引が活発に行われた結果なのだろう。
ただ、2009年12月には、ギリシャの財政赤字問題をきっかけにして下落を始めている。
もちろん、ギリシャ問題自体も下落の原因・材料であるが、それ以上に、2009年に拡大した「ドル・キャリー・トレード」のアンワインド(解消)が起こったことが、ユーロ/米ドルの大きな下落原因となったのではないかと考えている。
「ドル・キャリー・トレード」を行うならば「ユーロ買い・米ドル売り」とし、それを解消(アンワインド)するならば「ユーロ売り・米ドル買い」を行う。
なお、月足チャートには、ピンクの破線のサポートラインを表示した。現在のサポートラインはこれだと考えている。
このピンクの破線のサポートラインを下に割り込むと、大きく急落する可能性が高いだろう。
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